書き捕り虫
今までとは違ったアプローチでしか書くことが出来ない今の私は、今初めて、書くということを学ぼうとし始めているのです。……しかし、それは、虫捕りのようなものに思えて仕方がないものですから……、困惑してしまい、どうも仕様がない状態に追い込まれているのでございます。何を言っているのかと目の前のあなたは思われているのでしょうか……。それも、仕方のないことで御座います。現に、わたくし自身ですら、目の前の出来事が信用できない、と、言いますか、信じられない、と言いますか、わたくしの目そのものが信用できなくなっている、と、言いますか……。なんなので御座いましょう。……この、これ、は。
今、わたくしは、椅子に身体をめり込ませて……、ええ、ええ。わたくしは、とてもちいさいものですから、いつも椅子にのめり込むようにしか座れないので御座います。それは仕様のないこと、いつものことで御座いますから……それ、ではなくて、問題は、書き捕り虫、のことで御座います。
……書き捕り虫は、わたくしが名付けたので御座います。……わたくし、なんともお恥ずかしい話、何も、何も、書きだせなくなってしまったので御座います。……それと言いますのも……、
書き捕り虫を上手く捕まえられないから、で御座います。
……何やらぼうっとして参りましたが……、書き捕り虫というものは、大きな芋虫のような形をしておりまして、わたくしは、今までとは違ったアプローチで、この書き捕り虫を生み出さなければならなくなったので御座いますが、なんともおかしなお話で……わたくし、今までどのように書いていたのかを、忘れて、!ええ、忘れて(絶叫)してしまったので御座います!(悲鳴)
どうしましょう!どうしたらよいので御座いましょう!(おお、おお、お前、慰めてくれるのかい、優しいこと)
わたくし、知りませんでしたのです。書き捕り虫は、優しいので御座います。芋虫のような身体が出来るだけわたくしから遠ざかるような位置におりながら、わたくしを慰めようといたしますの。
わたくしは、何とか書かなければなりませんから、この書き捕り虫を、どうにかして、どうするのだったかしら。わたくし、解りませんわ。
困ってしまいましたの。こまってしまいましたわ。椅子にめり込んで、その内、書き捕り虫がこの机にめり込んでしまいますの。わたくし、どうしたらよいか解りませんの。その内、時計とともに、わたくしも消滅するのですから。
時空のはざまに。のめり込むのです。書き捕り虫と供に。