# 第二話 ## 「年収四百万円の敗北」
# 第二話
## 「年収四百万円の敗北」
「本日はありがとうございましたー!」
婚活パーティー終了。
スタッフの明るい声が、
やけに遠く聞こえた。
悠人は出口へ向かいながら、
深いため息をつく。
今日の結果。
マッチング、一件。
しかも相手は——
白石雫。
「いや……嬉しいけど……」
婚活として、
これでいいのか分からない。
“恋愛”というより、
戦友が増えた感じだった。
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外は少し寒かった。
駅前のネオン。
スーツ姿の人たち。
笑いながら歩くカップル。
悠人はコンビニへ入った。
婚活帰りのルーティン。
半額弁当チェック。
「お、唐揚げ弁当残ってる」
小さくテンションが上がる。
すると後ろから声。
「また会いましたね、雨宮さん」
悠人、
思わず吹き出した。
振り返る。
白石雫。
コンビニのカゴを持って立っていた。
「いや遭遇率高すぎません?」
「それ私も思いました」
「もしかして家この辺です?」
「徒歩十五分くらいです」
「近っ」
なんかもう、
婚活より普通に会ってる。
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白石のカゴを見る。
ヨーグルト。
サラダ。
お茶。
健康的。
悠人のカゴを見る。
唐揚げ弁当。
ポテチ。
エナジードリンク。
終わってる。
白石がじっと見る。
「身体に悪そうですね」
「婚活で削られたHP回復してるんです」
「回復アイテムのクセ強いですね」
笑われた。
でも嫌じゃない。
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レジを終え、
二人で店を出る。
なんとなく同じ方向へ歩く。
少し沈黙。
でも不思議と苦じゃない。
悠人が先に口を開いた。
「白石さんって、
なんで婚活してるんです?」
「直球ですね」
「すみません」
「いえ……」
白石は少し考えたあと言った。
「なんとなく、
このままだと一人になる気がして」
その言い方が、
妙にリアルだった。
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「雨宮さんは?」
悠人は苦笑した。
「人生逆転したくて」
「逆転?」
「結婚したら、
全部うまくいく気がしてたんですよね」
白石は静かに聞いている。
悠人は続ける。
「仕事もしんどいし、
毎日同じだし、
帰っても一人だし」
「……」
「だから、
結婚したら変われるかなって」
少し恥ずかしくなった。
何言ってんだ俺。
でも白石は笑わなかった。
その代わり、
小さく言った。
「分かる気がします」
その一言が、
妙に胸に残った。
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駅前の信号で止まる。
赤信号。
向かい側には、
さっき婚活にいた男女が歩いていた。
高身長イケメン男と、
笑顔の女性。
楽しそうだった。
悠人は思わず呟く。
「やっぱ年収高い人とか、
コミュ力ある人強いですよね」
「まぁ……そうですね」
「俺なんか工事現場ですし」
「その仕事、
私はすごいと思いますけど」
悠人は驚いた。
「え?」
「ちゃんと働いてるじゃないですか」
白石は当たり前みたいに言った。
悠人は言葉が出なかった。
婚活で初めてだった。
職業を、
見下されなかったの。
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青信号になる。
歩き出す。
すると白石が、
少し笑いながら言った。
「でも雨宮さん、
婚活向いてないですよね」
「えっ」
「すぐ顔に出るし」
「うっ……」
「あと無理に盛り上げようとして、
失敗してる感じあります」
「やめてくださいダメージ受けます」
白石が珍しく声を出して笑った。
「ふふっ……」
その笑顔を見て、
悠人は少し思った。
婚活で初めて、
また会いたいと思った相手かもしれない。
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別れ道。
白石が止まる。
「じゃあ、
また」
悠人が聞く。
「次の婚活ですか?」
白石は少し考えてから言った。
「……それでもいいですけど」
そして。
「普通にご飯とかでも」
悠人の脳が止まった。
「えっ」
白石、
ちょっと恥ずかしそうに言う。
「嫌ならいいです」
「嫌じゃないです!!」
声が大きすぎた。
通行人が見る。
白石が吹き出す。
悠人、
死ぬほど恥ずかしい。
でも。
白石は笑いながら言った。
「じゃあ今度、
また会いましょう、雨宮さん」
その言葉が、
婚活会場で聞いた時より、
ずっと嬉しかった。




