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第3話 この歳で婚約破棄ってマジですか!?


「アネット、お前との婚約を破棄する! 薬屋もクビだ! 荷物をまとめて、一刻も早くこの店から出て行け!」


「は…………はあああぁぁぁっ!?」


 クラースの口から飛び出た言葉に、私は思わず叫喚を上げてしまう。


「こ、こ、婚約破棄ってどういうことですか! それにクビって……説明してください!」


「きゃあ! 怖いです、クラースさん!」


 なんともわざとらしい悲鳴を上げ、クラースの背後に隠れるシェスナ。

 クラースはそんな彼女を庇う様子を見せ、


「説明しろだと? 知れたことよ。アネットお前、このか弱いシェスナを虐めていただろう? 彼女から全て聞いたのだぞ!」


「は、はい……?」


 目をパチクリとさせる私。

 いや、してませんけど、虐めなんて。

 ただでさえ少人数経営してるお店で、若い子ってだけで貴重な人材なのに、なんで虐めねばならんとですか?


 シェスナは薬師として有利なエンチャントスキル【耐性上昇】を持っているから、風邪が流行る時期には活躍してくれるだろうな、大事にしなきゃ、と思ってたくらいなのに。


 どちらかと言えば「アネットさんって田舎出身なんですね~、ウケる~!」「薬師に向いてないスキル持ちなのに、薬師続けるなんて凄いですね~! 私なら恥ずかしくて無理~!」みたいに結構煽られてた側だと思うんだけど……。


 これが若い子のコミュニケーションの取り方なんやろな……と思ってなにも言わないでいたが……。

 

「そうなんですぅ! 私、お局のアネットさんからすっごい嫌がらせをされててぇ! もう耐えられませぇん!」


 誰がお局か、おい。

 私、キミに嫌がらせなんてしたことないでしょ!

 しかも言い方がめちゃくちゃ演技っぽいんだけど!?

 

「ちょ、ちょっと待って……。全くと言っていいほど身に覚えがないんですが」


「しらばっくれるな! おお、哀れなシェスナよ……俺だけはお前の味方だからな」


「ぴぇ~ん! あのおばさんってば傲慢で調子こいてて最悪なんですぅ! 自分のエンチャントスキルは全っ然役に立たないくせに!」


「お、おば……!?」


 い、いや、そりゃ確かにキミに比べりゃわたしゃおばさんかもしれんけど!

 言い方ってモンがあるでしょ、言い方ってモンが!


「アネットよ、俺はお前との婚約を取り止め、このシェスナと結婚する! やはり女は若い方がいいからな、フハハハ!」


「そ、そんな勝手が許されますか! ヘルマンさんが聞いたら絶対――!」


「親父が聞いたら、お前を庇うとでも? シェスナよりずっと役に立たないスキルしか持たぬ、お前を?」


「っ……!」


「お前などと結婚するより、薬師として優秀なスキルを持つシェスナと結ばれた方がこの店も繁盛するだろうよ。そうは思わないか?」


「そ、それ、は……」


 ――否定できない。

 事実、彼女のスキルは私よりもずっと薬師と相性がいい。

 どちらの方がお店に貢献できるかを考えれば……悔しいけど、答えは明白だ。


「そもそも俺は、お前との婚約など不服だったのだ。もう顔も見たくない」


「………………そうですか、わかりました」


 ――そう、そうなんだ。

 そこまで言うんだ。

 私は今日まであなたとの結婚を信じてきたけど――そう思ってたのは、私だけだったんだ。

 ほんっと、バカみたい。


「では、荷物をまとめて出て行かせてもらいます。もう会うことはないでしょう。さようなら」


「ああ、早く出て行け! 俺とシェスナはこの後熱い夜を過ごすのだからな!」


「きゃはは! おばさんな上に負け犬なんて、すっごい無様~!」


 立ち去ろうとする私の背中に、罵詈雑言が浴びせられる。


 ――その夜、私は持てるだけの荷物を持って『ホーカンソン薬店』を後にした。



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