冒険者ギルド
夜が明けた。
若干、昨日のことが頭から離れずに寝不足気味だけれど仕方がない。
私は顔を洗ってどうにか気合を入れて着替える。
そして朝食を済ませた後にリナと共に冒険者ギルドへと向かう。
「そういえば、この国のギルドの場合ってどんな依頼が来ているの?」
「他の国と内容自体は変わらないと思いますけど……まあ、ダンジョンの調査依頼が当たり前ですけど多いくらいですかね」
「ギルドの上の人とは、お父様に連れられて社交界とかで挨拶はしたことあるのよ。だけど、実際にギルドの中をしっかりと見る機会は今までなかったの」
「よく考えたら、アリアさんは聖女である以前にセイラート家の娘ですもんね」
道中そんな会話をする。
そういえば、聖女のこととか仕事の話は良くしてたけれど家の話とか、過去の話とかはしてなかったわね。
「まあ、聖女じゃなかったらどこかに嫁いでたのかしらね」
「アリアさんって学園に行っていたんですよね?」
「そうよ」
「学園ってどんなことをするんですか?」
「どんなことと言われると……座学が圧倒的に多いわね。国の歴史や成り立ちに現在の国同士の関係性についてだとか」
「アタシには無理そう」
「私だって全部完璧に覚えているわけじゃないわ。その他には魔法の基礎と希望者は実技も少し習うことが出来たわね」
「男女は別れていたりするんですか?」
「座学に関しては一緒よ。ただ、実技授業の時は魔法関係は一緒だけど、剣技とかは別れてたかしら。あんまり回数受けてないから自信ないけれど」
「そうなんですね。そして、そろそろつきますね」
話しているうちに視界に冒険者ギルドが見えてきた。
「まあ、続きは後でまた話しましょう。リナのこれまでについてとかも聞かせなさい」
「面白いことはないと思いますけれど、機会があれば」
ギルドの開かれている扉を抜けて中に入ると、今日はそこそこの賑わいといったところだ。
「えっと、情報をまとめてるのって」
「マップとかであれば掲示板に張り出していますけど、アリアさんが今気にしてる洋館の情報は集め始めたばかりなので受付で聞くのがいいかなと」
「そうなのね。まあ、でも後でマップは確認したいわね。この前はリナに頼りっぱなしだったし」
「任せてほしいといいたいですけど、ダンジョン内だと罠ではぐれることもあるので全員知っていて損はないですね」
私は中に入って奥に見えるカウンターまで進む。
1階は壁や柱に掲示板が設置されて情報であったり依頼書が張り出されている。
私は今誰も対応していない受付嬢を見つけてそちらに移動する。
「今、いいかしら?」
「はい。どのようなご用件……あら、リナさん。それに聖女様」
「どうも」
リナは顔見知りみたいね。それなら任せて少し後ろにさがってようかしら。
「この前の報告以来きてなかったから少し心配してたけど。今日は仕事とは別件ですか?」
「ちょっと、色々とあってね。聖女様と仕事させてもらってるんだけど――」
そのまま例の森のダンジョンの洋館の情報がないかといった事をリナが説明する。
「あなたがこの前報告した洋館の情報ですね。たしか、一件だけ報告があったと思いますので……ごめんなさい。少し待ってもらえる?」
「ここで待ってればいいの?」
「ここで大丈夫」
受付嬢はそう言うと奥の部屋に消えていった。
「一件だけみたいです」
「私にも受付の人みたいに喋れない?」
「えっ!? ……も、もう少し待ってください。そうは見えないかも知れないけれど、アタシの中ではまだアリアさんと呼ぶのも実はドキドキなので」
「まあ、無理強いするつもりはないわ」
「はい。頑張ります」
しかし、一件だけか。少ないと見るべきか多いと見るべきかわからないわね。
「お待たせしました。こちらです」
「ありがとうございます」
「いえいえ、お仕事頑張ってください」
戻ってきた受付嬢が持っていたのは一枚のメモ書きのみだった。
依頼書程度の大きさだけれど、遠目にみてもそこそこ余白がある。
受け取ったリナはメモを見つつ私のもとまできたけれど、辿り着くとなんとも言えない顔をしている。
「アリアさんこれって……」
「何が書いてあるのよ?」
「この情報なんですけど、もしかして昨日の」
「うん?」
私はリナからメモを受け取って中を読む。
洋館の外観の概要程度の内容と――見覚えのあるマークが描かれている。
「剣の鞘にあったマークじゃないですか?」
「完璧に細部までは覚えてないけれど。同じに見えるわね」
マークの横には洋館正面入口から中へ入ってすぐにこのマークが彫り込まれた台座を発見したらしい。
奥へと入ろうとした時にそのマークが淡く光った。1人での探索だったため深入りせずに撤退したで報告が終わっている。
「何なのかしら?」
「わかりませんが、あの生物のこともあるし気をつけるに越したことはないかと」
「そうね……効くかはわからないけれど、聖水も用意して挑みましょう。呪いやアンデットの類であれば、ある程度の効果はあるはずよ」
聖水は神官によって聖なる属性を一時的にえた魔力水だ。私の魔力も同じ属性だけれど、すべてを自分で対応すると魔力がいつきれるかわからない。
ただ、聖水の弱点はあまり保存が効かないから明確に効く相手に対処することを前提にしないとかなり金がかかるのよね。
「洋館の情報で元取れますかね」
「ついでに呪いの何かがわかればリットからも仕事料をもらえるだろうからね」
「そうですか……でも、そうなるといつ行きますか?」
「そうね。2日後にダンジョンに行くわよ。聖水を今日頼んでおいて明日作ってもらいましょう」
「わかりました」
その後、私はギルドの掲示板で森の全体図を覚えた後に教会へを足を向けた。
リナには先に帰って念の為に装備の消耗などの確認をしてもらう。
教会で聖水の作成についてはすぐに了承してもらった。
ただ、ダンジョンでの同じマークについてをウィン神父に伝えながらあの生物についてなにかわかったことがないかを聞くと。
「確実な情報は見つかっていない。ただ、過去に実体を持たないアンデットの類と魔物が偶発的に生んだ呪いが混ざり合って似たような魔力とも生物ともいえない存在が生まれた例が数件だけあった」
「その数件は確実ではないと?」
「あまりにも件数が少ないことと場所や魔物の状態などが違いすぎて、同じものとしていいのかが不確定なのだ」
「なるほど……ありがとう」
「聖女様。無理はしないようにしてください。呪いの浄化でかなり負担をかけている私達に言われても微妙かもしれませんが。貴方のことは皆大切に思っているのです」
「それくらいはちゃんとわかっているわ。ウィン神父も無理は禁物よ」
「ご心配ありがとうございます」
私は他の神官にも軽く挨拶をしつつ教会を後にして、調査への準備を始めた。
洋館が突然現れたこととかはともかく、呪いの調査という点ではマークについては何かを解明したいわね。




