第27話 君の愛称は……。
※前話の後ろに、物語の一部を追加しました。この話を読む前にまだ一部を読んで居ない人は、第26話 あのモークタンがあらわれた 後編をお読みください。
渋々俺は、モークタンに干し肉を一枚渡す。
可をあげようと思ったが、流石に可哀想だったので上にした。
上は脂身がそこそこ付いていて、ジューシーさがワンランク増している。
※干し肉のランクについては、第14話参照。
モークタンは干し肉をくちゃくちゃ音を鳴らしながら頬張っている。
(口そこにあったんだ……。これはある意味初めて学習したな)
それより、俺はモークタンのくちゃくちゃ音が気になったので注意をする事にした。
「モークタン。余りくちゃくちゃ音を鳴らすのは控えた方が良いよ。多分、人間に滅茶苦茶馬鹿にされる。」
「そうなのか? 俺達魔物は、くちゃくちゃ音を鳴らしながら食べるのは縁起が良いと言われているから、当たり前の事なんだけど?」
なるほど……。
文化の違いか……。
流石にこれは色々悩み所だな。
「でも、人間が沢山居る所になったら控えろよ。魔物にも文化があるように、人間には食事のマナーと言う文化がある。一番理想なのは、その文化を尊重し、律儀に守る事だな。」
「へえ~、人間は食事のルールに敏感なのか。それは知らなかった、今度から気をつけるよ。」
(こういう所は素直なんだけどな……口がそこそこ悪いのが一番ネックだよな)
それはそうとして、一つだけ引っかかることがある。
せっかく仲間になったのに、種族名であるモークタンをそのまま愛称にしてもいいのだろうか?
「モークタン、俺は今から旅で非常に重要な話をする。よく聞け。」
「旅で非常に重要な話? ……モグモグ……なにそれ?」
モークタンは干し肉を噛み締めながら俺の放った言葉に食い付いた。
(俺の話し掛けるタイミングが悪かっただけだな。俺のせいだろう)
心の中で小さく反省する。
「俺は今の愛称は【臆病者】だ。お前の愛称は一応、種族名である【モークタン】となっている。そうだろ?」
「うん。そう言うことになってるよね。」
「冒険と言うものは個人個人を決める《名前》や《愛称》と言うやつが必要不可欠なのは言うまでもないよな?」
「うん。僕達魔物は無くても良かったけど、人間はそうはいかないからね。」
「そこでだ! 互いに別の愛称を一生懸命考えて、それを世間に名乗るのはどうかな? ほら、カッコイイ愛称を名乗った方が良いと思うんだけどな。」
「ふざけるのは無し? 【変態スケベ野郎】とかはアリなの?」
「……無し。コレは真剣に考えて欲しい。ふざけているかのような愛称を付けたら、俺が納得するまで考えさせるぞ?」
「わかったわかった。じゃあしばらく考えるから少し待ってね。」
「俺もモークタンが考えている間に考えるよ。」
モークタンはまたぺったんこになって考えている。
多分本当に、真剣に考えていると思う。
さて、どうしようかな?
俺は枯れ草に腰を下ろして考える。
右手が顎あたりに自然と動いている。
モークタンモークタンモークタン……。
うーん、余り良いアイデアが浮かばんな。モークタンから少し弄ってみるとするか。
モーカ、モーロン、モーリン、モール、モートン、モーリス、クース。
……。
イマイチしっくりこないなぁ。
モークタン、……ゴホッゴホッ。
モークタンモークタン、モー……。
(ん?待てよ、この愛称は意外にマッチしているな。後はモークタンが気に入ってくれればいいけど……。)
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~モークタン視点~
【臆病者】にどんな愛称を付けようかな?
おふざけは禁止だとキツく言われたしな。あのままじゃあ、【臆病者】は俺の稽古を死ぬほどしてきそうだからな。
大人しく、真面目に考えるとしよう。
「【臆病者】。僕達モークタンには独自の言語があるけど、それから引用してもいい? 名前にちゃんとした意味があるのは、ある意味面白いんじゃない?」
「え? お前らは独自の言語を持ってんのか? 初耳だぞ? 別に変な意味以外ならいいけど。」
「モークタン言語と言うんだけど、多分人間には全く理解できないと思う。コレを使って、モークタン達は人間達の場所を常に把握してるよ。人間達に超重要な手紙を送っても、何書いてあるかはサッパリ理解できないと思う。」
「それはヤバイな。今はかくしておいた方がいいぞ? 最悪、国同士の争いの暗号文になったら大変だ。ただ、愛称にするならそれはそれで面白そうだな。」
オッケーだな。
うーん。
アルカハ・カーフト
クサヤナ・チナリア
ナナタル
カサラナカハマタサナタカ
ケニフト・ノテネヤバ
……絶対【臆病者】キレるな(本気でキレるとどうなるかは知らないけど)。
じゃあ、【臆病者】の性格から見てみようかな。
タカハツ・ヤッカ(【臆病な守護者】)。
何か嫌だ。
チフユコテル・フテユ(【自由の意志】)。
なにそれ美味しいの?
……。
……。
……ん?
まてよ、コレはアリなんじゃないか?
