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異世界流浪の料理人  作者: 開けドア
魔女の家でお勉強編
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お台所拝見 ~魔女の調理道具~


土間の中央にででんと鎮座する、ほぼ正方形状の作業台。

1辺が2メートルは優に超えるほど大きい。

その天板の上に、ズラリと並んだ調理道具と思しき品々。

数はそれほど多くなかった。

ただ1つ1つの道具が大きい。

広い作業台のスペースでも、窮屈に感じる。


男は査定をするかのように、それらを見渡した。

鋭いプロ目線。

うっとりと鍋をみつめていた、先ほどの妄想する料理バカ目線とは一線を画している。

キリッ。

今の顔なら、そんな表現も似合うだろう。



鍋はかなり大きいモノが3つもあった。

蓋もちゃんとついている。

手打ちの品なのか、形の統一がされていない。

だいたい同じ大きさの、少しいびつな寸胴鍋。

何でできているのか、使用金属はよくわからなかった。

鉄やステンレスではなく、特に油で手入れができている様子もないのに錆びてはいない。

色は銅鍋に近いが、これが銅なら一財産だ。

そしておそらく新品。

ホコリこそついているが、使われた形跡がないように思われた。


ただし、重い。

これを女性の細腕で使いこなすのは大変ではないだろうか。

スープを鍋いっぱいに作れば、男だって持ち上げるのは厳しいだろう。

魔女はかなりの力持ちのようだ。

洗うだけだって一苦労だ。

せっかくの「たらい&窓&水魔法」での洗い場システムでも、この鍋には使えない。

大きすぎる。

外に持っていって洗う方が楽だろう。


ご家庭で使うには違和感のある大きさ。

男は職場で慣れているからいいものの、使いやすい鍋とは言い難い。

2~3人家族で食べきれる量を考えると、絶対に大きすぎる。

直径20~30センチ程度の鍋のほうが使い勝手の良いと思うのだが、そういうのは1つもなかった。

ミルクパンのようなお手軽な小さい片手鍋もない。

鍋としては、どでかいのだけが3つだけ。

この鍋で魔女はどんな料理を作るつもりだったのだろうか。

でかい鍋を棒でかき回す三角帽子の怪力魔女。

勝手なイメージができあがってしまいそうだ。



男が特に目をつけたのは他にも2つ。



まずは、まな板に使えそうな、ちょっとぶあつい木の板が3枚。

これだってかなり大きい。

直径70~80センチ程はありそうな、輪切りの木の形を生かした、いびつな円形。

足をつければ立派なテーブルにもなるだろう。

パンやピザ、パスタの生地の仕込みはもちろん、手打ち蕎麦を伸ばして畳んで切るにも十分な大きさ。



まあ、蕎麦粉のあてはないけどな。



かなり使えそうだ。

家庭で使うには大きすぎるのではという、鍋と同じ疑問はあるものの、男には好印象だった。

ウサギを捌く際に感じた不便さがなくなるだけでもありがたい。

皮さえ剥いでおけば、この上で1匹捌くならば10分もかからない。

まな板は偉大だ。



もう一つは大きな鉄板。



便宜上、鉄板と心の中では呼びつつも、素材は鉄ではないだろうと思われた。

正しくはなんらかの金属板。

おそらく鍋と同じ金属を使っている。

これも3枚、角が丸くちゃんと処理された長方形。

そしてやはりでかい。

屋台で使うほどではないが、縦1メートル近く、横も60センチ以上あるのではなかろうか。

3枚ともだいたい同じ大きさだが、少しいびつな手作り感がある。

魔女は特注の道具が好きなのだろうか。

まっ平の板状ではなく、周りの端は2~3センチほどの土手を作ってある。

ホットプレートの鉄板のようだ。

なかなか気が利いている。


ちなみに普通のご家庭には高い確率でありそうなフライパンはなかった。

まあこの鉄板モドキがあれば、肉を焼くには困らないだろう。



それにしても。



「焼き網があればなー・・・・・」



ちょっとがっかり。

肉を焼くにも、余分な脂が落とせたほうがいい。

それに、あんなにデカい鍋が3つもあったのだ。

金網があれば、1つを燻製専用にも出来ただろう。

惜しい。

もう食べきってしまったが、あれだけ出汁の味がするウサギの白身肉、是非とも燻製で食べてみたい。

ハーブでクセをなんとかできたなら、赤身肉は相当旨くなるだろう。

食材は燻製できれば、だいたい旨い。

アウトドアの醍醐味。

諦めたくない。



「まあ、また何か考えるか・・・・」



とりあえずは合格としよう。

魔女に感謝。



男は上から目線で結論を出した。

もらっといて、何たる態度か。

ナニ様のつもりか。


こと料理の話となると、男は遠慮を知らなかった。

友達や親戚のおじさん的には大人気でも、彼氏や旦那としては敬遠される理由だ。

自覚しろ。

反省しろ。

手作り料理に、マジのダメだしするな。

空気読め。

日本では何度も怒ってもらったものだが、全く身についていなかった。

友人たちの有難い話は、なるほどと真剣に聞いても寝たら忘れる。

男はトリ頭だった。

こっちの話をあっちを向いたら忘れてしまう。

信号木のツッパリ兄弟達と気が合いそうだ。


しかし今や誰に怒られる事もない男は、我が道を突き進む。

上機嫌に呟いた。



「こりゃー、楽しみだな」



早く料理したい。



魔女こだわりであろう調理道具たち。

普通の主婦なら不合格となりそうな内容ではあったが、男はそこそこ満足したようだった。




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