メギドラセッション
20XX東京タワー
ハニエルの言圧が髪を焼く
俺たちに言葉はない。
俺の後ろ、ヒロイン?バディ?
イカれた彼女がメギドラオンの詠唱に入った。
一言くらい言えよ、と思うが
――俺の口角が上がる。
キレたんだな。
ああ、わかってる。
俺は左半身でMP5を構え、フルバースト。
反動で骨が鳴る。
右腕のアームヘルド・コンピューターが跳ねる。
顎を傾け、舌先でスイッチを押す。
――悪魔召喚プログラム、起動。
電子音。
デカラビア、応答。
海星型の悪魔が空間に滲むように現れる。
幾何学の瞳が俺を見た。
――テトラカーン、だな?
話が早くて助かるぜ。
背後で、彼女の詠唱が加速する。
息継ぎのないリズム。
俺のタイミングなんざ、とっくに読まれてる。
頭が上がらねぇよ、まったく。
ハニエルが目を開いた。
大気が震える。
焼け爛れた街の空気が、爆風に変わった。
デカラビアが腕を広げる。
結界の光が走る。
同時に、ブレスが襲う。
炎が結界を貫き、海星の体を焼く。
デカラビアは声もなく崩れ落ちた。
残ったのは、空間に漂う薄い光膜だけ。
「では、必ず蘇生を――」
伝わった。
おまえ最高だぜ。
ハニエルの翼が振り下ろされる。
その瞬間、残滓のテトラカーンが起動した。
光が跳ね、爆風が反転。
大天使の翼が自らを貫いた。
灼熱と閃光。
神域が空を裂く。
ブレスの熱が逆流し、聖体が崩れ落ちる。
……勝った。
メギドラオンの詠唱が終わる。
世界が光に飲まれる。
白に焼かれた視界の中で、
俺は一瞬だけ、消えたデカラビアの影を見た。
いい仕事だったよ。
耳鳴り。
焦げた臭い。
床に散ったガラスが、光の残滓を呑み込めず震えている。
彼女は、そこに立っていた。
息が荒い。
MPはゼロ。
でも、目は死んでいない。
俺はマガジンを空にしたMP5を下げ、笑う。
「……行くぞ」
それだけ言う。
彼女は無言でうなずく。
その頬を、まだ光の余韻がなぞっていた。
外は静かだ。
東京の瓦礫が風に鳴る。
もう天使も悪魔もいない。
あるのは、ただ――
俺達の呼吸だけ。




