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新浜だより 1992年~2000年  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
40/95

40 電線衝突

新浜しんはまだより

日本野鳥の会東京支部(現在は日本野鳥の会東京)支部報「ユリカモメ」 1996年1月号掲載


40 電線衝突


 ぽかぽかと暖かい晴天続きの11月。15日になって身のひきしまるようなこがらしがいきなり吹き荒れた時には、なんとなくほっとした。晩秋はこれでなくっちゃ。北風に落葉が舞い散るようでなくては、冬が近づいた実感はわかない。

 こがらしが吹いたとたんに電線衝突事故が次々に起きた。強い南風が吹いた翌日の12日にも、塩浜と千葉市の真砂から翼骨折のホシハジロが各1羽届いたが、15日には「とつぜん上から落ちてきたんです」というキンクロハジロが塩浜橋付近から連れてこられた。嘴上部から額にかけて裂傷を負っているほか、左目は失明し、左足もちゃんと使えなかった。額から顔にかけての傷は、翼骨折、両足骨折、胸部打撲や裂傷などと並ぶ典型的な電線事故の傷である。国府台からは翼骨折のユリカモメも届いた。

 17日には京葉線の塩浜駅付近からヒドリガモ1羽とスズガモの死体。京葉線の北側に隣接して設置された高圧線は、三番瀬の海と保護区の中間にあるため、鳥の衝突事故がたいへん多い。衝突防止の目印としてリングがとりつけられているが、残念なことにあまり目立たず、鉄塔と鉄塔の間で架線がいちばん低くなっているあたりで死体や負傷鳥がよく拾われる。塩浜駅も架線が低くなっている場所で、最も事故の多いポイントである。 

 塩浜駅のヒドリガモは翼が折れ、額に切り傷を負い、足が満足に使えなかった。保護された小林さんは、翌日もオカヨシガモとヒドリガモの死体を届けてくださったが、駅のまわりで目についただけでも、他にカワウを含め6,7羽の死体があったとのこと。どれも駅の南側に落ちていたそうで、北側、つまり保護区側から海に向かう時に衝突したものと思われた。

 横一線になった物体は、距離がつかみにくい。自動焦点のカメラがすぐに縦の線にピントを合わせたがるのも無理はない。衝突防止の目印として、新浜鴨場のすぐ前を通る高圧線には直径20㎝もある銀色のボールを40mごとにとりつけてある。観察舎の望遠鏡でみるとちょうどパチンコ玉のように見える。ここ数日来の塩浜駅付近での事故の多さに比べて、この時期にまだ1羽も衝突事故での持ち込みのないボールつきの高圧線は、それなりに効果を上げているのかもしれない。

 19日の午後、保護区の水面から飛び立って海に向かう20羽あまりのスズガモを見ていた。風に向かってまず北へぐんぐん高度を上げて、保護区の北東端あたりでUターンし、更に高度を上げて行く。保護区の南西端にかかる前に再びターン。湾岸道路に出たあたりでまたターン。このまま海へ出るかと思っていると、4回目の方向転換が見られ、湾岸道路に面したホテルのはるか上空で5回目のターンをしてからようやく海へと向かって行った。5回目の方向転換のころは、高圧鉄塔のほぼ3倍、200mあまりの高度をとって飛んでいた。

 高く飛べば電線衝突の危険はない。でも、わずか1~2キロしか離れていない餌場に出るために、5回ものターンをくりかえして高度をとるのは見るからにたいへんそうだった。冬の保護区からカモが消えるのは、こうしたことも影響しているのだろうか。交通事故、窓衝突、電線衝突、釣針事故……入院鳥のカルテを見ていると、過密都市周辺で暮らす鳥たちの苦労が身にしみてよくわかる。


 山桜の並木がきれいに色づいてきた。赤、黄、茶色、緑。山桜は花期や若葉の色、花の色が個性的なばかりでなく、紅葉の時期まで1本1本色が違う。鮮やかな黄色に変わったエノキの枝に大きなキカラスウリの実がぶら下がって人目をひき、草やぶからウグイスの笹鳴きが聞こえて、おだやかな晩秋の風情だ。

 さあ、みなと新池の棚田の干し上げ、ホテイアオイ引き、草刈り、草焼き、耕耘と秋から冬の作業が待っている。再整備事業をひかえ、保護区の中ですごす時間がふえるのがたまらなくうれしい。 


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