第31話 「魔法って何?」 後編
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赤→火や炎と言った燃える系統。
相手の体に火で燃やし尽くす事も出来る。
青→水や氷と言った冷やす系統。
相手の周りを凍らせて倒すという変わった戦い方も出来る。
緑→風や自然と言った自然豊かな系統。
特にこの緑の魔法は、回復や補助系統が多いという。
補助魔法は簡単に言えば味方の攻撃支援だ。
黄→光や聖なるものといった輝く系統。
錬金術という夢のような魔法があるかもしれないと噂されている魔法だ。
強力な雷の魔法も放つ事が出来る。
紫→毒や隠れ技などといった隠密系や弱体化サポート系統。
相手のステータス(凄く簡単に言えば、どれくらい強いかを数値化したもの)を減少させたり、毒や麻痺などの魔法も習得出来る。
黒→暗黒や絶望などといった魔王系統。
この魔法を一つでも習得してしまうと、魔法自体に呪われるらしい。
強いと言うのを密かに聞いたことがあるけど。やめておこう。
橙→希望や勇気などといった勇者系統。
最後の最後まで諦めない勇者らしい魔法がずらりと並ぶ。
極稀にこの魔法を生まれた時から殆ど習得している時があり、人はそれを【勇者】と呼ぶらしい。
特殊→絶大な威力を秘めた謎大き系統。
どんな魔法があるかわからないらしい。数千年たった現在でも、人間は必死に研究しているらしい。
ただ、凄まじい力を秘めている事は明らからしい。
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ざっとこんな感じだ。
何だか急に複雑になった気がする。
《また、それぞれ色の種類によってメリットとデメリットが存在します。詳しくは絵をご覧ください。》
説明に従い、絵を見る。
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……一方その頃。
ナークプルはアイリス達到達まで後1000メートルと言う所に差し掛かっていた。
ナークプルの速さは秒速100メートル少し。
このまま行けば、たった10秒でアイリス達に追いつく。
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~ナークプル・カルナ視点~
……見えた!
あいつが噂の【臆病者】か?
ステータスを見た所、私が対峙した相手の中で一番弱いステータス。
唯一の長所は……素早しっこいぐらいね。
大した相手にならない。
なぜか魔法とスキルを覗けないのは些か不気味だけど。
後500メートル。
この調子で……。
「……させるわけないだろ?」
突然私の目の前にひとりの男が立ちはだかった。
黒色の半ズボン。
綿で出来ている灰色の長袖。
がっちりとした黒色の分厚いセーター。
左手には大きな4本の爪状の武器。
腰には剣を携えている。
装備は、ふくらはぎ辺りに鋭い針が数本付いている鋼鉄の防具。
頭には異世界人の【にほん】という国が昔付けていた【戦国時代】の兜の用なもの。
いつの間にか掛けていた魔法が全て解除され、普通の速度までに足が遅くなっている。
私の心臓が警鐘をならしている。
絶対に勝てない、と。
「誰でしょう? 私は後ろの【臆病者】を追っているの。邪魔しないでくれませんか?」
「じゃあ、俺の監視を妨害するの止めてくれませんか? 俺は【臆病者】を監視している。どうやら【臆病者】を追っていたようだけど、そうはさせんぞ?」
監視?
彼を監視する事自体がわからない。
私は彼にキツく言及する事にした。
「なぜあなたは【臆病者】を庇う? 彼はイケザキ村で仮指名手配扱いされています!」
「じゃあさ、何で君達は彼を【臆病者】と言って嘲けまくっているんだ? あの特訓を間近で見た俺には全く理解出来ん。」
「質問に質問を返さないでください。もう一度聞きます。なぜあなたは【臆病者】を庇う?」
「うーん、運命的なものかな? それ以上は余り答えたくない。それより、君に【臆病者】の捕獲はハッキリ言って無理だ。そんなに【臆病者】の所に行きたかったら、俺を倒してからにしなよ。まあ、無理だけどな。」
私は左脇の剣を手に持って構える。
勝てないと思った試合でも、私は信じて戦ってきた。
「ケガしても知りませんよ?」
「どうぞ? ちょっと遊んであげましょう。」
「……忠告はしたわよ……。」
私は左脇の剣を抜いた。
かつて私が冒険していた頃、鉄の王国アイロンの特別許可をもらい、製作してもらった至極の一品である霊刀【椿】。
紫と赤の色をベースに、特注で制作された西洋剣の長剣。
刃の長さおよそ80センチ。
それを男に向けて突く。
刃は男の胸に当たった。
……ヤッパリまやかしであったか。胸に刃が刺さって倒れない奴など……。
「ところが俺は生きてるんだよな~。胸に刃が突き刺さったら、普通は死ぬか瀕死だけど。相手が悪かったな!」
「! ……バカな! 確実にこの剣であなたの胸を突いたはず……。」
「ついでに俺のステータスだけ確認してみろって! 今のうちは【ステータスの非公開】を解除するから。」
いわれた通りに私は男のステータスを確認する。
男ステータスを見た私は愕然する。
恐怖の余り、左手で口を抑えてわなわな震える。
レベル276(普通の冒険者なら20~30程度)!?
