1.
新連載始めました。またもやイヤな女の話です。
一応最後まで出来上がっていてます!
見直しかけながら3日ほどで完結する予定。
わたしは美しい
わたしは人を虜にする
わたしの言葉は人を動かす
わたしは
わたしは
ーーわたしはみんなの真ん中にいるべき人間なのーー
自己評価が高すぎる?思い上がりも甚だしい?だったら何なの?だってわたしは努力したもの。
より美しくなれるよう手入れを怠らず、印象を良くする表情を学び、手を差し出したくなるよう言葉を選ぶ。腹の中では何を考えてたっていいの。相手を下に見ようが、バカにしようが。それが表に出なければ良いの。
善人になるべき?それがなんの役に立つの?バカバカしい。そんなの所詮端っこにいるしか能のない奴の言い訳よ。わたしは、わたしが真ん中に立てる場所を見つける努力をしているだけよ。
そのために人を蹴落としていいのかですって?それは蹴落とされた人が悪いんじゃないかしら。
そもそもわたしが蹴落としたわけじゃないのよ?気がつけば周りが勝手にやってくれていたの。わたしは少し困った顔をして指し示しただけ。
それに…わたしにとって邪魔だったとしてよ?私は少し困った顔をしたくらい。それなのに周りは皆わたしを取ったの。それって選ばれなかった方に問題があるんじゃないかしら。信用を得たわたしの勝ちってだけ。ほら、やっぱりわたしの努力の賜物よ。
今までそうやって生きてきたし、これからもこうやって成り上がっていくの。
※※※※※※
「おかあさま!明日は学園で発表会があるのです!」
「まあ、ロージンそうなの。…でも明日はお母様、忙しいのよ。」
「でも、少しくらい…」
「ダメよ、明日はアンジランのお友達と一緒に習い事の見学に行くのよ。」
見学なんて先延ばしにしても問題ない予定だ。そもそも一緒に行くと言っているのはわたしの取り巻きたちなのだから、予定変更を断られることなんて万にひとつも、ない。
でも、あの子の学年の保護者たちと交流する気はない。だって意地悪な人ばかりで言うことを聞いてくれないし、居心地が悪いんだもの。
わたしはわたしの努力で見つけた居心地の良い場所で優雅に生きるのだ。
※※※※※※
わたしは子爵夫人だ。元々は平民だったけど、夫に見初められて晴れて貴族の仲間入りをした。
もともと平民とは言え、両親は手広く商いを行なっていた。だからそれなりに裕福な環境で育ってきた。両親からは
「お前には一生苦労しない人生を送ってほしい」
と言われていて、良いご縁を得るために伝手を使っては夜会のような華やかな場所に連れ出してくれた。
今思えば、平民が主体のしょぼいものだったけれど。
そこで知り合ったのが夫だった。今ならわかる。子爵子息程度が主賓格として持て囃されているなんて、貴族には何の価値もないような集まりだったんだろう。
だが夫は平民だらけの場所にいれば、たちまちヒエラルキーの頂点に立てる事に味をしめたのか、頻繁に参加していたようだった。
そんな夜会の一つでわたしたちは出会った。
自分で言うのもなんだがわたしは美しい。華奢な体つきに鈴を転がすような声。パーツ自体は飛び抜けてはいないが配置が絶妙、長い睫毛で伏目がちにしていれば老若男女驚くほど簡単にわたしに惹きつけられた。まあ若い女には歓迎されなかったけど、それは仕方ないことよね。
その中でもとびきり身分が高かったのが夫である。
まだ子息とはいえ、ゆくゆくは子爵位を継ぐ人。そして、平民でも妻の座を狙えると思わせる"脇の甘さ"があった。
そんな人だから他にも夫人の座を狙って沢山の女が近づいていたわ。だからわたしはあえて控えめにしていた。
ああいうチヤホヤされる事に価値を見出す人間は、自分に阿らない女にムキになるって分かってたから。
「どうしたんだい?元気がないようだね。」
「いいえ、そんなことは!声をかけて頂いて嬉しいです…。でも…」
伏目がちに続きを濁す。
「でも?」
「いえっ!お気になさらないでください。ほら、皆様ミニーモ様を待っていらっしゃいますわ!なんと言ってもミニーモ様はみんなの憧れの的ですから。…わたしが独り占めしたらまた怒られちゃいます。」
ね?わたしは誰の悪口も言ってない。けど、女の醜い嫉妬に悩んでるって思いこんでくれたわ。後は身を引いた途端他の男に囲まれる所を見せつければ。
「ミニーモ様とお話していたから女性陣から怒られちゃったの。話しかけられたから答えただけで、そんなつもりじゃなかったのにな。」
ってぼやいてみれば男どもはみんな同情してくれる。そしてそんな意地悪な奴から守ってやる!とばかりに庇ってくれるの。
ふふ、覚えておくといいわよ。男に取り囲まれている女というのは1割、ううん2割3割増しで魅力的に映るのよ。
後は簡単だったわ。
彼は自分に侍る女達に冷たい視線を向けるようになった。少しずつ植え付けていったわたしへの嫌がらせ疑惑。その疑惑が溢れそうになった時彼は動いた。
「君たちは媚を売る事しか出来ないのか?ああ、嫌がらせは人並み以上に上手いみたいだけどな。」
と言ったのよ。わたしが蹴散らしたわけじゃないのよ?彼が自分で選び取った、そう思える事が大事だもの。そのセリフを聞きこちらをチラッと見た後、負け犬達は散り散りになったわ。あれは傑作だったわね。ふふふ。
その後も近寄ってくる女はいたけど彼は常にわたしのそばにいたわ。そしてとうとう婚約を申し込んできたの。




