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海底都市〜深海のアーメイド〜  作者: 紗希
不思議な導き
3/30

2.海底都市


それから少しして、ようやく“到達点”が見えてくる。辺りは真っ暗なのになぜかそこは昼のように明るく、そして一つの街のような景色が見えた。


こんな海の底に、街?


ゆっくり降り立った場所は遺跡のような外観で、大きな岩が数個と祠のようなもの、廃れた建築物。歴史書やニュースで見るような大昔の古代遺跡を連想されるものだ。


キョロキョロと見回すが、他に人の気配もない。果たして“人”がいるのかも怪しい。

もし明らかな異形の化け物がいたらどうしよう。と少女は初めて怖気付いた。


その時、突如として背後から腕を掴まれる。


「ッ!!?」


驚いて振り返ると、向こうも驚愕の表情を浮かべていた。


「…お前…?」

「……」


深い蒼髪の青年だ。歳は少女と同じか少し上くらい。背丈も少女が見上げるくらいにはあり、どこかの民族のような和装であった。


あんまり驚いて、少女は青年を見つめたまま固まってしまった。


「何者だ。なぜ、ここにいる」

「……っ」


おおよそ数時間振りの会話。それも聞き取れる言語での。

なぜ“そう”思ったかは少女自身分からないが、彼女は確かに自覚した。“ああ、逢えた”と。

それは安心感からかもしれない。


思った瞬間、少女はポロポロと涙を流していた。完全なる無意識である。


「…ッ!?ちょ!?」


ギク、と効果音でも聞こえるような分かりやすい動揺を見せた青年。涙が止まらない少女は嗚咽し始めた。


「っ、ひっく、」


よくよく考えてみれば、少女は“天涯孤独”となったのだ。世界でひとりぼっちになってしまったのだ。

そう理解した途端、猛烈な孤独感に苛まれた。


「…ついて来い」


ぶっきらぼうに聞こえるが、声は非常に柔らかい。青年の誘導に、少女は大人しく従った。「会ってほしい人がいる」ということだった。


青年が向かった先は遺跡から離れた場所にある神殿で、そこに待ち人がいるらしかった。


「ヒエン。連れてきた」


中に入り青年がそう声をかけると、奥から一人神主装束の青年が現れて。


「ああ、セイラン。彼女ですね」


優しそうな顔立ちの青年だ。こちらも少女と同じか少し上くらい。

互いに“ヒエン”“セイラン”と声をかけたのを見ると、どうやらそれは彼らの名前らしい。


少女が蒼い髪の青年を「セイラン…?」と確認すると、ヒエンと呼ばれた青年が嗜める。


「セイラン。もしかして彼女に名前を教えていないのですか?」

「今会ったばかりだ。それに、自己紹介よりお前に会わせるのが先決だと判断した」


どういう事だろうと、少女はオロオロする。


「すみません、僕は澄乃江スミノエ 陽苑ヒエン。陽苑とお呼びください。ここで神主をしています。で、彼が宇津木ウツギ 聖藍セイラン。僕が貴女をここへお連れするようにお願いしていました」

「…陽苑……聖藍…」

「はい。差し支えなければ、貴女のお名前をお伺いしても?」


不思議と、悪い人ではないと思えた。


「…朧月、神流…」



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