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爺ちゃんは凄いのか?  作者: 青条 柊
冒険者登録
3/5

二話・冒険者登録と初めての依頼達成

 これは、なかなか。

 うん。これもいい。この味はなかなか出せない。黒パンが美味い。

 今僕は、宿にいる。たとえ王都―――同じ町に実家があろうと、独り立ちしたのだから、自分の稼ぎで生活するのは当然のことだ。・・・まぁ、餞別くらいは貰っているけど。

 今日は、昼からギルドに行って、その足で仕事を受けてきた。

 足ひっかけられて、ポーズを決めた後―――あの後速攻で突っ込まれた。俺が投げた酒臭い先輩冒険者は、爆笑して俺の背中を叩いてきた。手甲を付けたままだったのでかなり痛い―――緑ランク唯一の依頼を受領してきたのだ。工事の手伝いだったが、なかなか楽しかった。

 ()()()()()()()もあった。

 「おい、アル?何で変な顔してるんだ?」

 「あ?誰が変顔だ。この黒パンが美味いからに決まってんだろうが!」

 「黒パンより白パンのが美味いだろうよ!」

 「い~や、黒の方が歯ごたえがあって何とも言えない旨味が出てる!」

 「白パンの方が甘くていいだろうがよ」

 「黒パンに甘さがないと思ったら大間違いだぜ?」

 「アル、お前の舌は大丈夫か?」

 「寧ろお前の舌の方がおかしいぜ、ブレイ」

 「んだと、こら。黒麦100%の黒パンを噛み締めながら甘いなんて言う阿保はお前しかいねーだろうが!」

 「はぁ?俺の家族は大体黒パン派だぜ。特にケイル兄に至っては朝昼晩と黒パン食ってるぞ」

 「家族全員かよ」

 ブレイは俺の目の前で、肩を竦めて溜息を吐いた。

 さあ、このブレイという少年が誰か、気になっている所だろう。

 俺も気になる。事実、こいつの事はよく知らない。

 え?何でそんな奴と一緒に飯食ってるかって?

 そんなものは決まり切っている。こいつも俺と一緒で、今日冒険者登録をして、同じ依頼を受けたからだ。こいつは見た目からして魔術師なんだが、意外と身体能力も高く、工事の仕事も簡単にこなしていた。ま、俺には敵わないがな。俺はゲームのクラスなんかで言うとまんま戦士だしな。

 俺はほとんどの魔法を使えない。魔力はあるぜ?多分、平均の数十倍くらい。何故かって、親父も母上も、そのぐらいあるらしいし、ケイル兄に至っては、王国でも随一の魔力量があるらしい。

 けどまあ、俺が使える魔法は、俗にいう身体強化と身体硬化だけだ。

 だからこそ、そこに特化して、阿保みたいな怪力を得ています。わー、パチパチ。

 取り敢えず、今日の依頼の回想に入ろう。

 

 ―――お仕事終了間際―――

 大きな大きな石材を~♪

 ポイッと適当に投げまして~♪

 ほかの奴に見えない速さで走ったら~♪

 音を立てずにキャッチして~♪

 言われたところにおきまして~♪

 ジャンプで壁から飛び降りて~♪

 次の石材運びましょ~♪

 そんな歌を頭の中で流しながら、一人楽しく石材運びをしていた俺は、面白いものを見つけてしまった。そう。それが始まりだった。

 ・・・いや、貴様。そう、お前だよ!なんか寂しい奴とか、可哀想な奴とか言うんじゃねえ!別に、前世でボッチだったとか、昼休みに周りに誰もいない自分の席で弁当食ってたとか、遊びに行くときは基本一人で、アニメの映画見て、一人でカラオケ行くとか、そんなことはねえんだからなァ!!

 妙にリアルとか言うなぁぁぁぁ!

 泣くぞ!

 ・・・ふう。クールダウン、プリーズ。

 話を戻そう。

 俺が見たのは、全身緑の変なのが石材を頭の上に持ち上げて運んでいる姿だった。

 そいつは魔術師らしく、杖を腰から下げていたが、その杖が余りにも長い。何か、俺よりも長いじゃないかって・・・しょぼん。

 それに、そいつは、魔術師のくせに筋力があるようで、しっかりと頭の上まで持ち上げていた。

 なんか癪だ。つーか、こいつ背が高い――――!