有り得ない……。こんな数字、今までみたことない!
なにこの防御力……。6000!?
私達全員の攻撃ですらかすり傷程度で済んでしまうじゃない!
体力は私より若干下。
「ど……どうしてあなたはそこまで強いの? まさか、あなたは……。」
「強い冒険者なら少し耳にしたことがあるかもしれないけど、俺の名はユッケ。下の名前は無い。」
ユッケ?
もしかして……。魔物!?
ユッケと名乗る男は更に続ける。
「このまま大人しく俺と【臆病者】が戦う所を見ておいてください。」
そう言うと、一瞬で私の目の前にまで近寄る。
速い!
虚を突かれた私はすぐさま右手に持っている剣を振ろうとする。
「遅い! 【操り人間・魔手】!」
剣を振り下ろそうとした右手がいつの間にか動かない。
動かせない!
足もおぼつかない。
何かに縛られているようだ。
「大抵の人間の男はここで君をいたぶるんだけど、俺の欲求は普通の人間の1%という残念な事実があるんだ。君には【臆病者】の戦闘を見てもらうよ。」
最悪のケースは回避したようだ。
「ただ、【臆病者】の邪魔をさせないためにも、8割位はダメージを受けてもらうよ。受け身の体制とダメージ軽減の魔法をとってね。」
だが、私はどうやら男の一撃を食らうらしい。
直後、男は緑色の魔法を唱える。
(無詠唱魔法?有り得ない!魔物は10秒ほど時間を取らないと詠唱出来ないのに……)
それを私のお腹にめがけて激突させる。
男の放った魔法は緑色の魔法、低レベルである【風球】。
質量を得た風の球を勢いめがけて私のお腹にぶつけたのだ。
鋼鉄の鈍器を、全力で殴られたレベルよりも強烈な一撃。
私は我慢出来ずに口から血を吐く。
そして私は遙か後方に飛ばされた。
「くっ……【損傷の抵抗】! 【風圧軽減】! 【魔力の防壁】! 【旋風の守り】!」
私は一番この状況で有効な魔法を片っ端から掛ける。
お腹の激痛が大いに響く中、死にたくないから必死に魔法を唱える。
私が一撃を食らわされた場所からおよそ100メートル。
私は地面に斜めから激突。
受け身の体制をとっていても、余りの勢いでゴロゴロとカルッツイロ草原を転げ回る。
ようやく止まったのはそこからおよそ20メートル。
ついにピタリと体が止まった。
起き上がることが出来たが、また我慢出来ずに私は側にあった枯れ草に血を吐く。
血を吐いた枯れ草は、金色からいつの間にか真っ赤で黒い色へと姿を変えていた。
収納魔法で回復薬を取り出したいが、いつの間にか魔法が封じられていた。
さっきまで使えたハズなのに……。
(負けた……。【黒十字団】創設以来の敗北……。リーダーの私が、こんな無様な姿を……。ユッケ、次は負けない!あなたにいつか勝利してみせる!)
私はユッケの再戦を強く望んだ。
しかし、私には1つ引っ掛かる事がある。
(絶大な力を持つユッケ、彼自ら監視する程の者なの?【臆病者】って。あと、ユッケは【臆病者】と戦闘するつもりだとか言ってた。気になる。彼の戦闘。)
あのユッケとかいう男が【臆病者】を高く評価しているのだ。
600メートル程先に臆病者が見える。
私は、しばらく動けない。
此処で大人しく回復を待った方が吉だと考えた。
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~モーク視点~
ふーん。
ちょっと面倒くさいけど、何となくわかったよ。
赤は緑に強くて、
緑は黄に強くて、
黄は紫に強くて、
紫は青に強くて、
青は赤に強い。
黒と橙は互いに強くて、
黒は赤、青、緑、黄、紫を飲み込む。
特殊は他の種類に全部強い。
こういう事だね?
《はい。後は、特殊魔法以外は様々な魔法にレベルというものが付いています。》
ラベル?
なにそれ?