【臆病者】の本当の性格をキッチリと表し、なおかつ名前になりそうな単語。
まあ、【臆病者】が勝手に決めたら良いけどね。
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【臆病者】達はそれぞれ相手の名前を真剣に考え、そして決める。
肌寒い風が2人を襲っているにも関わらず、2人は「寒い」と言うのを余り感じなかった。
【臆病者】は初めての仲間が出来た。
モークタンは自分を理解してくれる人間が初めて現れた。
その小さな幸せが風を暖かく感じるのだろう。
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―臆病者視点―
「さて、そろそろ決まったかな?」
「ああ。何時でも大丈夫だ。」
「よし! まずは俺【臆病者】が、モークタンに愛称を付けよう。」
「……。」
俺は息をお腹が少し膨れるまで吸う。
シンプルが一番。
それが、俺の考え方だ!
モークタン、君の愛称は……。
「お前の愛称は【モーク】! これからは、モークタンではなくモークと名乗れ!」
「……わかった。シンプルだが、悪くない。これからは、僕の愛称は【モーク】! ありがとうございます!」
モークは頭を下げる。
少しニッコリした時の目だった気がする。
「よし、モーク。次はお前の番だ。俺に愛称を付けろ!」
「わかった。僕も【臆病者】に愛称を付けよう!」
「……それでいい。」
「現在、僕は【臆病者】が、どうして【臆病者】なのか、サッパリでした。だって強いもん。僕は、あなたが【臆病者】だというのは完全なホラ話だと確信しました。だから、今度は僕が【臆病者】に本当の愛称を付けたいと思います。」
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モークは【臆病者】であるハズの俺を完全に否定してくれている。
(正直、ちょっと泣きそうだな。今まで散々【臆病者】にまとわりつかれていた。悔しくて悔しくて、ただ【試練の森】で魔物と死の瀬戸際の綱渡りを無駄に渡っていくハメになった。自分が勝手に決めたのに魔物のせいで、魔物のせいでって。でも、違ったんだな。魔物は全部が黒くは無かったのか。)
《全ての魔物が悪いという訳ではないと?》
ああ、そうだ。
2年前のクリスマスというあの聖なる夜を、俺は決して忘れない。
クリスマスは元々異世界にもあったが、この世界にも同じイベントがあったからな。
また、丁度良い機会があったら話そうかな。
多分お前は俺の記憶をたどって知っているだろう?
《はい、戦いであんな事が起こったのは私も驚愕です。やはり心が全て黒の生き物は居ないと痛感しました。》
だろ?
俺は涙出そうになったぜ?
あれ以降、俺は【試練の森】で特訓はしても、魔物を殺すことはほとんど無くなった。
《モークはどう思いますか?口は酷くても、本当の性格はどうですか?》
逆に、モークの性格ですら難しいのか?ステータス解析もかなりかかってるのに。
《はい。非常に難航と言うよりかは、新しい発見が多過ぎて戸惑っているといった方が正解です。》
そうか。
まあ、気長に待つよ。
モークタンが、誰が何の為にこき使われているか調べないとな。
何にせよ余りにも弱過ぎて初心者の経験値になっていること自体おかしな話だ。
《了解しました、マイマスター。》
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モークは息を吸って言った。
「お前の愛称は【アイリス・オーリア】! これからは、【臆病者】ではなくアイリス・オーリア、アイリスと名乗れ!」
「……わかった。いい愛称だな。これから、俺の愛称は【アイリス・オーリア】! ありがとうモーク!」
アイリス・オーリア。
悪くない。
(モーク以外と真剣に考えたな。ちょっと強く言ったのが功をそうしたかな。)
それより、直前に言ってた奴は何だったんだろ?
モークタン言語って聞いたことないけど、アイリス・オーリアがどんな意味なのかは気になる。
「モーク。アイリス・オーリアって、モークタン言語でどんな意味何だ?」
「ええーっと、【慈悲深い人間】って言う意味だよ。アイリスで【慈悲深い、優しい】とか言う意味で、オーリアが【人間】。響きが良かったし、何かそれっぽかったから……。」
……まあ、いっか。
人間は【慈悲深い人間】と言う意味が隠されている事自体知らないし。
ともかく、これで旅は出来そうだな。
……あ。
そんな事考えてたらこれは来たな。
「いたぞ! 【臆病者】だ! 魔法で痛めつけても構わん! 捕まえろ!」
探していた冒険者が、俺を見つけたようだ。そろそろくる頃だとは何となく感じていた。
「モーク。すまんが俺を追う冒険者に見つかったようだ。少し逃げるぞ。」
「元【臆病者】は大変だね! アイリスさん。」
(ちょっと嬉しいけど、後で本当にサングラスである程度懲らしめようかな。それが薬になったらさらに嬉しいし。)
そんな事を考えながら俺達は【カルッツイロ草原地帯】の奥へと逃げる。
モークは俺の頭の上に乗っかった。
「おい! モークタンがいるぞ! 捕まえたらある程度の金になるんじゃね?」
俺を追っている冒険者の一人がそう仲間につぶやいている。
「おお! 元モークタンも大変ですね! 俺より大勢の冒険者達に追われて。」
「グヌヌ……俺のネタを勝手に使いやがって……。成敗!」
「痛! 止めろって。今は冒険者達に追われているんだからさ!」
モークは俺の頭を飛び跳ねる。
体重がそこそこ重いので案外モフモフでも痛い。
今日新しい仲間を見つけた。
名前はモーク。
最弱であるモークタンの【特殊魔物】。
俺の旅の初めての仲間だ。
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※不備(詳細は省略)修正 加筆あり




