死にかけの身体、止むことのない闘志
ルーラ王国城壁外では民衆が騒いでいた。王国内から聴こえる叫び声と断末魔。そして矢や空を切る音や鉄と鉄がぶつかり合う音に気がついたからだ。
民衆はミサハ王国が攻めてきたと噂を広める者や王国の外に逃げ出す者もいた。
そんな民衆に紛れてケルスはルーラ王国から逃げようとしていた。
「付き合ってられないわよ。命を懸けてまで戦う理由なんてないわ」
ケルスが足を一歩踏み出そうとしたその時だった。
上から何が勢いよく落ちてきた。それは夜中だというのに暗闇に染まらないほど存在感を放っていた。
白い鱗に身を包み、竜の姿を無理矢理人型に押し込めたような見た目をしていた。背中にはちぎられたように斬られた翼の跡と、深々と斬られた跡があった。
ケルスは顔を見て、それが誰なのか理解した。
「ガロン!?」
名を呼ばれてガロンはケルスの存在に気がつきケルスの顔を見た。
「ケルスか・・・」
「どうしたの?満身創痍じゃない」
ガロンは地面に倒れ伏したまま起きようとしない。
恐らくそんな力も残っていないのだろう。
「ケルスお前は逃げるのか・・・」
「・・・えぇ。悪いけど私はこんなところで死にたくない」
ケルスは気まずそうに答えるとガロンは笑みを見せた。
「それもいいだろう・・・逃げるなら止める理由は俺にはない」
「なんでガロンはそんな姿になってまで戦うの?」
詮索するつもりではないのだろう、好奇心がケルスの言葉を作り出した。
「俺もそれがわからなかった・・・だけど今ならわかる」
ガロンは死にかけの身体で必死にケルスを見る。その目はこれから死んでいく人間の物に見えなかった。
ガロンの目の奥には確かに闘志と生命が宿っていた。
「友に生きてほしい・・・ただそれだけだったんだ。そのことにこんな姿になるまで気がつかないとは・・・愚かしいな」
ガロンの声は少しずつ小さくなり、目を静かに閉じた。
その後ガロンは目を開けることはなかった。
ケルスは静かにガロンの最後を見届けると、後ろにあるルーラ王国に目を向けた。
今も矢が切る音や鉄と鉄がぶつかり合う金属音が響いている。
そして助けを求める声や勇気を奮い立たせるように声を上げる者の声が離れていても聴こえてくる。
ケルスは来た道を戻り始めた。
戦友の想いに報いるために、再び戦場に立つ覚悟を胸にして、ルーラ王国の戦いへと参戦するのであった。




