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野蛮学校物語  作者: yukke
第2章 運命の魔物たち編
49/116

第47話 低レベルのサイコロ勝負

※レイアウト設定を変更しました。



―――――――――――――――――――――――



 ユッケとモークは互いにピリピリとした状況で、様々な思考をする。


 ()()()()()()()()()のなのだが、そんな事は気にもしない。

 この勝負次第で、【臆病者】達の分岐点にもなる重要な勝負だった。


 お互いテーブルと相対し、静かな時間が流れた。



 ここで、このサイコロ勝負についてルールを纏めてみることにしよう。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 行き先決定の為のサイコロ勝負


― 用意するもの ―


 そこそこ大きいテーブル

 正八面体のこの世界のサイコロ


― ルール ―


 1.先攻、後攻を決めてサイコロを振る。


 2.出た目のサイコロで勝負を決める。相手の出目よりも強ければそれを一勝とする。


 サイコロの出目の強さは以下の通り。


 スカ〈1〈2〈3〈4〈5〈6

 数字が大きいほど強い。


 3.同数の場合はもう一度先攻、後攻を決めてやり直す。


 4.サイコロがテーブルから落ちたら、必ず1とする。


【例】

 テーブルから落として5だった場合でも出目は1とする。


 5.先に3勝したら勝利。


 6.どんな事をしてでも勝つこと。


 ― 出目の確率(テーブル内) ―


 スカ25%

 1~6各12.5%

 ※印字の重さによる多少の誤差は省く。


 ― 出目の確率(テーブル外) ―


 1 100%

 ※どんな出目でも1。


 ― モーク勝利 ―


 行き先決定、鉄の王国アイロン


 ― ユッケ勝利 ―


 行き先決定、イミルミア帝国


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 この勝負、どちらが勝利しても可笑しくはない。

 地味、されど熱い勝負がそこにはあったのだろう。



―――――――――――――――――――――――

~ユッケ視点~



 さて、この勝負。

 正直言おう。


 モークが何してくるのか、何でそこまで自信があるのかがサッパリわからん。


 凄く俺の事を見てほくそ笑んでいるのが余計に気味が悪い。


 (いや、ただの強者驕り(ハッタリ)で俺の心を揺らす作戦か?)


 それならあながち説明がつくが、そんな単純な奴こそがモークなのか?



 俺との戦いでは【魔力暴走】を引き起こした張本人。

 落とし穴では魔法を使わないと抜けない高レベルを平然と作り、俺の【重力操作】のトリックを逆手にとって俺の右手をナイフで刺した。



 そんな奴がここぞという時に、運と()()()()が必要なときに強者驕り(ハッタリ)


 ※実際は戦略勝負なんてありません。


 何か裏があるに決まっている。



 俺は少し動揺しながらも、赤く澄んだサイコロを投げ出した。

 テーブルには落ちないように工夫したつもりだ。


 コロコロとサイコロはテーブルの上を数回転し、ある数でピタリと止まった。

 スカではない。



 出た目は3。

 テーブルの上にあった。


 まずまずのスタートというべきだろう。



 「……なるほど。上手いとこ突くね。」



 モークは軽く頷いたあと、テーブルの上にあるサイコロを持った。



 さあ、どうするモーク?



―――――――――――――――――――――――



 一回目最初のユッケの一投。


 ユッケの出目は3。


 モークの勝率(計算上)


 勝ち    37.5% 4以上

 引き分け  12.5% 3のみ

 敗北    50%  2、1、スカ


 となる。



―――――――――――――――――――――――

―モーク視点―



 なるほど。

 3と言うことは、まだユッケはこのルールの()()()()に気がついていない。


 そういう事になる。


 (でも、この3というものは気味が悪いな。自力で確実に当てられるという訳じゃないんだよな。やってくれる)


