63 10月
新浜だより
日本野鳥の会東京支部(現在は日本野鳥の会東京)支部報「ユリカモメ」 1997年12月号掲載
63 10月
あった。これがそうなんだ。枝かげの細いつるに、丸い実がいくつも下がっている。スズメウリ。「ありますよ」と言われて通るたびに探していたのに、これまではどうしても見つからなかった。観察路のメインルートで、入口から百mもないところ。なんでわからなかったのだろう。
理由は簡単。スズメウリがからんだ木は実をたくさんつけたトベラ。トベラの実は黄色く熟して裂け、粘りけのある赤い種子をむきだしにするので、白く熟すスズメウリとは似てもにつかない。しかし、未熟の間はどちらも黄緑でまん丸く、サイズも15ミリ前後。まぎれて目につかなかったのだ。その上、このあたりは夕方になるとクロベンケイガニが大挙して餌をとりに出てくる場所。カニを踏むまいと地面ばかり見ているため、道の横にはなかなか視線が行かない。
あこがれのスズメウリ。一度意識に入ると、なぜか背景から浮き出して見える。2、3日後、通りすがりにもっとたくさん実をつけた別の株を見つけた。秋の楽しみがまたひとつ増えた。
セイタカアワダチソウの花盛り。大原野の中心部は昨年の工事で広い棚田になり、ポンプのトラブルでいまだ水が入らないため、イネ科のオオクサキビの牧草地と化した。目下業者委託で耕耘作業のまっ最中。黄色い花に埋めつくされた面積はいくらか減ったものの、まだまだみごとなものだ。ススキやオギの穂がなびき、夕空にカモが飛ぶ。アキアカネの羽が光る。
10月18日は友の会のお月見。昨年9月の初回に続く第2回目。心配した冷え込みも大したことはなく、7時をまわってから端がほんの少し欠けた17夜の赤い月が顔を出した。土星の輪や木星の衛星をプロミナ―でのぞいたり、たて笛を伴奏に歌を歌ったり、日頃とは趣を変えた宴会で、みな盛り上がったのなんの。時おり飛ぶゴイサギやカルガモは、下からサーチライトで照らされて、少々びっくりしたのではなかろうか。
23日木曜日。休日で原稿の締切もないし、ひさびさに終日保護区内の作業をやることにした。目標はみなと池棚田の地下茎始末。面積およそ1500平方メートル。生活排水を水源としているみなと池の水質悪化を防ぐため、10枚の浅い棚田を順番に通した上で池本体に水を入れるというものだが、1994年の揚水開始以来、毎年冬に干上げて耕している。最初の2年はスコップによる手作業のみで、実にしんどかった。昨年は初めて工事用の小さいユンボー(パワーショベル)を使うことができたので、十分の1ほどの時間、それも体力を要せずに作業が終わり、ほっとしたものだ。
今年は業者委託でユンボーによる天地返しは終わっているので、あとは楽なはずだが、思わぬ落とし穴があった。これまでは生えた草を全部刈って焼いた上で作業をしていたが、今回は重機で草をなぎ倒し、一部は押し出したものの、あとはそのままで天地返しが行なわれたので、大きなヒメガマの株などが、なかば泥に埋まったまま残っている。18日に少し集めて燃やしてみた。土はよくほぐされ、地下茎も切れているので、大根抜きの要領で株をひっこぬき、取り除くことはできる。しかし、もろに腰にくる作業で、初日の常としてネを上げた。20日の月曜から試しにトラクターをかけてもらった。これは正解で、地下茎と泥が分離し、レーキでかき集められるようになった。
ヒメガマの地下茎の多くて太くて燃えないことといったら。食用可能ならいいのに、と残念しごく。消防署には連絡済み。乾いた草をひとかかえ集め、次には地下茎を積み、さらに草を積んでから火をつける。燃えついたところで地下茎を足す。煙ばかり立ってなかなかうまく燃えないおかげで、広い空を見上げたり、ぽくぽくと土らしく育ってきた棚田にレーキをかけたり、鳥の声を聞いたりしながらというのどかな作業になった。
好きだな、と思う。きついな、とも思う。来年はどうしよう。どうなるだろう。不安をも含めて丸ごと呑み込むのが保護区管理の仕事なのかな。
きらいでないことだけは確かだ。




