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愛すべき偶像よ。終


帰って寝た。

泥のように寝た。


あのライブが夢だった。

そう思いたいように寝た。


『おやすみ』も『おはよう』も無い。


もう、金なんていらない

もう、バイトなんて行かなくていい

『寝る』は電気も水道もガスすら使わなくていい


だから、俺は『寝た』



違う。これは、嘘だ。


アイドルが好きだったのか?

女が好きだったのか?

夢なんて言葉で逃げていいのか?

『寝る』に逃げていいのか?


アイドルが好き?

女が好き?

『キメラ』だったあのアイドルが?

いや、これも違う。

『キメラ』だと知らなかっただけだ。


違う。違う……違うんだ。


『キメラ』なら殴っても構わない?

『キメラ』なら叩かれても仕方ない?

俺は好きな『城井兎斗』というアイドルを……


前に殴った。『馬』の『キメラ』と重ねているだけだ。


『キメラ』だから好き?

『女』だから好き?

『アイドル』だから好き?


違う。寝よう。眠くなんかないけど……寝よう。

忘れよう。辛いことも、苦しいことも、目をつぶれば……


『僕を殴って痛くないの?』


「やめろー!!!」

部屋に響く声がなった。


やめろ、やめろ……やめろ。

「もう、やめてくれ……」


殴ったのは、殴ったのは悪かった。


だから……


だから、もう、『馬』も『兎』も『豚』も、『キメラ』も……


ピンポーン


チャイムがなった。


こんな、家に何の用だ。

となりか?

叫んだことがうるさいと文句でも言いに来たのか?


冷静な判断ができない


ドアを開けた。

「よぉ豚……こないだはどうも……金、くんね?」


嗚呼、そうだよな……

元々、こいつのせいだよな……

俺がこんなに傷ついたのはこいつのせいだよな……


俺は初めて、『キメラ』以外の生き物を、殴った。


ドアを閉めて鍵をかけた。

何回もドアを叩く音は聞こえる。


虐めるのが悪い、殴るのが悪い、


だから、俺は……

お前らと同じように……


『悪い』『人間』なんだ。


天井に、紐を吊るし、その下に、椅子を置いて、その椅子に上り、


俺は、俺は、


涙を流しながら、携帯を見て……


ドアの叩いた音は止み……


こんな苦しい人生なんて……捨て……


『速報:引退した城井兎斗、育ての親を殺害』


「あーあ、生きててよかったなぁ……」


でも、好きな人ぐらいは……


「幸せになって欲しかったなぁ」

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