第11話 ビッグ・サイ
本日は3話投稿します。16時15分と18時15分と21時15分です。
これは1話目です。ご注意ください。
4日目の昼、ついにビッグサイを発見しました。
暴れたり怒ったりはしていないのですがどこか落ちつかない様子。はじめての環境に戸惑っているのでしょうか?予想通りの早足。キックバックを避けるため斜め後ろから尾行します。
「ちょっとだけ怒ってる感じですね」
「私もそう思う。不穏だね」
「できるだけ距離をとって追いましょう」
ルトラさんも同様の意見。充分な距離をとってこそこそ追跡することになりました。幸いというべきか、ビッグサイはゆっくりと移動しているのでこそこそ隠れながらでも追いかけられそうです。
一応、これまでの調査結果をまとめてギルド本部に送っておきます。念のためギルド支給のアイテムボックスにツタエドリを入れておいて良かったです。生き物は小型を1匹だけだったので随分悩みましたが、生体を入れられるのはかなりすごいです。高性能なギルド特製品に感謝しましょう。
道中、ダンディライオンの群れとサンウルフの群れが威嚇し合っていました。本来、この2者はお互いの縄張りを遵守するので争うことは珍しく、異様な光景でふ。ピリピリと張り詰めた空気がこちらにまで伝わってきます。
サンウルフは大変鼻が効くモンスターです。穏やかな気性で光合成を行う為、スライム以外捕食しないのですが万が一もあります。念のため走ってこの場から立ち去ります。2人とも足が速いのであっという間に離脱できました。
「めちゃくちゃ気が立っていたね。ビッグサイの行動が原因かな?」
「いや、それだけじゃないみたいです。見てください。あそこに人の痕跡があります」
「あれは……冒険者や探索者のものではないね。片付けが雑だ」
「そうなると……もしかしたら密猟者かも知れません……」
そこにはモンスター捕獲用の網の一部が残されていました。大きな檻が置いてあった跡もあります。明らかな悪意を持った人間の存在を感じ、思わず震えてしまいました。トラウマが刺激されてしまったようです。
「はぁっはぁっ……うっ……く……」
そうしてはあはあ苦しんでいると、背中にむにゅんと柔らかいものが当たり、ぎゅっと抱きしめられました。
「アジサイ、今は私がそばにいるよ。卑劣な奴らにあなたを傷つけさせたりしない」
「ルトラ……ありがとうございます」
ルトラの抱擁を受け頭を撫でられているとだんだん心が落ち着いてきました。その間ルトラは一言も喋らず、ただじっと私を温めていてくれました。
「もう大丈夫です。ありがとうございました」
「んっ、どう致しまして」
ルトラはそういうとツタエドリをギルド本部に送りました。冒険者の応援を要請するのでしょう。もはやこの件は我々の手には余ります。撤退も視野に入れるべきかも知れません。
「どうしましょうか?私は追跡を続けて応援が来るまで監視したいです」
「私も同意見。これは見過ごせないよ。あそこの林に隠れながら追いかけよう」
幸い、近くに林がありました。ビッグサイの足跡は魔法を使えば、そこからでも容易に視認できます。慎重に、でも素早く追わなければいけません。
難しいミッションになりますが、ルトラといっしょならきっと大丈夫。まだ知り合って数日なのに、不思議とそういう気持ちが湧いてきます。今まで私を虐げてきた人たちとは違って、ルトラには優しさと思いやりがあるからでしょう。そして、私にそれを向けてくれます。
今はまだ何も返せない私です。だけど、いつか必ず彼女の助けになりたいと強く思いました。それは、いたって普通のことなのかも知れません。でも、私にとってははじめてのことなのです。木から木へと飛び移りながらそんなことを考えていると、ルトラがそっと声を上げました。
「見つけた」
彼女が指差す先には密猟者と思わしき男たちと、ミニサイの群れがいました。ミニサイの内、一頭は頭から血を流しています。
「あの男の持っている剣、血がついています」
「さっき見つけた網を持っている奴と檻もあるから、密猟者で間違いないね」
ワイカト草原はギルドの許可なく立ち入ることができないので、いた時点で犯罪者ではあるのですが。まあ、ちょっと入るくらいは見逃されます。しかし、これは許されません。ミニサイを傷つけたのもこの密猟者たちでしょう。
「ビッグサイは裁きの獣で、ミニサイを助けに来てたんですね。その割には途中までのんびりしていましたが」
「ミニサイの流してる血はまだ新しい。密猟者たちが凶行に及ぶまでは急ぐ必要がないと思ってたんじゃないかな。ミニサイも意外と強いし」
「そう考えると色々と説明がつきますね」
私たちはビッグサイがワイカト草原に現れた理由を知ることになりました。また、私たちの最初のクエストが無事には終わらないことも悟りました。
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アジサイのレポート
【ミニサイ】
分類:サイ系
体長:60cm前後
体高:40〜55cmほど
ランク:E
一般的な種類のサイ系モンスターよりもかなり小柄である。肌の色も灰色だけでなく、赤、青、黄、緑などバリエーションに富んでいる。
戦闘力だけで考えれば実はDランク相当の脳裏がある。小型とはいえサイなのでスピードとパワーはそれなりのもの。しかし、温厚で戦いを好まず逃走を選ぶ性質からEランクに認定されている。
悪意を持って彼らを傷つけるとビッグサイが現れる可能性が高い。
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