 スカや1なら俺もトリックなしで投げるつもりだった。

 だが、この絶妙な数値を与えられると抵抗せざるを得ない。


 (いっそ此処は本気で投げてユッケを混乱させるか。)



 「よし、いぐぞユッケ。」

 「何時でもオッケーだ。」



 ユッケの言葉を聞いた時、俺はサイコロを振った。


 出た目はなんと3。


 (マジか……流石に一筋縄じゃいかない。)



 「最初から引き分けとはなかなかだな。この勝負はノーカウント。ユッケの先攻でいく。」



 アイリスはニヤリと笑い、そう言った。



 (ユッケに()()()()()()()()にはどうしようかな?)


 俺は思案にふけていた。



―――――――――――――――――――――――



 現在


 ユッケ0勝

 モーク0勝


 2回目



―――――――――――――――――――――――

~ユッケ視点~



 俺はサイコロを持ちながら考える。


 (ヤッパリモークの変な顔はただの強者驕りだったのか?まあ、取り敢えず投げないとマズイ)



 サイコロを振る。

 コロコロとテーブルをころがり、止まった。


 出た目は5。



 「……ゲッ、マズイなぁ。どうしよっかなー?」

 「どうだ俺の強運を! 流石に此処で6は出さないよな?」


 「あぁ、そう? だったら全力で6を出してやる!」



 俺は焦っているモークを(イラ)つかせるためにワザと煽る。


 しかし、煽りの耐性が高いモークにそれはこれっぽっちも効かなかった。

 次のモークの出目で、コッチに運が流れているかどうかがわかる。


 どんな目を出すんだ?



―――――――――――――――――――――――



 2回目のユッケの一投。


 ユッケの出目は5。


 モークの勝率(計算上)


 勝ち    12.5% 6のみ

 引き分け  12.5% 5のみ

 敗北    75%  4以下


 となる。


 モークはピンチになった。



―――――――――――――――――――――――

―モーク視点―



 なるほど、此処で使おうかな?


 俺はサイコロを振ろうとしたその瞬間、後ろで何かが動いたのを確認した(ような気がした)。



 「あ! なんだ? 後ろで冒険者が通り過ぎたぞ!」

 「え? なんだって!?」



 ユッケは俺のさした方向へ振り向いてしまった。


 (……ヘッ、引っかかったな)


 俺はサイコロを振りそして……。



―――――――――――――――――――――――



 「やった~~! 6が出たぞ~!」

 「……なっ! そんなバカな事……。」



 ユッケはサイコロの目を何度も確認するが、紛れもなく6という数字だった。

 運がいい奴と彼はモークを嫉妬する。



 「……チッ。一回目はお前の勝ちだ。でも、まぁまだ勝負はある。」

 「やった~やった~、6! 6! 6!」


 「うるさい黙れ。」

 「ゴメンナサイ。」



 ユッケは舌打ちをすると、自分の心が乱れないようにそう言って落ち着く。


 途中モークが煽るが、ユッケが若干切れたことによりモークは後ろに下がった。



 そして、今度はモークの先攻になった。



 現在


 ユッケ0勝(3勝で勝利)

 モーク1勝(3勝で勝利) ☆


 3回目



―――――――――――――――――――――――

―モーク視点―



 先攻か……。



 ユッケの出目がわからないから使えないんだよな。


 (ん? 待てよ、テーブルから落ちたら1貰えるのか。ワンチャン此処で王手がかかるぞ?)


 俺は気合いを込めてサイコロを振る。



 コロコロとサイコロが転がり、止まった。

 テーブルの上。


 出目は2。

 俺に運が向いているようだ。



 「アハハハハ! なかなか運が悪いなぁ、()()()()()()!」



 今のうちに煽ってみるがいい。

 数十秒後には自らの意思で冷や汗を流して死んでもらおうか!


