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新浜だより 1992年~2000年  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
34/95

34 卯の花が咲いて

新浜しんはまだより

日本野鳥の会東京支部(現在は日本野鳥の会東京)支部報「ユリカモメ」 1995年6月号掲載


34 卯の花が咲いて


 ウツギの花が咲いている。清楚な白い花には雨がよく似合う。駐車場から観察舎に向かう道のかたわらに何本か植えられたウツギ、そのすぐ先はニセアカシアの林になる。今年はニセアカシアの花が例年になくみごとだった。満開の桜に比べられるほど花つきがよくて、遠目にも白く見えるほどだったが、一週間もしないうちに散ってしまった。花つきがよかったのに花どきが短かったのは藤も同様だった。ノイバラの花期はもう少し長くて二週間程度。うれしいことに、私が大好きなスイカズラとトベラはまだきれいで、さわやかな強いかおりもじゅうぶん楽しめる。

 ニセアカシア林をぬけて芝生に出ると、薄紫のセンダンの花がちょうど五分咲きだ。観察舎から行徳高校に向かう途中では、トキワサンザシの木全体が花嫁衣裳のようにまっ白になっている。これだけ花がついたら、実つきもよいに違いない。トウネズミモチの花はこれからだ。

 わが家のまわりでも、初夏の白い花は数えればきりがない。いちばん見事な花どきは、どの種類もほんの2、3日。しっかりと目を開けていないと見逃してしまう。今年の花はほんとうにみごとで、殺伐とした世相もどこかに消えてしまうような気がする。ぜいたくな暮らしだな、と思う。

 さて、野鳥病院もいよいよ恐怖のラッシュ時期。ちゃんと飛べないヒナを見つけて途方にくれる方も少なからずおられることと思う。こうした時のいくつかのポイントを挙げておきたい。

 ヒナを見つけた時の鉄則は親にかえすこと。小鳥では卵からかえって巣立ちするまで2週間程度なので、巣立った日に飛び方があやしげでも、翌日か遅くも翌々日にはちゃんと飛べる場合が多い。よく拾われるスズメは、かごに入れてまわりから見えるところに出しておくと、だいたい30分以内に親がくる。お弁当がわりに餌を差し入れて、適当な時期にふたを開けてやれば、親について飛んでゆく。餌はすり餌+粟玉がよいが、食べさせにくいので、ドッグフード、パン、ミルワーム、果物といったものでも何とかなる。

 親にかえしやすいのはヒヨドリも同様。この種類はごく小さい時期(ふ化後11~12日目)に巣立つのと、街路樹など交通量の多いところに巣をつくるせいで、よく拾われる。困ったことに、鳥にくわしい人もムクドリのヒナとまちがえることがある。見分け方は簡単で、口の中が黄色~オレンジ、キャッキャとやかましいのがムクドリ、口の中がピンク赤、ピイピイと可憐な声で鳴き、頭の毛が薄いのがヒヨドリ。ムクドリはすり餌または九官鳥の餌が中心だが、ヒヨドリはトマトなどの果物を相当量やらないと栄養障害を起こして骨に異常をきたす。ヒヨドリのヒナを車道で拾ったら、ひと晩餌をやって早朝に同じ場所に行くと、半径50m以内で兄弟の声が聞こえることが多い。声がしたら、木の枝に放り上げてやればよい。小さいカワラヒワの子も同じ要領。

 うぶ毛のついたキジバトのヒナが地面にいたら、たいていはいちばん近い樹上に巣がある。木登りをするか、捕虫網にヒナを入れて上げてやることができれば最善。なお、ツバメの巣がこわれたら、粘土で修理するのがいちばん。

 1羽でうろうろしているカルガモのヒナは親に返せないことがある。ただし何羽かいるなら親もそばにいることが多いので、追いかけたりせず、そっと見守るのがよい。これは他の水鳥でも同様。

 海岸や河原で地面と同じ色のヒナがぴったり身を伏せていたら、絶対に手出しをしないこと。ごく時たまだが、じっと隠れているチドリ類やコアジサシ、ヒバリなどのヒナや卵の誘拐さわぎがあって、悲しい思いをすることがある。

 弱ったヒナは暖めて、少し元気が出たところで餌をやる。すり餌がよいが、一時の間に合わせにはキャットフードやドッグフードが使えるし、どうしようもない時にはパン(ジュースに浸す)でもよい。種類によって少しずつ餌が異なるので、種類の識別は大切だ。

 何はともあれ、お困りの時にはいつでもお電話ください。どうぞよろしく。



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