オリオン座
8.
僕は何故自分が泣いてるのか理解出来なかった。
ただ星空を見ていると言葉じゃ言い表せない感情に襲われてた。
「私が星を好きになったのは、8歳の時なの。ふと星空を眺めていたら気づいたの。この星々は遥か何光年も向こうに居て、私達よりずっと前から存在していて、それでも尚私達の目に映るの。その沢山の瞬きが見えているんだと思ったら涙が出てきちゃって、もう言い表せない感情で溢れかえってた。」
「その感覚、分かる気がする。」
そしてしばらく僕達は座って星を眺めていた。
「ーー私ね、思うんだ。普段景色程にしか見られていないけれどこの季節、見上げたらオリオン座が見えるって一体何人が気づいたんだろうって。私はほとんど知られずに瞬き続けるなんて出来ない。」
彼女は笑っていなかった。
僕は何も言わずに彼女を見つめていた。
僕だって彼女に教えてもらうまで景色程度にしか感じず、星空をこんなにまじまじと見ることも無かったのだから。
「そういえば、オリオン座の神話でね、オリオンには愛し合うアルテミスが居たって話があるの。結果的にオリオンは死んじゃうんだけど、その2人が凄い相思相愛で、素敵だなって思ったの。もし私がアルテミスなら私のところにオリオンが来るのかなって思うんだ。」
恥ずかしそうに彼女はふわっと笑った。
まるでさっきの話を無かった事にされたかのようにも感じられた。
「出来ると思う。僕は星河さんがアルテミスだと思うよ。アルテミスだから、瞬いてオリオンに知らせようよ。ここに居ます、って。」
「志河くん・・・。」
一瞬潤んだかのように見えた瞳を閉じて次の瞬間にはいつも通り潤った瞳で僕に笑いかけた。
「「帰ろうか」」
ーー
帰るときも彼女は強引に僕を荷台に乗せて走り出した。
「そういえば私は『星河』で君は『志河』じゃん?二人とも『河』が付いてるよね。初めて名札の漢字見た時、運命みたいって思ったんだよね。」
「確かに、こうして出会ったんだし一つの運命かもしれないね。」
そう言って笑い合いながら僕達は帰路を進んでいった。