 ※()()()()()()()()()です。行き先決めているだけです。


 俺はある操作をしたあと、ユッケにサイコロを渡した。



―――――――――――――――――――――――



 3回目のモークの一投。


 モークの出目は2。


 ユッケの勝率(計算上)


 勝ち    50%  3以上

 引き分け  12.5% 2のみ

 敗北    37.5% 1以下


 となる。


 ユッケに有利になった。



―――――――――――――――――――――――

~ユッケ視点~



 今回は簡単だな。

 とは言え、


 勝率50%

 敗率37.5%


 37.5%と言うものは、以外に引いてしまうものである。


 しかし、今回チャンスなのだ。

 此処で敗率を引いてしまったら後がない。


 モーク2勝、俺0勝という完全不利な状況にたたされるのだ。



 俺はサイコロを投げる。


 トンとテーブルの上についたサイコロはコロコロと転が……えっ?



 なんと、サイコロは有り得ない挙動でテーブルからコロンと落ちた。

 まるで()()()()()()()()()()()()()ようだった。


 (は?特にモークはテーブルは持ち上げていないハズ。でも、モークが何かを仕掛けたのは間違いない。)


 その証拠に、モークはぬか喜びしている。


 さっき俺がバカにしたバチが当たったかのように煽ってきたのだ。



 「ハハハハ! あーれぇ、()()()()さん? 運気が悪くないですかぁ? 調子でも悪くなったんですかねぇ?」



 ホントはバカにすらしていないと思う。

 多分アイリスも思っているけど、今回ばかりはモークの口は最悪レベルなのだ。


 ワザと俺を煽って平常心を脅かそうとする。

 ……上手い奴だ。

 此処まで悪口(ワルグチ)が思い付き、なおかつ腹立せる才能もあるのかも知れない。



 まあ、今回は俺の作戦負けだ。

 テーブルから落ちてしまったので出目は1。



 モーク2

 俺1


 3回目はモークの勝利である。



 だが、これでモークがイカサマをしている疑惑がほとんど沸いてきた。


 なら、こっちもそうさせてもらおう。



―――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――

―【臆病者】アイリス視点―



 おっと、そろそろユッケも気付いたかな?



 《はい。さっきのモークの作戦と、前回の作戦でユッケはようやくこのルールの()()を知ったようです。》



 そうか。


 (これもっと言えば、()()()()()()()()()()()6()()()()()()()()()んだよなぁ)



 それにしても、最初のモークの作戦は酷いな。



 《相手の注意をそらしている間に、()()()()()()()()6()()()()()()コロコロ転がしてましたからね。》



 まあ、これから面白くなってくるかな?



 俺はユッケとモークがサイコロで勝負している様子をにこやかに眺める。


 ……案外こういうのを見るのが俺は好きなのかも知れない。

 最も、やる側にはあまりなりたくないのが本音だ。


 (今回の行き先決定のように、金や物を賭けたら、絶対コイツら()()になるんだろうな。金ならなおさらだ)


 俺はサイコロ勝負を審判ながら、充分に楽しんでいた。



―――――――――――――――――――――――



 現在


 ユッケ0勝(3勝で勝利)

 モーク2勝(3勝で勝利) ☆☆


 4回目



―――――――――――――――――――――――

―モーク視点―



 さぁ、そろそろユッケも気づいたかな?


 ここはまあ、6が来たらラッキー的な感覚で投げてみようかな?



 ユッケがどんなイカサマを使ってくるのか見たいし。



 でも、此処で時間稼ぎしないと後の作戦が全てパァだ。

 だから俺はユッケに質問をする。



 「ユッケ、どうしてイミルミア帝国にそこまでこだわるの? 中世のロマンだけじゃ無いでしょ?」

 「……そうだな。色々理由はあるんだ。中世のロマンはそのついで。」


 「一つ教えてくれないかな? 僕もイミルミア帝国に行きたい!みたいな決意が沸くかも知れないんだよ?」

 「うーん、そうだな……じゃあ一つ教えようか。他は全部個人的な理由だからナシだ。」


 

