ルドベキア【現代ドラマ】
次回でラストです。
「君の主張は分かった。君が彼の研究の成果を横取りしたというのは、事実無根だと言うんだね」
「もちろんです教授! 私はそんなことしていません!」
俺は前のめりになって言い切った。
あんなにも時間をかけたのに、心外も良いところだ。
教授の隣に座ったまま、何も言わず視線を伏せている奴を睨みつける。
暗くて醜男でいつもぼっちな猫背男。
底辺のこいつが、一体何をほざいてるんだか。
「でもおかしいな」
教授はマウスで画面をスクロールしながら、どこかわざとらしく呟いた。
PCの液晶には、俺が提出した論文が表示されている。
「この辺りの検証をする為には、Aチームの解剖研究に参加していないと厳しいと思うけど。君って参加していたっけ?」
「えっそんな」
おかしい。
AIに聞いた時には、十分文献での検証が可能だと言っていたのに。
急な指摘に、次の言葉がなかなか出てこない。
「どうやってこれを書いたのか、詳しく聞かせてもらえる?」
だらだらと背中に汗が流れる。
大丈夫。
こんな奴が発表するより、俺が発表した方がいいに決まってる。
当然、どう話すかは考えてきたんだ。
一息息を吸い込んでから、ちらりと奴の顔を盗み見る。
奴の顔は、恐ろしいほどに無表情で。
まるでこれからの展開を知っているかのようだ。
なんだか、自分が崖っぷちに追い詰められているような気になった。
「えっ……と、」
そう声を絞り出したところでふと視線を感じた。
思わず顔を上げると、教授の真っ直ぐな視線とぶつかる。
その瞳は、完全に全てを見透かしているような気がした。
【解説】
ルドベキアは、18世紀の植物学者カール・フォン・リンネが、スウェーデンの学者オロフ・ルドベック父子の名にちなんで名付けた花です。
父と子が同じ名前なので、ややこしいですね。
父のオロフ・ルドベックは、医師であり植物学者であり建築家であり音楽家であり……という多才な人物で、リンパ系の発見でも有名です。
若い頃、スウェーデン女王の前で解剖学の研究成果を披露したこともあるのだとか。
息子のルドベックも植物学者となり、リンネの師の一人となりました。
ルドベキアの花言葉は「公平・公正」「正義」。
これは息子のルドベックが、研究を公平に評価する人物だったことに由来すると言われています。
他にも「あなたを見つめる」という花言葉がありますが、これはルドベキアの花芯が瞳を連想させるから。
今回は公平公正な目で人を見つめるという印象を抱きました。
なかなかに話題が尽きない花なのです。




