~ 夕飯 は ハンバーグ ~
お母さん?
佐野が お母さんと呼んだ その女性は …
どう見ても 30才前後にしか見えなかった …
髪は 肩くらいの長さで 清潔感のある水色のワンピース …
顔色や肌の色が …
少し 青白く見えるが 女性には 割りと多いのでは 無いか と 思う程度だ …
佐野 の言う 「お母さん 」は
佐野 の 後ろを 何を話す訳でも無く…
黙って ついて歩いた …
裏野ハイツ 横 の 卵形の石が 見えると
お母さん は サッ ! と
石から 姿の見えない位置に移動し
佐野 が 家の鍵を開けるのを待っていた …
佐野 は 卵形の石 を チラリッと見て
家のドアを開けた …
ボ ワ ァ アァ ~!
卵形の石から 白い煙が立ち昇ったが
お母さん は 恐ろしい形相で 101号室へと 駆け込んだ …
今夜も 駄目か …
佐野 は 悲しそうに
心の中で 呟いていた…
部屋の中に入ると
食卓テーブルの上に
ハンバーグ と 野菜スティックのサラダ
それと …
ソラ豆の 冷たいスープが並べられていた
「お母さん … どれも 美味しそうです !ところで … お母さん 今日は 何処から出たんですか?」
佐野 は お母さんに聞いた …
お母さん は 右手を ソ ロ ~ッ と 上げて
人差し指で 窓を 指し示した …
「そうですか … やっぱり 窓ですか … ですが お母さん … 折角 玄関があるのですから 其処から 出入りされては … 」
ヒ ュ ~ ゥ ~ ッ ヒ ュ ~ゥ~ッ !
冷たい 冷気が 室内を満たし …
カ タ ッ … カ タ カ タ ッ … カタカタカタカタ !!
と キッチンから まな板が 踊る 音 が 聞こえた …
「いぇ … あのぉ … お母さん … む っ …無理にとは 言わないですよ … 怒らせたのなら … 謝ります … すいません …」
お母さん は 落ち着いたのか …
室内は 静かになった …
佐野 は 寝室で スーツから 部屋着に着替え
リビングへ 戻ると
食卓テーブルの椅子に座り
「頂きます … 」
リビングの ソファーに
背筋を伸ばしたまま 俯いて 座る
お母さんに 声を掛けた …
コ ク ン ッ …
お母さん は 何も言わず 頷いた …
佐野が 夕飯を食べていると …
冷蔵庫が 勝手に開いて …
缶ビールが 冷蔵庫から食卓テーブルへと移動し
シュッパッ !
と 缶が開いた …
「あぁ すいません … 」
佐野 は ゴクゴクとビールを飲み
「あっ ! お母さん そう言えば 今日 201号室の 三上さん 引っ越しちゃたんですよ … 三上さん お母さんの姿が見える人だったから … 「若い女の子騙してんの!」って 引っ越して来た 当初 よく怒られましたよ ~ はははっ!」
ヒ ュ ~ ゥ~ ゥ~ ヒュ~ゥ~
再び 冷たい冷気が 部屋中を満たした …
「ヤァ~サァ~シィ~ヒ ィ ~ト ォ … ダッ タァ アア~!! 」
カタカタカタカタ カタカタカタカタ
「そうですね 優しかったですよね … でも… お母さん ?あのっ … 感情を高ぶらせないで 落ち着いて下さい ! 怖いですから … 」
ピタッ!
物音が 静まった …
夕食後 佐野は 入浴を済ませ …
「では 休みます … お母さん お休みなさい … あぁ それと … 明日は休日なので 午前中は 公園に散歩に出掛けますね … 心配しないで下さいね 」
と お母さんに 声を掛け 1日を 終えた …




