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転生した賢者、実家を出る

 俺の魔法適正は、最悪の第四適性。


 この結果に、父の態度が豹変した。


「ふざけるなよゼロ……。いままでおまえを育ててきたのは、なんのためだと思っておる!」


「でも父上、水晶がなんか変で……」


「黙れ! 貴様は権威ある鑑定士をも陥れる気か! どれほど腐っておるのだ!」


「い、いえ、そういうわけでは……」


 駄目だ。

 なにを言っても聞き入れてもらえない。


《第四適性》となった以上、おそらく転生魔法は失敗したんだろう。


 転生自体は成功したものの、魔法に関する諸々を引き継げなかった。


 けれど……だからどうしたっていうんだ。


 魔法なんて、きっと努力次第で上達できるはず。なのに……!


「父上、俺も頑張りますから! だから……!」


「やかましい! 黙れ、黙れぇぇぇぇぇぇええ!」


「かはっ……!」


 ズシン、と。

 急に身体が重くなり、俺はその場に這いつくばった。


 これは闇属性魔法……グラビティか。


 狙った対象者のみ動きを封じることのできる魔法だ。


「ぐううう……‼」


 なんとか起き上がろうとするも、それ以上の力でもって押し付けられ、微塵も動くことができない。


 ――駄目だ。


 俺が前世から引き継いだのは、魔法に関する知識と技術。

 魔力に乏しいこの身体では、父の魔法に対抗することができない……!


「やめて……ください、父上っ……」


「やかましいわ! 魔法適正のないおまえがすべて悪いんだろう‼」


「うぅぅうう……!」


 ひどい。


 たしかに俺は父から過剰なほどに期待されていたが――

 だからといって、こんな仕打ちがありうるのか……?

 これでも俺、実の息子なんだぞ……?


 おかしい。なにかがおかしい。


 記憶を取り戻す前は、魔法適正のことを当たり前のように受け入れていたけれど。


 でも改めて考えると、どう見てもおかしいのだ。


 一説には、《第四適性》と出た者を奴隷として売りさばいている親がいるとも聞いたことがある。


 どうして。

 いつからこの国は、こんなことになってしまったんだ……⁉


 老齢の鑑定士も、実の息子が痛めつけられているというのになにも言ってこない。


 たぶん、見慣れているんだろうな。魔法適正のなかった子どもが、このようにして虐げられてきたのを。


「鑑定士よ。このことは誰にも広めるな。わかっておるな!」


「……ええ。心得ております。世間にはどう公表するおつもりで?」


「ゼロは《第三適正》で、自分から家を出ていった――こんなところだ」


「承知しました。私からは口外いたしません」


 そうお辞儀をすると、極めて静かに部屋を退室していった。


 最後の最後まで、俺たちの事情には興味のなさそうな様子だった。


「さてゼロよ。いまの話を聞いてわかったな」

 俺の動きを封じつつ、父バウロはこつこつとこちらに歩み寄ってきた。

「本当は殺してやりたいところだが……さすがに世間体があるからな。寛容な私に感謝してほしいものだ」


 コトン、と。

 俺の眼前に、一枚の金貨が落とされた。


「それだけあれば生きていくことはできるだろう。荷物をまとめて、とっとと出ていくがいい」


「ち、父上……」


「……っ! その呼び方はやめろ! 貴様はもう私の子ではない!」


「ごああっ!」


 父バウロに腹部を蹴り上げられ、俺は大きな悲鳴をあげた。


「貴様は我が息子ではない! わかったか!」


「は……はい……」


「ふん! とっとと失せろ、このゴミクズが!」


     ★


「ふん、ようやく出ていくのか弟よ」


 数分後。

 荷造りを終え、屋敷を出ようとした俺を、聞き覚えのある声が呼び止めた。


 振り返るまでもない。


 声の主は、クリス・レイドリアス。


 今生の兄にして、第二適正として選ばれた男だ。


 俺の才能が《第四適性》だったことは、まだ広められていないはずだが――

 クリスにだけは、いち早く情報が届いたのかもな。


「兄さん……」


「はぁ? 兄さん?」

 途端、クリスが心底嫌そうに顔を歪めた。

「おいおい勘弁してくれよ、《第四適性》の兄なんて、俺の名が汚れるじゃんか」


「…………」


 ――勘弁してほしいのはこちらのほうだ。


 なぜ、いまのヴァレスタイン王国は《判定なし》というだけでここまで虐げられるのだ。これでも血縁者なのに……それほど魔法適正が重要なのか?


「はっ、せいせいするよなぁゼロよ。俺だって魔法の才能があるのに、おまえは生まれたときから父上たちに愛されていた。大賢者ゼロ様に顔が似てて、物覚えが異様によくて――けっ、いま思い出すだけで吐き気がする」


 クリスはペッと唾を吐き捨てる仕草をすると、さも嬉しそうにニヤニヤ笑いだした。


「でも、そんなゼロは魔法適正なしだった。くっくっく、すげー愉快だよなぁ。おまえもそう思わないか?」


「ええ……そうかもしれませんね」


「へっへっへ、あー楽しい楽しい。今日はきっと飯がうめえや」


 クリスはそう言うと、なにを思ったか右腕を突き出してきた。


「魔法を使えないおまえに教えてやろう。魔法ってのはな、こうやって使うんだよ……!」


「な……!」


 咄嗟に逃げ出そうとしたが、間に合わなかった。


 クリスの右手から放たれた水流が、勢いよく俺に激突する。


「ががががががが……」


 自分でも情けないと思うほどの声を発しながら、俺は壁面に激突した。


 痛い。

 痛い……!


「ひゃひゃひゃひゃ! いまのはほんの挨拶代わりだったんだけどなぁ? だけど適正なしのおまえには大ダメージだったみたいだね? あはははははは!」


「うぅぅぅぅうう……!」


「あっはっはっは! わかったらとっとと失せな! おまえなんか、このレイドリアス家にはいらない存在なんだよっ‼」


 ……ああ、言われなくても出ていくさ。

 こんなところ……もう二度と戻りたくない。


 クリスの笑い声を受けながら、俺はひとり、そう決意を固めるのだった。





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