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爺ちゃんは凄いのか?  作者: 青条 柊
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5/5

四話・冒険登録から三日、異常な初討伐

 「マジか、マジかよぉ。あの見た目で五十四は詐欺だろう」

 「くはははは!」

 俺は絶賛馬鹿笑い中だ。

 ブレイは絶対の自信を持って始めたナンパを、()()()()()という珍事で大失敗に終わり、自信喪失と悪夢を併発している。マジ(笑)。

 良いことあるさ!

 「うるせえ!俺の悲しみを知らないだろうが!」

 「当たり前だ!ナンパなんぞしたことないからな!」

 「このヘタレがッ!俺のナンパ成功率は一割弱だがなッ、それでも挑戦し続けてるんだよォ!」

 「貴様、マジで十五歳かよ、しかも一割弱って、自信満々に言うことか?」

 「ううあ~」

 「ガキか。とりあえずさ、ギルドに行かねーか?確か、十回依頼に成功したら紫に上がれんだろ?」

 「う~。そうだな、うじうじしてても仕方ねーか。よし、行くぞ!受けるんなら討伐以来だな。ドラゴンでも殺りに行くか?」

 いきなりすっくと立ちあがったブレイは、大言壮語を始める。ま、何にせよ面白い奴だからいいけど。

 そうして、俺とブレイは、宿を出た。

 

 明日の地獄を知らぬままに・・・・・・

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 「竜牙之焔(ラグナ・ヴェルゼ)ッ!」

 ブレイの掲げる杖から、炎で出来たドラゴンの首が飛び、眼前の化け物を食らい焼く!

 「オオオオアァァァアラッ!」

 アルが裂帛の気合を込めて自分の身長ほどある大槌を振り上げる。

 その一撃は、化け物の胸に直撃し、その体を後ろにずらす。

 「食らえや!水之刃(リーメル・フォナ)!」

 今度は、ブレイの身長すら上回る長さの水で出来た大剣が、化け物三体の首を薙ぐ。アルはその隙に、死角に隠れて、ブレイが討ち漏らした二体の化け物に近づき、右の方の頭を、鎚で潰し、左の方を前蹴りで遠くに飛ばす。すかさず、ブレイの追撃が入る!

 「落雷之天罰(サタナエル・ヴェネグ)!」

 轟音を響かせて、一点に集中した雷が落ちる。見るもの全ての視界を白で染め上げるその雷は、まさに天罰と言えるかもしれない。

 アルは、大槌を下ろし、ブレイは杖を下げた。

 ようやく、目に見える範囲の化け物の掃討が終わったのだ。

 一息ついても許されるだろう。

 「ふい~。マジで何だったんだ今の。マイノトロルはどーしたよ」

 ブレイが嘆息し、へたり込んで愚痴を言い始めた。

 「同意。これ、マイノトロルじゃねーとクエストの達成になんねえのかなぁ?」

 アルも心底疲れたようで、ブレイと向かい合う形で地面に座る。いや、寝転がった。

 「アレ、何だったと思う?」

 ブレイの視線の先には、ついさっき斃した化け物の死体があった。その姿は、まるで岩でできた人形のようで、しかし、確実に意識があり、本能を持って動いていたと確信できる。

 「リビングゴーレムなんて、こっちにゃいねーしなぁ・・・」

 アルはポツリと呟くが、ブレイは聞こえていなかったようで、聞き返している。流石に、サブカルチャーを説明しようという気にはならなかったのか、アルはお茶を濁して話を変えた。

 「いや、アレの討伐証明ってどうやるんだろうな。見たことない奴なら基本的には、一番有用そうな部分って聞くけどよ、岩の塊で一番有用そうなのって何処よ。首でも千切ってくか?」

 「無理だろよい」

 「いや?そうでもねえぞ?」

 アルは少し誇らしげに立ち上がると、おもむろに残骸となっているリビングゴーレムもどきの首目掛けて踵を振り下ろした。ばぎゃんと言う音が響いて、岩の塊の首が砕けた。

 「ほれ」

 アルは痛痒を全く感じていないようで、リビングゴーレムもどきの首をブレイに投げる。

 「オイオイ・・・お前、蹴りで岩を砕けるって武器いんねーだろ」

 「んなわけねーだろーが。レジュルとかを手で切断できるわけでもあるまいし。つーか、武器使った方がリバウンドが少ないだろ?」

 レジュルとは、まぁ、ラノベなどで言うスライムに似た何かだ。ラノベなどではスライムと言えば、張りがある流線型の粘体だが、レジュルはアメーバを大きくして緑にした感じの気持ち悪いのだ。

 アルはあっけからんと言い放ち、まだそう付き合いが長くないブレイは呆れた様な表情になる。

 笑いあった二人は疲れたように、一日を振り返り始めた。

 

 もう、ムリ。

 俺、死んじゃう。

 この言葉が何度俺の頭をめぐりに巡ったか。

 今日は厄日だ。戻ったらお祓いでもしてもらいてえ。でもルナ正教にそんな風習はねえ。

 需要と供給がかみ合わないことってあるよね。こんな需要を持ってんのは元日本人の俺だけかもしんねえけどな。

 今日は本当に厄日だった。なぁ、ブレイ?

 「そーだなぁ。青のクエスト受けたら確実にそれじゃあ済まねーのがわんさか出てきやがった。つーか、マイノトロルなんて数だけが頼りの雑魚だろーがよ。それを五十体ぶちのめすだけでよかったのに、白ぐらいの摩訶不思議生命体が出てくるかね?」

 「いや、マジで。アレが生命体だとは思いたくねえけどなぁ」

 ほんと、マイノトロル―――人型の面妖な怪物。土属性の魔法を使う。妖精崩れって言われてる奴だ。―――の討伐のために〝トロル谷〟に来たんだぜ?トロル系の奴しかいねえここに、岩でできた怪物が巣食ってるなんて聞いてねえ。この谷は、イーガー山脈に近くなるごとに強いトロルが出てくる。ここの平原から五百クラン(一キロメートル)ぐらいしか離れてないとこで出てくるのがマイノじゃねえってだけで調査対象だ。もう少し進んだらフラゴトロル、更に先行っちまえばジラーザトロルなんかも出てくるらしい。最奥にはラグトロルの家族なんかがいるらしい。俺はそれを聞いた時嘘だろって思ったね。

 だって、母さんが子供が可哀想だから討伐は見送ろうって言ったらしいんだ!

 あの冷酷非道で、他国のお偉いさんすら睨む様な人がだぜ!?

 実の娘を、女は強くなければならないとか言い出してダンジョンの四十階に置き去りにした人だぞ?帰ってくるまでに二週間かかったからってもう一回やりなおしにさせられてた。

 あの時が初めてフィア姉さんの涙目を見た時だった。なんか、こっちもうるっと来たもん。

 ―――ふぇ!?何か今、背筋に悪寒が・・・

 

 その頃の王宮侍女長・・・

 「ん・・・アル?悪口言いましたね?」

 恐るべき予感だった。


 ――――――――――グギャアアアアアァァァ

 「な、なあブレイ。何か聞こえた気がしたんだが・・・」

 「お、俺様もだ。マジか・・・?」 

 こわ、マジでこえええええ。

 誰か助けて。

 そして、俺たちの上空から。

 

 ―――――大量の怪物が()()()()()

 「「うぉぉぉぉおぉぉ!?」」

 地獄ってのはここにあったのかよ!!

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