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00. プロローグ
――ながいながい、夢を見ていた気がする。
――それは、忘れていた古い宝石箱が突然開いて、膨大な中身が溢れだしたかのような夢だった。
公爵令嬢アンリエット=ルイーズ・ド・ヴェルディエは、高熱を出し二日間寝込んだ後、不意に目を覚ました。
夢から抜け出し切れていない、ぼんやりとした視界に、見慣れた茶髪と青眼が映る。はっきりと見えずとも、それが義弟テオフィルの姿だと分かった。
――嗚呼……そうだったわ。
昨日、いや一昨日、あるいはもう、遠い遠い昔の気もするけれど。寝込む前にテオフィルと話した「それ」の真実が分かったのだ。再び睡魔に飲み込まれる前に、それだけは伝えなければ……。
「テオ、どうしましょう、」
「! 義姉上! 大丈夫ですか、今医者を、」
「私、本当に前世の記憶があったみたいなの……」
「は!? どういうことですか、義姉上!? 義姉上――――――――!?」
爆弾を落とすだけ落として再び瞼を閉じた義姉を揺さぶるも、彼女はすぐさま深い眠りに沈んでしまう。
哀れな義弟は彼女が再び目を覚ます三日後まで、悶々とした日々を過ごすことになったのだった。




