上等だ……
「へ、へー。そうなんだ」
「あぁ、そうだよ。氷菓はただの幼馴染み、別に彼女とかじゃないよ」
圭と焔は階段から移動していた。理由は二つ。一つは、あの場にいたらみんなから変な目で見られていたから。もう一つは学校の案内をしてもらっているから。
「あ、ついた。ここが訓練場。戦闘訓練とかはここでやったりするよ」
「へー…」
焔が指を指した場所は五角形で横一辺30メートル、縦10メートル程の建物。
「実はこの訓練場ってどんな攻撃でも壊れない大理石でできてるんだって」
「へー、そりゃすげーな」
圭は扉を開けて中に入った。そこには二人の人影があった。一人は髪の毛を一つに束ねたいかにも忍者って格好をしている少年、もう一人は髪の毛で目が隠れていて表情が読み取れない。
「あ、八雲君と仙谷君だ」.
そこにいたのは1年Sクラスの八雲 空丸と仙谷 岳山だった。
「おぉ!焔ちゃんじゃねーか!」
「ん?なんだ?知り合いか?日野宮?」
「あの…同じクラスだよ?」
「え?マジ?こんな頭悪そうな奴が?」
「アハハハ……人の事言えないよぉ…」
焔は苦笑いを浮かべている。
「おい!誰が頭悪そうだと!?」
そこに空丸が口を挟んできた。
「お前だよアホ、脳無し、スカポンタン」
「んな!?ぐぬぬぬぬぬ」
「大丈夫…空丸はバカじゃない」
さっきまで一言もしゃべらなかった岳山が空丸を慰めている。
「空丸。僕たちの力を見せてやろう」
岳山が前髪の下から睨んでいるのがわかる。
「おう!そうだな!お前の言う通りだ岳山!」
「あ?なんだ?俺と喧嘩しようってのか?」
「喧嘩?違う違う。これは一方的なイジメだ」
「あ、そうだな。お前らは手も足も出ないだろうな」
圭は炎の異能を発動させ、空丸は腰についてる短剣に手を添え、岳山はただ突っ立ている。
「やめようよ…立会人なしの決闘は校則違反だよ?」
焔は怯えた声で止めようとしたが、3人はやめる気がないらしい。
先に動いたのは空丸だ。空丸から圭にかけて風のトンネルができている。空丸はそのトンネルを通って刀で右下から右上に切り上げた。
「はっ!そんな見え見えの攻撃にあたるかよ!」
圭は後方に飛ぼうとしたが足を何かに捕まれ動けないことに気がつく。
「なっ!」
「相手は俺1人じゃねーぞ」
圭は避けきれずモロに食らった。様に見えたが腕を氷でコーティングしてガードした。
「ハハハ!さすが神谷 圭だ!」
「なんだ、この異能!全然動けない」
「だろうな!岳山の異能は石を操る物だ。しかもここの石は絶対に壊せない大理石だ!何が言いたいかわかるか?そう!ここは岳山のために作られたフィールドのようなものだ!」
空丸は自分の事のように話している。
「絶対に壊せない大理石か…」
「そうだ。もう勝負はついている。諦めろ」
「ヤーッダネ」
「っち!そうかよ!行くぞ!」
空丸は風を使った加速で圭に斬りかかる。だが圭は全身に氷を張り防いでいる。
10分後
「ハァハァ、いい加減諦めてそっから出て来いよ」
「そうだな…だんだん飽きてきたは」
「そうか、やっと降参か」
「はっ?何言ってんだ?降参なんかしねーよ」
「いい加減にしろよ!また、氷でガードするのか!?」
「いいや、こうするんだよ!」
圭は右の拳に炎、雷、光の異能を纏わせて足元を殴った。
「惑星破壊!!!」
その名の通り地球を破壊するような衝撃がその場にいた全員を襲う。
圭の足元にはそこだけ隕石が落ちたような跡ができている。
「さぁ、こっからが本番だ!」
炎が縦横無尽に踊っている。
近くにいた空丸は腰を抜かして立ち上がれなくなり、岳山は立ってはいるがピクリとも動いていない。
「こら!何をしている!」
そこに、先生と焔が入ってきた。焔が連れてきたらしい。
「立会人なしの決闘は校則違反だ!直ちに訓練場から出ろ!」
「はいはい……」
圭はめんどくさそうな顔をして訓練場を出た。
「お前達も早く出ろ」
先生は空丸と岳山に声をかけたが返事がない。
「おい!聞いているのか!」
「は!はい!すぐ出ます!」
先に反応したのは岳山だった。
「行こう空丸……空丸?」
空丸は動こうとしない。だが空丸の顔には笑顔がある。
「待てよコラァ!神谷 圭!」
空丸が勢いよく外に飛び出し圭を呼び止めた!
「終わりじゃねーよなぁ」
「え?」
だが先に声を掛けてきたのは圭の方だ。
「だから、続きやるよなって事だ」
「当たり前だろ、勝ち逃げはさせない」
「上等だ…」