転生士 Ep.2 黒き魂
輪廻は、魂を救うためだけの仕組みではない。
その流れを壊そうとする者もまた、存在する。
シオンが初めて知る"もう一つの役目"とは――。
黒い亀裂は、空だけではなく空間そのものを裂いていた。
輪廻の庭を漂う無数の魂が悲鳴を上げる。
本来なら穏やかな光であるはずの魂が、黒い霧に触れた瞬間、苦しそうに形を歪めていく。
「何が起きてる……」
シオンは思わず一歩下がった。
目の前に立つ黒衣の男は、その光景を楽しむように笑っている。
「初めて見るか?」
「……答えろ。お前は何者だ。」
男は肩をすくめた。
「名乗るほど大したものじゃない。」
そう言いながら右手を広げる。
黒い霧が集まり、一つの槍へと姿を変えた。
「ただの"捨てられた魂"さ。」
その瞬間だった。
「シオン!!」
聞き慣れた声が響く。
白い閃光とともにクロードが現れ、シオンの前へ立つ。
「師匠!」
「下がれ。」
その一言だけだった。
次の瞬間、男の槍とクロードの白い杖が激突する。
轟音。
衝撃だけで周囲の地面が砕け散る。
「ほう……まだ腕は鈍っていないようだな。」
「貴様ら漂魂王が姿を現すには早すぎる。」
漂魂王。
初めて聞く名前だった。
男は薄く笑う。
「王など大層なものじゃない。」
「俺は選ばれただけだ。」
「輪廻に見捨てられた魂にな。」
シオンは理解できなかった。
魂は救われるものではないのか。
転生士とは、そのために存在するのではないのか。
ならば、どうしてこんな存在が生まれる。
クロードは静かに言う。
「救えない魂も存在する。」
その言葉にシオンは目を見開く。
「そんな……。」
「転生を拒み続け、憎しみだけを抱き続けた魂は、やがて輪廻そのものを憎む存在へ変わる。」
男は笑いながら拍手した。
「正解。」
「俺たちは"堕魂"。」
「世界に不要とされた魂だ。」
その瞬間、背後の黒い魂たちが一斉に襲い掛かってきた。
「シオン!」
クロードの声が飛ぶ。
「転生士の力を使え!」
「でも俺は戦い方なんて!」
「考えるな!」
「魂を感じろ!!」
黒い魂が目前まで迫る。
恐怖で身体が動かない。
その時だった。
胸元の青いペンダントが強く輝く。
頭の中へ知らない言葉が流れ込む。
――輪廻術式、第一階位。
――魂鎮。
気付けばシオンは右手を前へ突き出していた。
「魂鎮!」
青白い光が波紋となって広がる。
黒い魂がその光に触れた瞬間。
苦しそうな叫びを上げながら、黒い霧が浄化されていく。
やがて一つの小さな光へ戻り、静かに空へ昇った。
「戻った……?」
シオンが呟く。
クロードは小さく笑う。
「それでいい。」
「転生士は倒すために戦うんじゃない。」
「救うために戦うんだ。」
その言葉を聞いた男の笑みが消えた。
「……気に入らない。」
男の身体から溢れ出す闇が何倍にも膨れ上がる。
空を覆うほどの黒い霧。
「だったら見せてやる。」
「救えない魂が、どれほど絶望に満ちているのかを。」
輪廻の庭全体が揺れ始める。
地面の下から、さらに無数の黒い手が伸びる。
その数は数百、いや数千。
シオンは息を呑んだ。
「こんなの……どうやって……。」
クロードは静かに杖を構える。
「ここからが本当の仕事だ。」
そして師弟は並び立つ。
輪廻を守る転生士と、輪廻を憎む堕魂。
両者の激突が、今始まろうとしていた――。
ここまで読んでいただいた方ありがとうございます!
自分の考えた物語を読んでくれるって実に嬉しいですね!!
やっぱり人気ある作品ってなにか引き込まれますよね〜!この転生士もそういう作品になればと図々しく思ってます( *´꒳`*)
是非とも転生士をよろしくお願い致します!




