結婚前は甘えたい 2
「ん?どうかしたのか」
お父様が聞いてくる。
親がいるところで発覚するとは思わなかったよ、本当。ラノベとかじゃほぼない展開だね。まぁここは現実世界な訳だけど。
「いーえ、何でもありません。ただそういえばレオは、レオって呼んでとせがんできたなーと」
「せがんでない、捏造だ!」
「レオはお姉ちゃん大好きっ子だもんねー?」
事実、レオが小っちゃい頃はお姉ちゃんお姉ちゃんと言い寄ってきた。それが可愛くて天使扱いしたら泣かれた。何故だ。
「…今更なんだけど、俺らはいつまでここに居ればいいのさ」
「話を逸らしたわね」
「え、行っちゃうの?今日はアナスタシアの嫁入り前よ。今日くらいしか一緒に居られないじゃない。」
「それでももう夜遅いよ?」
「そうかな?…昨日もリク様と夜更かししたから、感覚が麻痺したのかな?」
「…姉上」
「ん?…ん?」
両親を見ると、絶句ってこう言うことを言うんだなーって言うのが分かる感じだった。
つまり…絶句してた。
「??」
「…えっとさ、昨日はお楽しみでしたね?」
「…それ下ネタだよね、確か」
「いや下ネタじゃないけど…婚約者と夜更かしだよ?」
「あ」
確かに婚約者と夜更かしって絶対そう言う行為を思い浮かべるね。あ、だからメイドさん達が気まずそうだったんだ!
「…遂に大人の階段を登ったのね」
「…そうか、ちょっと王太子殿下とお話ししようかな」
「それが物理的な話じゃないことを祈るよ」
「姉上ぇぇぇ否定して!!」
物理的な話って何?いくら公爵でも、そんな話を王太子にしたらやばいでしょ…
「あぁ、私はまだ純潔だよ」
「そうなの、結婚まで手を出さないって…なんて初々しいの!」
「そもそもただのお話しだけどね」
「だったら誤解を解いてよ…父上のオーラがヤバい」
「…王太子ぃ」
「あ、リク様優しかったよ」
「…王太子ぃ!」
「何この人、油注いだんだけど!?」
あれ、なんかレオがハリセンを持ってる幻覚が見える。…いや違う
「ちょ、それ釘バッド」
「の絵を丸めた模擬ハリセンだよ!」
あ、良かった〜弟が私を殺しにくるとかじゃなくて。それにしても異世界でも釘バッドあるんだね。てかリアルだね。
ふと時計を見ると、もう11時を過ぎるところだった。いつの間にそんに時間が経っているのかと思うが、家に帰ってきたのが10時半頃だったから当たり前かと思う。
「あら、あと1時間で明日ね」
「もうそんなに経っていたのか」
「だから言ったじゃん…」
それにようやく両親も気づいたようだ。
意外と気づかないよね、時間って。
「もう直ぐなんだ、私があの人のお嫁さんになるの」
「…そうね、寂しくなるわ」
「…学園の寮にいたときと変わらないでしょ?」
「嫁入りとはまた違うでしょ」
「あ、そっか」
そうだ、結婚なんだ。綺麗なドレス着て、結婚するんだ。…私はもう、アナスタシア・フィエルテじゃなくなっちゃうんだ。
「なんか、明日結婚なんだ〜って実感が湧かないわね」
「あら、私の結婚式の時もそんな感じだったわよ。
「お母様も?」
「えぇ、旦那様の結婚は政略結婚だったけど、私は旦那様に憧れてたの。だから、婚約の時から実感が湧かなかったわ」
「そうなんだ」
「そうなのよ」
お母様は昔を懐かしむように語る。
両親は政略結婚だけど、結婚後にすごくラブラブになったらしい。それは恋愛結婚のカップルを凌ぐほど。
そういえばその影響で、結婚したら婚約者ともラブラブになれるだろうってたかを括ってたっけ?
「まぁ、最初は仕事もさせてくれなかったんだけどね」
「え?…お父様と?」
「そう」
意外だ。今じゃ業務もこなす女主人だ。それは社交界でも有名で、お母様は主にお父様の仕事を手伝っている。普通の夫人はお茶会での情報収集で精一杯だから有名らしい。
そんなお母様が最初は仕事を任されなかったなんて。
「ハハハ…あの時は政略結婚に反発があってね」
「もう、笑い事じゃないんですから」
こんな仲良し夫婦を見てたら、全然そんなの分からない。それにお父様が反発してるところが思い浮かべられない。
「だから、この人の信頼を得ようと頑張ったの」
「あぁ、だから僕は折れたんだよね」
「それで仕事を任せられるようになって、仲良くなったのよね。」
「てっきり最初から仲が良かったんだと思ってましたよ」
「そうね、何があるか分からないものだわ」
正直想像がつかないけど、今の仲良し夫婦はが見られるのは、お母様が頑張ったからなんだ。
「アナスタシア、夫婦のことだったら私に相談してくれてもいいのよ?」
「お母様ったら頼もしい!…じゃあ、リク様ともっと仲良くなるにはどうすればいいでしょうか?」
「そうね〜話しかけて見るのが一番よ」
「話しかける…」
話すねぇ…何かあるかな?日本でのこととか??
「なんでもいいのよ、おはようとかおやすみとか、些細な挨拶でもいいの」
「些細な挨拶ですか…」
「えぇ」
そういえば、学校とかじゃ挨拶をあんまりしてなかったよね。挨拶習慣とかあったけど、恥ずかしくてボソッとしか言えなかった。
挨拶ってそんな感じだよね。
「この人にね、毎日挨拶して、お仕事の話とかましたの。あ!あと、好きな物とかの話しましたわね。」
「好きな物…」
そう言えば、好きな物どころか前世の名前すら知らないな、セオドリクのこと。
私が考え込んでいると、お母様がニコニコ笑いながら話しかけてきた。
「あらあら、すっかり恋する乙女じゃない」
「え…?」
「そうでしょ?こんなに真剣に考え込むんだから」
「そうかなぁ?」
私は別にセオドリクに恋をしているわけじゃないけど…
そんなふうに考えていたら、12時の鐘がなった。どうやらこの部屋は12時を知らせる機能があるらしい。他の部屋でなかったのは、うるさいからだろう。
「あ、もう1時間くらい経っちゃった。」
「そうだね…なんか、寂しくなるね」
「そっか、もう結婚式だ」
いつの間にか次の日になっていた。それで、今日は私がお嫁さんになってしまう日。
「なんか、久しぶりに家族で話したのよね」
「そうね…」
両親が笑う。両親にとってまた笑い合えることはとても嬉しいことだろう。もちろん、私達姉弟もだ。
「あ、そうだ!ギューッ!!」
「え、ちょ、姉上!?」
私は思い立ったかのようにレオに抱きついた。
「結婚前は甘えたいの!いいでしょ?」
「いや、そういう問題じゃ…」
「いいじゃないか、僕も抱き着かせてくれ」
「私もよ!」
「もう…」
両手を広げる両親、呆れたようなレオ。
「ねぇ、結婚前くらい甘えさせてよ!」
「しょうがないな…」
苦笑するレオに、私は更に力を込めて抱きついた。




