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香り



入学式、初めて教室へと続く廊下を歩いたあの日大勢の人の中でそれは気づくことのないような香り。

かすかに匂った、花の香り。甘くもキツくもない、無臭に近い。でもとても優しい匂い。


その匂いの正体がなんなのか、わからないけれど俺はこの匂いが好きだと確信をした。

だけどそれだけ。興味ももたなかった。普通だと思う。街中を歩いていたらいい匂いがした。そんな感覚に近いのだから。


俺が思い出せる入学式の記憶はこれだけだ。

夏休みが終わりやっとこの学校にも慣れて仲のいいやつもできてきたそんな10月。

なぜこんなことを思い浮かべているのかというと話しは五分前のこと。


高校に入ってからの親友、澤田俊が話し出したのがきっかけだった。



「なーなー、俺たちが仲良くなったきっかけってよ、サッカーが好きだったからだよな!」


「なんだよ…突然…。」


「いや、なんとなくさ、昨日なんでお前と仲良くなったのか気になって。んで思い出したんだよ!入学式の日にさ!お前がバックに着けてたあのサッカーボールのキーホルダーあったろ?あれがきっかけだったよなーってさ!」


サッカーボールのキーホルダー、それは周りが布地で中に綿が詰まってる簡単なモノだ。母さんが作ってくれて俺にくれたのだ。すごく嬉しくて大事に大事にしていたのだが、最近失くしてしまったモノだった。


「あ、あぁ…そうだっけ?あんまり覚えてねーなー。入学式の日ガチガチに緊張してたし俺。」


「なんだよー薄情なやつー」そう言った後俊は他クラスのやつに呼ばれて廊下へと走って行った。


そして俺は一人になってふと思い出しのだあの匂いのことを。あの時は興味がなかったが今になって気になってきた。あのふしぎな香りをまたもう一度嗅ぎたい、そんな気持ちがだんだんと強くなる。あの時あの匂いの犯人を見つけておけばよかったと少し後悔をしてみるが、今となってはどうしようもない。


「似た香りの香水、探してみるか…」窓の外で揺れる紅葉を眺めながらそうポツリと呟いた。




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