# 第五話 ## 「また婚活会場で会った」
# 第五話
## 「また婚活会場で会った」
金曜日。
夜七時。
ホテル二階。
見慣れた婚活会場。
雨宮悠人は受付で参加費を払いながら思った。
「俺、なんで来てるんだ……?」
白石雫と連絡取ってる。
ご飯も行った。
電話もする。
なのに婚活来てる。
意味が分からない。
でも。
“まだ付き合ってない”。
その曖昧さが、
悠人を不安にさせていた。
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受付のお姉さんが言う。
「雨宮さん、最近ちょっと表情明るいですね〜」
「そうですか?」
「彼女できました?」
「ち、違います」
「婚活常連卒業かと思ったのに」
「その言い方やめてもらっていいですか」
完全に顔覚えられてる。
終わってる。
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会場へ入る。
そして三秒後。
「あ」
「あ……」
いた。
白石雫。
お互い固まる。
数秒沈黙。
それから白石が小さく笑う。
「……また会いましたね、雨宮さん」
悠人も笑う。
「もはや待ち合わせみたいですね」
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二人は近くの席へ座る。
白石が小声で聞く。
「なんで来たんですか?」
「それ白石さんにも返します」
「……なんとなくです」
「俺もです」
絶対お互い、
相手のこと気にして来てる。
でも言えない。
この距離感が、
妙にもどかしい。
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パーティー開始。
男性移動。
女性と会話。
いつもの流れ。
でも今日は変だった。
全然集中できない。
次の女性が言う。
「休日は何されてるんですか?」
悠人、
反射で答える。
「白石さんと……あっ」
終わった。
女性、
首を傾げる。
「白石さん?」
「いや違います!!
なんでもないです!!」
めちゃくちゃ怪しい。
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一方その頃。
白石も別の男性と話していた。
スーツ姿の爽やかイケメン。
年収も高い。
会話も上手い。
婚活強者。
悠人、
遠くから見て落ち込む。
「うわぁ……
ああいう人のほうが絶対いいよな……」
すると隣の男性が言う。
「白石さん人気ありますよね」
「……ですね」
「狙ってるんですか?」
「えっ」
「顔見れば分かりますよ」
そんな分かりやすい?
悠人、
死にたくなる。
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休憩時間。
ドリンクコーナー。
悠人がコーヒーを取ろうとした時、
白石が来た。
二人同時に言う。
「さっきの人——」
止まる。
気まずい。
白石が先に言う。
「なんですか?」
悠人、
思わず聞いてしまう。
「さっきの男の人、
いい感じでした?」
うわ終わった。
重い。
キモい。
でも白石は少し驚いたあと、
急に笑い始めた。
「ふふっ……」
「な、なんですか」
「いや、
雨宮さんでもそういう顔するんだなって」
「どういう顔です?」
「分かりやすく嫉妬してる顔」
悠人、
固まる。
「え」
白石、
ちょっと楽しそう。
「してません?」
「……ちょっとしました」
白石は少しだけ目を丸くして、
それから優しく笑った。
「安心してください」
「え?」
「私、
会話の途中で雨宮さんのこと考えてました」
悠人、
心停止。
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その時。
婚活スタッフが近づいてきた。
「お二人って、
付き合ってないんですか?」
二人同時。
「「違います!!」」
声が揃った。
周囲が見る。
地獄。
スタッフが苦笑する。
「すみません、
空気が完全にカップルだったので」
白石、
真っ赤。
悠人も死にそう。
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パーティー終了後。
二人は会場の外へ出る。
夜風。
少し静かな空気。
悠人が言う。
「なんか今日、
婚活って感じしなかったですね」
「ですね」
「というか、
白石さんいると他の人見れないです」
言った瞬間、
悠人は固まった。
またやった。
勢いで言った。
人生終了。
でも白石は、
少しだけ俯いてから言った。
「……私もです」
その一言で、
世界の音が少し消えた気がした。