 ユッケは両腕を組んでしばらく考え、結局俺の質問を受け入れてくれた。

 (まあ()()()()()()()()()()()()()()けどね)と心の中でその言葉を反復する。



 「まあ、(いにしえ)の剣が眠っているだけだ。」

 「剣なんてたいしたことないよ?」


 「馬鹿を言うな。その古の剣は神をも殺した太刀と言われてるんだぞ? 名前言われてもわからないとは思うが、霊妖剣(れいようけん)神覇龍(ジンバリュウ)】という奴だ。」

 「? 霊妖剣って何?」


 「霊剣と妖剣が合わさった奇天烈な剣だ。だが、その刀を作った奴はもう死んでいる。確か今は三代目が引き継いでいたかな?」


 「ん? 霊妖剣【神覇龍】なら本で聞いたことあるぞ。()()()()()()()()()()()にあったとかいってたが……まさかそれを狙っているのか?」

 


 すると、話を聞いていたアイリスが入ってきた。


 (大雑把過ぎない? イミルミア帝国って確かめちゃめちゃ広い国だった気がするけど。)


 俺の予想はユッケの次の言葉で当たっていたとわかった。



 「まあ、おおよその検討はついているが……国が広すぎて()()()()は最低調べないといけない。それでも見つからない可能性だってある。」

 「それは大変だな。で、その剣を作った奴は他にも剣を作ったのか?」


 「そうだ。最高傑作である霊妖剣【神覇龍】の他に、傑作の8本。後は全て失敗作だ。おっと、失敗作だからと言って馬鹿にすんなよ。」



 ユッケはそう言うと、収納魔法の中から一本の剣を取り出す。

 そして、剣の鞘を抜いた。


 銀色に染まった刃物が悠々と姿を見せる。刃渡り70センチ。太陽の光が反射してギラギラとかがやいていた。



 「これが失敗作、霊剣【大狼(オオカミ)】。ちなみにおまえ等と戦った時に装備していた脇差も失敗作だ。どうだ? 少しは興味を持ったか?」



 流石に少し興味を惹かれた。

 失敗作でこれなら最高傑作はどれ位なのだろうという探求心を持つ気持ちは非常にわかる。人間の男は、剣というものに心惹かれると観察してわかったからだ。



 「なるほど、イミルミア帝国に行きたいという言葉の力はあった。だが、それはこの勝負に勝ってこそ説得力が持つと言うもの。」

 「そうだね。僕が勝ったら、鉄の王国アイロンの魅力を教えてあげるよ!」



 アイリスは再びサイコロ勝負に展開を戻す。そして俺はユッケにアイロンの魅力を伝えようと今の内に言葉を考えることにした。



 「そうだな。おっと、モーク。そろそろサイコロを振ってくれないかな?」



 ユッケがそう催促する。


 (……フッ。結構稼げたな)


 俺は本音を隠しながらサイコロを振る。

 テーブルの上でコロコロと転がり、止まる。


 出た目は5。

 ユッケのイカサマを見れそうだ。



 「なるほど、面白い。」



 ユッケはそう言うとサイコロを持ち、考えた。

 さぁ、どんなイカサマを使うのか楽しみだ。



―――――――――――――――――――――――



 4回目のモークの一投。


 モークの出目は5。


 ユッケの勝率(計算上)


 勝ち    12.5% 6のみ

 引き分け  12.5% 5のみ

 敗北    75%  4以下


 となる。


 もし此処でユッケが敗北をしてしまうと、モークの勝利となる。


 もう保障はない。


 ユッケはピンチになった。

 ……だが、ユッケはニヤリと笑っていた。



―――――――――――――――――――――――

~ユッケ視点~



 此処で5を引くか。


 モーク、意外とイカサマ無しでも強運じゃないか?


