91・非情なる現実
「ったく、髪の毛が少しと血液が少々なら最初から言っといてくれよ」
「ヒッヒッヒ、あの方が雰囲気が出ると思ってのぅ」
全身汁まみれになった所でジジからのネタバラし、結局欲しかったと言っていたサンプルはジールの髪の毛と少量の血液で事足りるみたいだ。大袈裟に並べていた機具や、ジールを眠らせた睡眠薬もただの演出。人を驚かすのがこのジジの趣味らしい・・・全く、質の悪い趣味である。生ナマコの店主が言っていた事はこの性格の悪さ事だったのか
「やれやれ、それで結局俺の事は誰から聞いてたんだ?」
「ん?それは勿論シャル様からじゃよ。あの方は元気かえ?」
「シャルのヤツか・・・あぁ元気だよ。と言うかその事を知ってるんならアンタは随分とシャルから信用されているんだな」
ジジがシャルの事を知っているのは意外だが、それよりもジールの昔の事を知っている人間は限られてくる。しかもその『呪い』の事を含めればそれこそ指で数えれるぐらいの人間しか居ないからだ。さらにそれを他の誰かに言うのであれば、その人間は信用するに値するという事なのだろう
ジールはジジと初対面なのでそう思うのも当然と言える。だがジジの返答はジールの予想の的を外れていた
「いやお前さん何か勘違いしてるみたいじゃが、シャル様からは呪いの話は聞いたがその内容は何も聞いてないかえ。ただ、アタシもあの時居たのさ。ジール・ストライダル、アタシは王都出身だからね。それにシャル様の弟子の一人でもあるのさ」
「・・・そうか。まぁアンタもシャルと同じぐらいの年齢みたいだし知っていてもオカシクないか」
ジジのその一言で全てが納得がいった
あの時、近くに居たのなら、あの時の事を知っていてもおかしくないだろう。そして俺の事も
「そうともさ、ただ今のお前さんを見てあの時と全く容姿が変わっていないから何となく呪いの事の予想がついただけさ」
「なるほどな・・・カマ掛けられたってことか」
してやられた。そしてその予想は当たっていた、か
伊達にこのバァさんも歳を取ってないってとこか
「・・・今何か失礼なことを考えてなかったかえ?」
ギクッ
このバァさん心も読めるのかよ
「い、いや。そんな事ねぇよ。あ、美容液ありがとな、これでエリーに怒られないで済むよ。じゃあ俺はそろそろ帰るから。ジジさん世話になったな」
墓穴を掘る前にとっととここから出ることにしよう。そう思いジジから貰った美容液を手に取りジジに軽く頭を下げた後、ジールはジジの返事を待たず家の扉を開けて出て行ってしまった
「あ、待たんかえ!シャル様に宜しく伝えとってくれんかえ・・・全く噂通りの奴じゃな。まぁいいサンプルも手に入ったし良しとするかの。イ~ッヒッヒッヒ」
いきなり飛び出て行ってしまったジールに眉を顰めるジジだが開け放たれたままのドアをそっと閉め、懐から血液が入った瓶を取り出しそれを愛おしそうに眺め、これから色々と試してみる事を考えるとジジは笑いが止まらないのであった
ーーー
「改めてみると綺麗な色してるもんだな。あのバァさんが創ったもんだから怪しげな色をしてるかと思ったけど、これなら効果も期待できそうだな」
ジジの家から町の本通りへと戻ってきたジール。町の方は相変わらず祭りが続いており賑やかなままの様子だ
そんな中ジールは手に入れた美容液が入っている小瓶を空間収納から取り出し歩きながらマジマジと眺めていた。物を見る目は確かなジールがそう言っているのだ。その効力は間違いないのだろう
思いの外、良いものが手に入った。そう思い御機嫌に帰路に就こうと町の入口の方へと歩いていくジール。そんな時祭りの喧騒の中から聞こえてきた二人の会話に耳が反応した
・・・
「おい、お前聞いたか?何か魔族達が辺境の村とかを襲撃して滅ぼしてるらしいぜ」
「何を言ってんだ、馬鹿かお前は。そんな訳ないだろ、魔王は勇者様が一か月前に倒したってお前も聞いてるだろ。だから今コーネリアちゃんの凱旋パーティーやってるんじゃないか」
「いやそうなんだけどよ・・・俺の知り合いの商人で辺境の村々に物資を売りに行ってるやつがいるんだけどな?それがよ、行く先々でその村が跡形もなく消えて行ってるって話だ」
「何をまた、じゃあ魔王はまだ死んでねぇって事なのか?じゃあ何で魔王は辺境の村ばっかり襲って王都に攻めてこないんだよ?」
「まぁ確かにな・・・俺も実際自分で見た訳じゃないからホントかどうか分からねぇけどよ。だけどその滅ぼされた村の中には例のあの村もあったみたいだぜ?ほら、あの変態ジールが作った村だよ」
・・・
何て言った?




