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お薬いかがですか?  作者: ほる
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041. フレスカが仲間になりました


 薬を飴として売る算段は付いた。


 これでやっと頭を使うややこしい事から開放されると、マリールは、ほう、と息を吐き出した。


 残るは凍結の実験結果を待つ事と、今出来たばかりの青色の薬+プラスをフレスカに薬を飲んでもらう事だ。

 効能が増えてしまった失敗作が無害である事を確認する為に、マリールは自ら被検体となって、青色の薬+プラスを飲みこんだ。


 ――だが、特に変化は見られない。


 アエラウェは唇が触れそうなほどに顔を近付けて、マリールの肌を観察した。


「――マリーちゃんの肌って元々子供肌できれいだから、肌の若返り効果出ないんじゃないかしら……?」


 難しい顔をしながらマリールの頬をぷにぷにと突くアエラウェに耐えながら、マリールは首を傾げる。


「そうなんですかね……? あ、でも! 栄養ドリンク的に、ちょっと元気が出た気がします!」

「……元々活きがいいからねぇ、嬢ちゃんは」


 イマイチ判り易い効果は見られなかったが、副作用も無い。これならば安心してフレスカに飲んで貰えそうだ。

 マリールは出来たばかりの青い薬+プラスを一粒摘んで、座るフレスカに手渡した。それからアエラウェにコップに水を入れてもらうと、それもフレスカに渡す。


「そのままでも噛んでも大丈夫なんですけど、噛むと苦いと思うので。お水と一緒にどうぞ!」

「……ありがとう」


 フレスカは手の平に落とされた小さな薬をじっと見つめ、それから呷るように飲み込んだ。こくりと喉を通る音が、やけに大きく聞こえる。


 一同が様子を見守る中、フレスカがコキリ、と音を立てて首を回した。そして徐に立ち上ると、肩を回したり腰を捻ったりと身体の不具合を念入りに確かめて、それから何故か、そっと玉葱ヘアに手を入れた。


 フレスカの謎の行動にマリールが首を傾げると、同時に、スコココココン! と、背後から軽快な音が鳴り響く。


 マリール達がゆっくりと音の方へと振り向けば、マリール達の背後にある木には小さなナイフが五本、綺麗に縦一列に突き刺さっていた。フレスカは玉葱ヘアから手を抜いていない筈なのに、だ。


「……うん。うん! いいわ。すごくいいわ!」


 フレスカはうっとりと目を細め、突き刺さったナイフの一列を手でなぞりながら確認をした。

 まるで計器で計ったように寸分の違いなく、均等な間を空けて列を作るナイフは、フレスカの思うままに投げられた事を示していた。


「お肌! お肌はどうなの!?」

「見せてごらん、フレスカ! ……ああ、これは……」

「信じられない……!」


 ナイフ投げの出来栄えに興奮しているフレスカの頬を、アエラウェとエドナが遠慮なく撫で摩る。すると少しカサついて小さな薄いシミも散見していた頬が、水気たっぷりの弾力あるもち肌になり、シミひとつ無い美肌へと変貌を遂げていた。


「俺ぜんぜん違いがわかんない」

「「俺も」」

「俺もだ」


 女達にはハッキリと分かる違いでも、男達には僅か也とも気付けないらしい。

マリールが失敗して作ってしまった青い薬+プラスは、驚きの美肌効果を発揮してくれたようだ。


 フレスカはマリールの小さな手を両手で握ると、瞳をきらきらとさせながら礼を伝える。

 先程まで顔色が悪かったミステリアス美人が、健康的なミステリアス美人に変わっているのに気付いたマリールは、治って良かったと、心から嬉しそうに笑った。


 フレスカはマリールの笑顔を見るなり僅かに目を見開くと、すぐに慈しむ様に目を細めた。

 

「ありがとう、お嬢ちゃん。これでまた趣味の刺客が出来るわ」

「「「趣味って」」」

「だって。もう本業は魔導具士だもの」


 フレスカの言葉に、サルムが首を傾げる。


「魔導具士なのに何で態々頭に物入れてんの?」

「そうだよ。収納鞄作り放題じゃん」

「俺達にもお安く作ってください。お願いします!」

「探究心よ。魔導具士は探求心がないとイマジネーションが沸かないのよ。それと依頼は三年先まで埋まってるわ」

「「「え~……」」」


 納得のいかない回答にホビット達が胡乱な目をしていると、マリールが笑顔でフレスカを激励し始める。


「とにかく治って良かったです! これからは思う存分、資格取りまくってくださいね!」

「ええ、思う存分、刺客で(命を)取りまくるわ!」

「「「いやいやいや」」」


 刺客の意味が分かっていないのか、資格と間違えて暗殺業を応援してしまった無知なマリールに、フレスカはにっこりと微笑む。


「……お嬢ちゃんの事は、これから先ずっと標的にしないと誓うわ。それと薬の対価、何がいいか考えておいて。――誰か殺したい人がいれば言って頂戴ね。いくらでも暗殺(ころ)してあげるから」

「はい! コロ……んん?」

「 「「やっと気付いた……」」」

「マリーちゃん。この国の薬術士組合の奴等、全員殺ってもらったらどうかしら?」

「やめんか」


 物騒な事を言い出したアエラウェを、バルドが賺さず止めに入った。フレスカならば本当にやってしまいそうだ。


 こうしてマリールは、魔導具士で刺客が趣味のフレスカを仲間にする事に成功したのであった。



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