 よし、後でお話ししよう(〆つつボコる)

 そう考えて俺は、速攻で石材を運び、魔術師野郎と同じタイミングで、魔術師野郎の二倍の石材を持ち上げる。

 ふっ。お主には無理じゃろう?俺の方が上だなぁ?

 そんな思いを全面に出して、鼻で笑って魔術師野郎を見やる。

 すると、目論見通りに魔術師野郎は、額に青筋を浮かべて、俺と同じ量の石材を抱えた。

 こちらを見て、ふっ、と鼻で笑ってくる。

 へん!その程度かよ。雑魚めが。俺はランゲルフライスクレイ家一の怪力だぜ?その程度は1%の本気も出してないんだぜ?ふん!

 そんな思いと共に、更に倍の量を持ちあげる!

 それに対抗して、魔術師野郎も同じ量を持ち上げる!

 俺は更に増やす!魔術師野郎もさらに増やす!その連鎖が続いていき・・・

 

 「ふっ。貴様、なかなかやるな」

 「お前こそ。芯があるじゃねーか」


 分かり合った。拳を合わせた。こいつはもう親友だ。見たところ同い年ぐらいだし、魔術師っぽくてこんな仕事をしているのだから、同じ緑級(グリーン)の冒険者だろう。

 て、ちょっと待て?こいつ緑級(グリーン)だから緑の服なんじゃないだろうな。それだったら中々に面白い奴だぞ!友達になれそうだな。

 「お前の名前は?」

 魔術師野郎が聞いてくる。答えるに決まっている。

 「俺はアーノルドシュタイン。アルと呼んでくれ。そう言うお前は?」

 「俺様はブレイだ。見ての通り魔術師でな。今日の朝に冒険者登録をしたばっかりでな。まぁ、まずは緑ランクの依頼を受けようと思ってこの依頼に来たってわけよ。俺様はまぁ、そこらのウルフぐらいなら片手で屠れるが、最初なのだから、と思ってこの依頼を受けたのよ」

 「へぇ、俺とほぼ一緒の考え方じゃあないか。俺も今日登録したばかりでな。ここで貴様みたいな面白い奴に出会えるとは思ってもみなかったぜ」

 「そうか」

 「ああ」

 「話し合い中に悪いがよお、よくやってくれたなぁ」

 俺と魔術師野郎―――ブレイは同時に振り返った。もう、壁の上までは運び終わっている。何か迷惑をかけただろうか?

 話しかけてきたのは、物凄いガテン系のおっさんだった。

 髭は適当に伸ばされていて、十代後半の女子が見たらキモイと即日言いそうな見た目だ。

 「どうしたのさ、親方さん」

 そう、彼は親方だ。俺やブレイの雇い主でもある。

 「いやあ、お前さんらが張り合って残り全部を片付けちまったお陰でお前さんらの仕事がなくなったんだわ。そんでよ、ほい。今回の賃金だ。仕事ありがとよ」

 小さな袋を渡してくれる。この中に、銀貨二枚と銅貨十四枚の報酬が入っている。

 初めての依頼、初めての賃金。

 前世から合わせて初めての給料なのだ。

 興奮しないわけがない!

 ―――因みに、この世界の通貨を説明しよう。

 この世界には、青銅貨、銅貨、銀貨、白銀貨、金貨、聖金貨がある。

 銅貨二枚で黒パンが買えるから、大体銅貨一枚五十円くらい。青銅貨十枚で銅貨一枚なので、青銅貨は、一枚五円、銅貨百枚を集めて銀貨一枚なので、銀貨は五千円。同じく、白銀貨は五万円、金貨は五百万円、聖金貨は、五億円だ。

 基本的に、聖金貨や金貨は使われない。それらは、大商人の大口取引や、国同士でのやり取りなんかで使われることがあるくらいだ。

 で、宿屋の一泊の値段が銀貨二枚が平均。食事はついてないけど、個室で、一日寝られる。それで、黒パン三個くらいがお腹一杯になる量なので、この仕事を続けると一日二食でギリギリ生きられるということだ。

 俺とブレイは同時によしっ、と声を出し、顔を見合わせて笑い合った。親方も楽しそうにしていた。楽しそうな若者を見ると力が出てくると言って去っていった。

 かっこいい人なのかもしれない。

 俺とブレイは、同時に言った。

 「「今から宿を探さないか?」」

 完全に同時で、また、一緒に笑い合った。

 ―――回想・終―――



忘れていましたが、基本的に感想に返信は行いません。

また、活動報告もあまりする気がありません。

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