おまじない
スピリチュアル好きな友人がいる。
彼女の雰囲気は、柔らかくて人当たりがいい。人に丁寧に返す。私が出来事を話すと、静かに聞いてくれる。
まるで会員制の美容院の店員のような対応をしてくれる。
こちらとしては、それが気持ちよくてつい喋りすぎてしまう。
しかし……。
ひとたび彼女が喋り始めるとその場の空気が変わる。なぜなら、いつも《心霊話》を口にするから。
心霊話と言っても、あの踏切で幽霊を見た、とかいうものではない、スピリチュアル。
オーラがどーの、守護霊がどーの、というそっち系だ。
喫茶店とかでも、彼女は堂々とこう言っている。
「あの人のオーラは、金色や紫が混じってる。精神性が高い人ね。カリスマ性あるよ」
「へえ……」
彼女には悪いが、心霊やらオーラやらは全く信じてない。私はそういう場になると『聞き専』になる。
「この前、守護霊見てもらえる占い師のところに行ったのね。そしたらね、あなたの前世はフランスの王宮の姫でしたね。って言うのよ!」
「それ本当なら、すごいねー」
私は棒読みの返事しか返さなかったが、彼女は満足していた。
……などと思い出しながら運転していると、前が渋滞しているのに踏切に入ってしまった。
……やばい。やばいやば……。
今電車が来たら――死ぬ。
早く信号変わって――!!
「守護霊様! 助けてーー!」
とその時、踏切の前の信号が青に変わる。
はよ前の車、行って――!
ようやく、車が踏切を渡った瞬間、踏切の遮断機のカンカンカンと音が鳴った。間一髪だった。