 でも、6を取れば一勝。

 どんな手を使っても勝てばいい。


 これは公式(アイリスルール)なのだ。



 俺は()()()()()()サイコロを振る。



 「ええええええ! それズルくない?」



 モークが驚くのも無理は無い。

 確かにサイコロはテーブルの上で4と止まった。


 だが次の瞬間にサイコロは()()()()()()()、6になったのである。



 「レベル270の相手に本気でイカサマ? 笑わせるなぁモーク。」

 「グッ……。」



 俺はレベルの差を見せつけるように言った。

 モークはギリギリと歯軋りをしている。


 俺は魔法を使ってこのサイコロをイカサマサイコロに変えた。


 その魔法は黄色魔法レベル5【幸運の女神(レディーラッキー)】と橙色魔法レベル4【信じる心(ビリーブハート)】を重ね合わせたのである。さっきみたいに机を傾けられないように【平坦心(平坦な心)】と色々工夫した。


 【幸運の女神(レディーラッキー)】は、確率(かなり薄い)で使用者のいい方向に向かわせる魔法。

 【信じる心(ビリーブハート)】は、望みを願う気持ちが強いほど確率系の魔法が成功する確率を最大100%まであげることが出来る魔法。

 【平坦心(平坦な心)】は、その魔法を与えた対象を落ち着かせることが出来る。サイコロの場合は、転げ回る事がないというのが主なメリットだ。


 魔法の組み合わせで何でも出来るのだ。レベル差の格差を今度こそモークに教えてやらねばならない。


 さぁ、次はどんな手を使ってくるかな。


 (モークとの対戦、嫌いじゃないなぁ)



―――――――――――――――――――――――



 現在


 ユッケ1勝(3勝で勝利) ☆

 モーク2勝(3勝で勝利) ☆☆


 5回目



―――――――――――――――――――――――

~ユッケ視点~



 俺は前回と同様、【幸運の女神】と【信じる心】を重ね合わせた。


 サイコロをテーブルから落とさないことを重点に起き、それを振る。


 当然、出た目は6。


 ()()()()()()()()()()()()()ことなど気にしては負けだ。



―――――――――――――――――――――――



 5回目のユッケの一投。


 ユッケの出目は6。


 モークの勝率(計算上)


 引き分け  12.5% 6のみ

 敗北    87.5% 5以下



―――――――――――――――――――――――

―モーク視点―



 マズイ。

 この場面は気合いで乗り越えないと後が無くなる。


 俺はサイコロを振る。


 コロコロとテーブルの上で転がり、止まる。



 出た目は5。

 運はそこまで味方をしてくれなかった。



 「運だけじゃイカサマサイコロには勝てないんだなぁ!」


 

 ユッケにチクチクと煽られるが全然耐えられる。


 (次で決着だな。)



 俺はユッケにサイコロを渡した。



―――――――――――――――――――――――



 現在


 ユッケ2勝(3勝で勝利) ☆☆

 モーク2勝(3勝で勝利) ☆☆


 6回目。

 どちらかが勝った地点で勝敗が決まる勝負になった。



―――――――――――――――――――――――

~ユッケ視点~



 勝った。

 俺はそう確信する。


 俺の魔法がわからなければ、モークは勝手に自滅する。

 運良く6を引き続れば、時間稼ぎ程度にはなるだろう。でも、それはただの悪足掻(わるあが)きに過ぎない。


 そう考えていると、モークが笑みを浮かべながら俺に向かって話す。



 「なるほど、レベル差を生かして俺が知らない魔法を色々重ねてんな?」

 「ああそうだ。だが、お前はそれを知っても解決策はあるのか? レベルが上がった所でお前は何も出来んのだろう?」


 「なるほど、これで確信した。だったらあの作戦でいくか。」



 俺はわけもわからず困った表情をモークに見せた。

 ついでにあぐらをかいていたのが災いし、足が少し痺れた。仕方なく、テーブルの下に足を少し突っ込んだ。


 痺れが消えたタイミングで俺はまたあぐらに戻す。



 「ゲッ!?」というモークの叫び声が聞こえた気もするが、今はそれどころではない。



 「さぁ、そろそろサイコロを振るぞ? モーク。」

 「あ、あの~。もうちょっと待ってくれない? 今心臓がバクバクして緊張してるからさ~。」



 突然モークが焦っている様子をみた俺は不思議に思う。


 露骨なイカサマが失敗した?