食べるものではなさそう。
《レベルてす。魔法の強さ事に分けたと言うことです。一番弱い魔法をレベル1、一番強い魔法をレベル7と人間の規定で定められています。》
特殊以外のそれぞれの種類から、更に魔法の強さごとに7段階に分けられているという解釈でいい?
後、絶対特殊も何らかの方法で強さごとに魔法分けているんでしょ?
《合ってます。ちなみに特殊魔法の区分の仕方は、上から【極位魔法】【中位魔法】【下位魔法】【序位魔法】と区別されます。また、これとは全くの別物ですが、【創造魔法】という魔法も存在しています。》
【臆病者】のアイリスが少し驚いている。
何かの魔法に心当たりでもあるのだろうか?
《じゃあ、アイリス様に少し実演をしてもらいましょうか?》
お!
いいね!
僕は歓迎だよ。魔法がどういう感じで詠唱するのか気になるし。
「え? 俺がモークに実演?」みたいな顔をアイリスがする。
サングラスが何かしらの方法でアイリスとくっついているのはわかった。
どういう方法で繋がってんのかがイマイチわからない。
「モーク。魔法を見たいのか?」
《口が悪かったらシメますよ?》
「ああ、ハイ。オネガイシマス。」
このまま何時もの調子だと、嫌な予感がする声が僕の耳に響いて来た。
僕はカタコトでお願いする。
「わかった。あんまり乱発出来るものじゃないし、よく見ておけよ。」
するとアイリスは、前に見せた黒い渦を発動させ、中から液体の瓶を取り出す。
「まず、今さっきの奴も魔法だ。【収納魔法】って言う。簡単にいえば、虚空間の中に一定数まで物を入れられる魔法だ。取り出したいときは、取り出したい物を頭に思い浮かべる。一番便利だぞ。魔力の消費ほとんど無しで使い放題だからな。」
へえ~。
収納魔法って言うんだ。
ヘンな黒い渦みたいな奴は、魔法だったのか。
俺が収納魔法に興味を寄せていると、アイリスは瓶の中の液体を飲み干す。
カラになった瓶を収納魔法の渦の中に入れた。
「【この世界に迷いし水の聖霊達よ。我の魔力を糧として結託し、この枯れ草を凍らせよ! ・ 氷生成】!」
アイリスは近くの枯れ草を目標にしたのか、両手を重ねる。そして、長い詠唱で青の魔法を唱える。
すると、両手から冷たそうな青色の冷気が出て来た。
冷気は近くの枯れ草に触れた途端、氷の塊を精製する。カチコチカチコチと氷が大きくなり、最終的にはアイリスの足の付け根の高さまでに成長した。
「これが青の魔法レベル1、【氷生成】だ。この位大きくするためには、魔法の【詠唱】をする必要があった。長々と面倒くさくて、戦闘には向いてないけどな。これは青色の基本中の基本だ、アハハ。」
アイリスは右手で出来た氷を指して笑っている。
「【この世界に迷いし火の聖霊達よ。我の魔力を糧として結託し、この枯れ草に住み着いている水の聖霊を解散させよ! ・ 火生成】!」
今度は氷に向けて赤の魔法を詠唱する。両手から大きな赤い火が氷めがけて放たれる。さっき放った青の魔法より強そうだ。
赤い火は氷を完全に溶かしきった後、役目を終えたかのようにフッと消えた。
「今さっきの奴が赤の魔法レベル1、【火生成】だ。さっきの法則をとると青が強いが、それより数段強くしている。そうすることで、赤でも氷を溶かすことが出来る。」
「へぇ~。じゃあ、【氷生成】する前にアイリスは瓶の液体を飲み干してたけど、あれは何なの?」
「あれか? あれはただの水。確かに魔法は魔力を使ったら氷や火を生成出来るんだけど、どうしてもコストの関係で使いづらいんだ。そこで、予め氷の元となる水を予め飲んでおけば、魔力で水を生成する手間が1つ省けるってわけ。種類と魔法によって生成するものは違う。例えば氷の他に、火だったらあの辛いハバネロとか食べるとか色々あるんだ。」
「つまり、あの時やってたことは魔力の節約ってこと?」
「そう言うこと。」
大体の魔法の要約は理解できた。
僕は魔法を何も覚えていない気がする。
《はい。何も覚えていません。》
そう言えばしれっと「何も覚えていない。」とか言ってたよな……。
※第30話参照。
俺は少し悔しくなった。
※タイトルを修正(2回目)、最後の文章《あなたは何も習得していません》からの下りを一部修正。前話で一応サングラスがモークに言っていました。
モーク「これ、ちょっとネタバレじゃない? いいの? 別に言っても俺は関係ないけど?」
※不備(詳細は省略)修正 加筆あり




