表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/26

終幕


 エミリアとカイルで赤ちゃんとフェレ助を近隣の草原に散歩へ連れてきた。


 人気がなく、まだ蕾の草花が揺れているそれは、地平線まで緑が広がっている。

 赤ちゃんはよちよち歩きが達者になってきて、心置きなくフェレ助と追いかけっこをしていた。


 その様子をスケッチしているエミリアの横で、カイルが腰をおろし、その手元に描かれる絵を覗き込んでいた。


「相変わらずだな…」

「ん?何が?」

「いや…俺も前に、肖像画描いてもらったろ?花冠のっけられてさ」

「あー。カイルってば、文句言いながらも描かれてくれたのよね」


 手を止めてくすくす笑っているエミリアを、愛しげに見つめて目を挟めた。


 心地の良い風が頬を撫で付けている。


「カレンシア公爵令嬢に、あの赤ん坊は未来でこの国を滅ぼせる力を持っているから扱いは気をつけろと聞いた時は、身構えたもんだけど。


こう見ると普通の赤ん坊だな」


「うん、ちょっとイタズラ好きの、ラファエルは、普通の赤ちゃんだよ」


(もし、それが将来国を滅ぼす暴君になるのだとしたら、きっとーー)



「きゃーーい♪」

「待つんだフェレ〜、水をかけちゃうぞフェレ〜」


 追いかけられるのが楽しいのか、フェレ助がふらせる水飛沫が嬉しいのか、ご機嫌な様子でこちらにやってきた赤ちゃんは高速よちよちであっという間にエミリアの目前まで迫り来る。


 同時に水飛沫がかかるが、一つ瞬きした後に笑顔でエミリアに手を伸ばしてくる赤ちゃんを見て、そんなことはどうでも良くなった。


 スケッチブックを小脇に置いて、赤ちゃんを抱きあげて、高い高いをすると、きゃっきゃっとはしゃぎ声をあげて、今度はカイルに手を伸ばす。


 最近、赤ちゃんの扱いに慣れてきたカイルは、赤ちゃんを抱えた後、しゃがみ込んでから高く上げてやると、うきゃーっ!と、更に感極まって喜んだ。


 するとーーまとわりついた風が、フェレ助の水飛沫により現れた虹を巻き込んでき散する。


 エミリア達がいる箇所を中心に、虹が輪になって草原の向こうまで広がり、虹が通過した下にある蕾が花開いて、季節関係なく咲き誇り、色とりどりの花畑があっという間に出来上がってゆく。



「わぁ…」

「ーーすごいな」



 赤ちゃんが操る風の中、花びらが舞い上がり、見たこともなく温かで綺麗な光景に、エミリアの胸はなぜか締め付けられた。


 カイルの両腕にささえられて笑顔を浮かべる赤ちゃんに視線を戻したエミリアは、呟く様に、先程の心の中での言葉の続きを言った。


「ねぇ、カイル」

「ん?」


「ラファエルが笑いながら、魔法を使う時って、いつも素敵なことがおきるの。誰も傷つけない、助けたり、感動させたり」


「ああ、そりゃ。こいつがそうしたいと思ってるからだろ」


「ーーうん、だからね。

私思ったんだ。


ラファエルが将来、この国を滅ぼすんだとしたら、それはきっとラファエルのせいじゃなくて。


この国の大人達が、ラファエルをそう育てたんだって…私は思うの」


 全ての理不尽を弱い者に押し付けた。

 この小説は確かに、それから始まった物語だった。

 だから、私に出来ることはそんなに無いけれど。


 ラファエルが、今の様に、人を幸せな気持ちにさせる、優しい魔法を使いたいと思える様な日々を一緒に過ごしたいと思った。


「…そうだな」


 カイルは否定することもなく、赤ちゃんを見ながら頷いた。


 



 二人の足元で、スケッチブックがパラパラと捲られていく。

 そこに描かれていたのは今と同じ光景ーーそして、まだ誰も知らない〝未来〟だった。


 その未来が、救いになるのか、破滅になるのか。


 それを決めるのはきっとーーこれからの私達なのだ。








第一部 fIn 第二部へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