 ならば丁度いい!



 「残念だったなモーク。これで決着付けさせてもらうぞ!」

 「ギャアアアアアア!」



 モークは大きな悲鳴をあげて叫ぶ。


 何だ。

 ただの悪足掻きによる時間稼ぎだったか。


 【幸運の女神】と【信じる心】を重ね合わせた。

 これでトドメだ!


 俺はサイコロを振る。

 コロコロとテーブル上を転がり、そして止まる。


 当然出た目は6。



 「ハハハハハハハハ! 愉快! 実に愉快な勝負だったぞ!」


 

 俺は真上に顔を向けて高々と叫ぶ。



 「ギャアアアアアア! …………えっ?」



 モークは雑魚が出すような悲鳴をあげた後、何故か冷静になる。


 そんな事は一切気にせず、モークに罵声を浴び続けた。



 「ランクGの悪足掻きは実に素晴らしい時間稼ぎ以下の愚行だったなぁ、モークさん? いや~、お疲れ様でしたね~。惜しくも負けてしまったアナタ、どんなお気持ちでそこにたっていらっしゃったんですか~。ちょっと聞かせてくださいよ~。」



 相変わらず俺は顔を高々と上げて自分自身の格の違いをモークに見せつけるようにした。


 すると、モークが俺に向けてこう言い放った。



 「…………あの~、めちゃめちゃ喜んでいる所悪いんですが……その~。」

 「ん? なんだ?」


 「これ、()()ですけど……。」



 そんなのただのハッタリに過ぎないだろ!と俺は顔をサイコロに向けた途端、ガチリと硬直した。



 「………………え? なんで?」



 なんと、6()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。



 「オイ、モーク! テメェ俺が見ていない間に動かしやがったな!」

 「あれ? あれれ? 僕はナニモシテマセンケド?」



 モークは知らんぷりをしている。


 俺は全貌を見ていたアイリスに事のいきさつを聞くことにした。



 「オイ、アイリス。確かに俺が見たときサイコロの出目は6だったハズだ。なのに、どうして今はスカなんだ?」

 「まあ、そう言う反応するよな。俺だってビックリしたよ。何せ6()()()()()()()()()()()()()()()()()のは運命のイタズラかな?」



 あまりの衝撃にポカーンとなった。

 有り得ない。【幸運の女神】と【信じる心】を重ね合わせたら、必ず詠唱者にいい方向に運が傾くハズ。


 逆になるなんてことは有り得ない。



 「真実を知りたいか? 結果はスカになるが、何故そうなったのか見てみたいだろ?」

 「ああ、見てみたい。しばらくモヤモヤになるのを避けたいからな。」



 俺は頷きながら返事をする。

 結果がスカなんてことは最早どうでもよくなった。



 「よし、わかった。()()()()()()()()()()()と思うが、トリックを見せてやれ! モーク。」

 「りょーかい! と言うか、アイリスは既にわかってたんだ。」



 俺はモークを見る。

 でも、狙ってやった訳では無さそうな顔を僅かながら出している。



 「じゃあユッケ。一々説明するの面倒くさいからヒントだけ教えるよ。ホントに偶然だけどね。」

 「ああ、教えてくれ……。」



 さっきまでの馬鹿発言をマジで取り消したい気持ちに襲われながらも、俺は意気消沈しながらモークから答えを教えてもらうことにした。


 (1000年生きてきて、初めて自分が放った言葉に此処まで落ち込むのは初めてだ……)



