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新浜だより 1992年~2000年  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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32/95

32 丸浜川をよくするって?

新浜(しんはま)だより

日本野鳥の会東京支部(現在は日本野鳥の会東京)支部報「ユリカモメ」 1995年5月号掲載


32 丸浜川をよくするって?


「なに、あれ、どうなっちゃったの」

 このところ、塩浜橋の方から来られる方にたびたび言われる。「やぶがぜんぶなくなっちゃったじゃないの。なにができるのよ」

 返すことばもない。昨年末から「丸浜川の環境改善工事」が行なわれて、3月末に終了した。その結果がこれである。

 そもそもの始まりは、「民間団体が川の浄化にいっしょうけんめいになっているんだから、役所もなんとかせい」という議員さんの一言。「環境がよくなるように、水の浄化が進むように」するための工事ならありがたいものであるはずだ。しかし、「川の浄化」といえば、ふつうに行われるのは「ヘドロの浚渫工事」である。

 さあ、あわてたのは、9年にわたり3台の養魚用水車を動かして生活排水のどぶ川に酸素を吹き込み、電気代を負担し、泥や水を調べ、底生動物の復活を見守り、鳥や魚の増加を喜んできた「浄化を進めた民間団体」の私たち。ヘドロは生物、汚濁水域で水深を深くすることは、たとえ10㎝であろうとも、日光や酸素の到達を妨げて悪影響を生む、浚渫するなら浅くして、とデータに基づいてずっと主張してきたのに、単純に底泥を浚渫されたら、これまでの努力が水の泡である。

 担当の千葉県葛南土木事務所を必死にかきくどいて、ともかく底泥の浚渫はやめ、かわりに両岸をけずって河床を広げてもらうことにした。一部でもよいから手をつけずに藪を残して欲しい、藪地の環境は小鳥にとってとても大切で、千葉県の県鳥のホオジロや、市川市の鳥のウグイスを大事にするためと言えば、面目もたつではないか、とくりかえし訴え、また土止めのため斜面に芝を張るという計画は再考をお願いしたが、はかばかしくなかった。遊水池には水車を入れる、アシや石や木は残す、河岸を直線的にはしない、との話にとりあえず納得はしたのだが……

 さて、工事が始まった。工事の初めには私も立ち会い、残して欲しい木を指定した。中途では主人や東会長も出向いて、浅瀬を埋めたり突き出た部分をけずるのはやめてもらった。しかし、工事が終わった現状は、一見して直線化した河床、きっかり角度を切った斜面と張芝、大きいものだけ点々と残る樹木、裸の地面。意図された景色はオランダの運河のようなものらしい。ふーん。

 「放ったらかしの藪がきれいになりましたねえ」ふしぎなことに、少なくとも私はまだこのことばを聞いてはいない。今のこの景色はきれいではないものねえ。誰がみても。

 この「環境改善工事」はまだ全部が終わったわけではない。観察舎の前については、「近郊緑地特別保全地区の中ですから、コンサルタント会社に依頼して構想を作ることにしました。そのうちご相談にうかがうと思いますよ」 どこからも相談にこないのでどうなったかと思っていると「構想図ができているので見てください」

 「魚がすめるように、早瀬があって、淵があって……」コンサルタント会社の説明を聞いているうちに、だんだん頭に血が上ってきた。「あの、丸浜川の高低差はどのくらいあるのでしょうか」「落差はほとんどありません」「それで早瀬や淵ができますか」「いや、自然保護団体というのは、なんでも反対ばかりされますからね」

 びっくりした。久々に「なんでも反対の保護団体」という言葉を聞いたためでもあるが、出てきた構想には丸浜川そのものの個性が全く感じられず、川幅や水深といった基本すらとりこまれていない。

 表面を削られても藪の根は残る。芝生の一部はアシに置き換わるし、残りも放っておけば2、3年でこれまでと同じような丈の高い草原になる。いちばん水質が悪い遊水池の部分に水車も入ったから、それなりの効果はあるだろう。しかし、なんなの、これは、いったい。

 「環境改善」の名目の予算は何にも増して貴重だ。無駄なものにも、厄介ものにもしたくない!泳ぎ出したオタマジャクシや、岸辺に憩うコガモに申し開きができるように、何とかしなくっちゃ。





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