~ 私 の 母 は ~
「昌子 無理しなくて良いのよ … ゆっくりね … 重いと思ったら持っちゃ駄目よ!」
「うん … 」
此処 裏野ハイツでは
朝早くから 201 号室 と 202号室に住む
三上 正子 と 立川 昌子 親子の引っ越し作業が行われていた …
「えっ ? あっ ? 三上さん? お引っ越しですか …?」
101号室に住む 佐野 弘 が 正子に声を掛けた …
「あらぁ~ 佐野さん ! おはよう ございますぅ~ 此から ご出勤 ? 」
正子 は ニコニコ と 応えた …
「いやぁ ~ 三上さん 長い事 住んでらっしゃったのに … その … 何と言うか … 」
佐野 は 困惑した顔をして そう言った…
「アハハハハッ! そ ~う ? 本当は 煩いのが 居なくなるって 思っているんじゃないの~? まぁ 仕方ないわよね ~ 実際 煩いし ! アハハハ! 何かね ~ 不思議な話よねぇ~ 私が 裏野ハイツに越して来たのが 20年前 … その二年後に 生き別れた娘が 隣に引っ越して来ていたなんてねぇ… 人生の不思議 発見!なんちゃ~ってよねぇ~ アハハハ!!あっ ! それじゃ 佐野さん ! お世話になりました !お仕事頑張って下さいねっ! モリモリっ!アハハハ!」
佐野に手を振り 正子は引っ越し業者の車へと向かった
「三上さん ! お元気でっ!! 」
佐野は 腰を90度に曲げて 頭を下げると
会社へ出勤するため 駅へと向かった …
「加藤さん … 翼 君 ! お世話になりました … 此からは 娘と二人 … 老々介護で ひっそり暮らします … 何か 辛気臭いわね… 嫌だわ 私ったら … 」
正子の目から涙が 溢れた …
「あらぁ 嫌だ … 私って駄目ねっ! 加藤さん も 来月 引っ越しよね ?」
翼の母 美香 は
「はい … それが … 急に 1週間後になってしまって … 寂しくなりますね … 」
と応えた …
「あっ … お母さん … そろそろ行かないと … 」
昌子の声に 正子は ニッコリ微笑み
「そうね … それじゃ 加藤さんも 元気でね!翼 君 さようなら … 」
言葉を残し 裏野ハイツを 後にした …
佐野 弘 50才 …
医薬品会社の 営業部長 …
「部長 ! おはよう ございます! 昨日の赤井総合病院の件ですが … 」
部下である 営業マン達は
佐野 の その人間性や 判断力と行動力に惹かれ
佐野が出勤すると
何時ものように 佐野を囲み 意見を求める
連日 多忙 極まりない 佐野であった …
帰る頃には
グッタリと 疲れ果ててしまう事も …
今夜も終電で 日の出町へ戻る
佐野は 駅を出て 裏野ハイツへと向かう …
ス タ ス タ ス タ ス タ …
コ ツ ッ … コ ツ ッ … コ ツ ッ …
佐野 は ピタッと立ち止まり
後ろを振り返る …
電柱の影から
佐野を 見つめる 青白い肌の 女 …
佐野は ニコッと微笑み
「今 戻りましたよ! 迎えに来てくれたのですね ! お母さん ありがとう !」
と 爽やかな 笑顔 を見せた …