 「えーっと、僕はユッケのイカサマに対抗しようとしたけど、いい方法があまり思いつかなかったから、地面に()を描いてたの。」



 モークの言葉にハッとなった俺はテーブルを上にあげる。

 その勢いで、サイコロが舞い上がりモークの側の地面にコロコロと落ちた。



 「……なるほど、これはやられた……。」



 テーブルの下で魔法陣を書いていたとは想像もつかなかった。


 魔法陣は紫色の光を放っている。



 「でも、これは僕が思ってたのと違う。つまり、失敗作なんだ。」

 「ん? どういうことだ?」



 ますます意味がわからない。

 失敗作なのにどうして成功している?


 モークは更にヒントを俺に教えてくれた。



 「()()()()()()()()()()()といて、『どういうことだ』は失礼過ぎない? あの時はマジで終わったと思ったよ。」



 俺が魔法陣を書き換えた?

 イマイチ何を言っているかわからない。



 「アイリス、どういうことだ?」

 「まだわからないか? お前、どうしてあぐらを崩して()()()()()()()()()()()()()()んだ? それさえ無ければ、この勝負はマジでわからなかったぞ?」



 俺はアイリスの助言を聞き、サイコロを投げる手前辺りを考えることにした。



■■■■■■■■■■■■■■■


 「なるほど、レベル差を生かして俺が知らない魔法を色々重ねてんな?」

 「ああそうだ。だが、お前はそれを知っても解決策はあるのか? レベルが上がった所でお前は何も出来んのだろう?」


 「なるほど、これで確信した。だったらあの作戦でいくか。」



 俺はわけもわからず困った表情をモークに見せた。

 ついでにあぐらをかいていたのが災いし、足が少し痺れた。仕方なく、()()()()()()()()()()()()()()()()


 痺れが消えたタイミングで俺はまたあぐらに戻す。



 「ゲッ!?」というモークの叫び声が聞こえた気もするが、今はそれどころではない。


■■■■■■■■■■■■■■■



 アアアアアアアア!

 マジか!


 ……と言うことは、もしや!?



 俺の疑惑に答えるかのようにモークが答える。



 「サンキュー! お前が書き換えてくれたお陰で勝っちゃった~。」

 「アアアアアアアア!」



 俺はショック過ぎるあまり発狂する。

 両手で頭を抱えて大きな声で叫んだ。



 「ちなみにその魔法、何でも教えてくれる人に聞いたところ、紫色魔法レベル2【反逆する世界(リベリオンワールド)】という奴だ。名前に反して全く使えない魔法だが、ギャンブルに関してはもしかしたら最強クラスの魔法かもな。」



 つまり俺がつい足を伸ばしてしまったせいで、全く違う魔法陣になった。

 それがたまたまこの場面でしかあまり発揮しない魔法だった。


 この【反逆する世界】、要は相手が使っている魔法が逆の効果になる。


 つまり、6の出目を出すハズだった【幸運の女神】と【信じる心】はスカを確実に出すための魔法に変えられてしまったのだ。



 まさに、偶然の産物。

 こんな事をされては対策のしようもない。


 完全に俺の負けである。



 「もう、この魔法は使わないかな。」


 

 モークはそう言いながら、描かれていた魔法陣を自分の体を揺らして消す。


 数十秒後俺はテーブルを元に戻すと、心が壊れたように意気消沈しながら座っていた。



―――――――――――――――――――――――



 6回目のユッケの一投。


 ユッケの出目はまさかのスカ。


 モークの勝率(計算上)


 勝利    75% 数字

 引き分け  25% スカのみ


 しかし、もう既に勝負は決着していた。

 ()()()()()()()()()モークは勝利を確実する。



―――――――――――――――――――――――

―モーク視点―



 「ユッケ、コレで君の負けだね!」



 俺はニヤニヤしながらユッケにイヤミをぶつける。



 「俺の負けだ。ハッキリ言ってショックどころじゃないが……おまえとの勝負は楽しかったかもな。」

 「こちらこそ。ユッケと本気で勝負して楽しかったよ。それじゃ、決着だな。」


 「この勝負のルールすら把握済みか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()1()()()()な。」

 「本当はもう少し手があったんだけど……次の勝負の時に見せてあげるよ。」


 「楽しみにしとくぜ。」



 イヤミなんて本気では言っていない。

 ホントは終始ビビってた。


 強かった。

 戦った相手には少なくとも敬意を示さなくてはならない。


 俺はサイコロを後ろに投げる。

 そして、サイコロは地面に転がった。


 出目はスカ。

 しかし、テーブルから出たので出目は1。



 「勝者3対2でモーク。おめでとう!」



 アイリスがそう言い、ゲームは終わった。



―――――――――――――――――――――――



 対戦結果


 ユッケ3勝(3勝で勝利) ☆☆☆

 モーク2勝(3勝で勝利) ☆☆


 対戦数6回。

 接戦ながらも、モークが勝利した。


 これにより【臆病者】達の行き先は鉄の王国アイロンに決まった。

 しかし、【臆病者】は嫌な予感を嗅ぎ取っていた。



 昨日、サングラスを一時的に取った黒ずくめの集団の所属が鉄の王国アイロンだと言うこと。


 ※第16話後半~19話参照。


 サングラスは軍事的目的に使用されそうになった原因で追っ手から逃げてきたこと。



 これは運命なのか、タダの偶然なのか。

 答えはまだわからない。


 今は運命という荒波に流されるがままである。



―――――――――――――――――――――――

―【臆病者】アイリス視点―



 サイコロ勝負が終わった後、俺はユッケとモークに色々説教をしていた。


 低レベル過ぎる口の悪さは流石に無視出来なかった。


 いくら本心で言っていなくても、他人を傷つける行為になりえる材料だ。

 ここで釘を刺しておかないと後々深刻な問題になる。



 「いいか、人の悪口を今度からは目の前で言うんじゃない。」

 「ハイ。スミマセンデシタ。」

 「二度と公共の場所ではしないので許してください。」


 「大体、おまえ等の口の悪さが尋常じゃないのは何故だ?」

 「それはその……挨拶みたいなもので……。」

 「そうそう。魔物では他人の悪口を言うブラックジョークがあってな……。」


 「文化の違いでどうこうは言わない。それがルールだったら俺も従う。だが、今は人間のルールに従ってくれ。面倒事が起きたら最悪な事態が起きかねないからな。」

 「「……わかりました。」」



 モークとユッケは、互いに落ち込んでいる。


 (言い過ぎた気がする。まあ、わかってくれれば良いんだけどな)


 俺は内心後悔しながらも、自分を正当化する。

 他人の悪口はジョークでも怖い武器なのだ。



 俺達はしばらくした後、【カルッツイロ草原地帯】を抜けることにした。



 「すまないユッケ、モーク。これから【試練の森】に向かって、忘れ物を取りに行かないといけない。勿論大丈夫だな?」

 「約束だしね!」

 「さっきのルールでそう言ってただろ? 俺も大丈夫だ。」



 決まりだ。

 試練の森はここからそう遠くない。


 またあそこに行くと、失うものがあるが仕方がない。

 コレが俺の出来る弁償方法なのだ。


 そんな事をずっと考えていると、いつの間にか草原がなくなり、目と鼻の先に森が見えた。



 「着いた。あそこが俺の()特訓場所【試練の森】だ!」



 俺はユッケとモークにそう紹介した。



【運命の女神】って英語でLadyLuckだと初めてしりました。


でも、なんだかそのままだと味気ない気がするので……。

後はご想像の通りです。


※不備(詳細は省略)修正 加筆あり

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