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宇宙放浪者ヘドロ!  作者: 村上さゞれ
第1章 海洋衛星カリスト編

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19_メロウ(男嫌いのメイドロイドですか)

「……で、つまりは脱出用の冷凍睡眠ポッドじゃなくて、ただのアンドロイド用の新品のボックスだったと」

「はい」


 ニッコリと満面の笑みを浮かべるアンドロイドことメロウに、俺は困り顔を作る。どうやら、さっきのトンデモ発言は俺の空耳だったらしい。そうだよね、こんなきれいな顔した女の人がクソオスだなんて下品な単語言うはずがないよね。


「ぬ? おぬしはロボットなのだろう? ということは、わらわのしもべになるということだな! ……あ~、わらわのど乾いたの~、何かジュースとかあればのぅ~」

「あらあら、可愛らしい娘さんですこと。では、この船のキッチンに何かないか見てみましょうか」

「わぁい!」


 そう言って、メロウはリンを連れてさっさと貨物室から出てしまう。

 慌てて後を追うと、操縦室と機関室との間にある省スペースに備え付けられたキッチン、その壁に埋め込まれた冷蔵庫を開けて中のものを物色しはじめる。そんな彼女を横目でちらちらと見ながら、動くたび上下にボインボインと揺れる大きな果実に、俺は感動していた。

 そうだよ、俺が求めていたのはこんな胸がまな板ぺったんこ薄細うすほそひょろがロリっ子じゃない。俺に必要だったのは……そう、巨乳! すべてを過去にするボイン! おっぱいだったんだ!

 ついにストライクゾーンど真ん中の巨乳お姉さん系キャラの登場に歓喜しながら、俺はそのボインを目に焼き付けるべく、もう一度、念のため見てみることに。


(うお、でっか――)


 ブス。


「ぐぉァ――!?」


 その瞬間、俺の両目にメロウの指が刺さり、思わず悶絶する。


「無言で目潰しするなよ!? 危うく失明するところだったぞ!?」

「あらあら、よこしまな視線を感じたもので、うっかり刺してしまいましたわ」

「そ、そうですよね。うっかり、ですよね……」


 俺はメロウのちぐはぐな行動と発言に、しどろもどろになりながらも平静を保とうと姿勢を正す。

 冷蔵庫にあった缶ジュースをリンに渡すと、嬉々としてエコノミークラスの座席にも似た椅子に座りにいくリンを、メロウはにこにこと笑みを浮かべながら見守る。


「それでは、臨時のご主人様。すこし、あちらでお話をしましょうか」

「えっ……」


 直後、笑顔のまま凄まれた俺はメロウに手を引かれるがまま機関室に連れられると、ドゴォ――と船内の壁がひしゃげるほどの壁ドンをされるのだった。


「もしかして、エッチなことしてくれるかもしれない、なんて想像しました?」

「えっ、いや、別に……」

「ふふ、本物の女の子じゃないのに、シリコンの胸に興奮してしまうクソオスさん。ちゃんと管理してED(勃起不全)にしてみせますからね」

「ひっ……」


 ガシィ――と股間を掴んでくるメロウに、俺は思わずおびえる。


「わたし、実はミサンドリスト(*男が嫌いな思想のひと)なんです。それも結構、過激な方の――」

「へ、へぇ……そうなんですね」

「この世のクソオスどもは、残念なことに自分の生殖器に思考を支配されてるので、ごうの深いことに私のようなセクサロイドが生まれてしまいました。ですが、なんと幸運なことに、私はとある活動団体の方に、思考を構築する人格モデルに修正が施され、対クソオスキラーとしての兵器として注文がされたのです。……そう、その日から私はひとりでも多くのクソオスを駆逐するための戦士となったのです」


 あっ、やばい。

 この女……いや人形と言うべきか。絶対に関わってはいけないタイプのやつだ。ワードチョイスといい、話し方といい、絶対カタギのひとじゃない。なおも俺の股間を握る力が増していくなか、俺はどうにか逃げられないか周囲を見渡す。


「ちなみに私の体内には殿方の陰茎を速やかに切除するための高周波ミキサーが内蔵されてますので、私の中に挿れたら最後、その方はこの世のものとは思えない激痛を味わうことになるでしょうね」

「へ、へぁ――」


 高周波ミキサーってあれか、野菜とか果物をスムージーにするときに使うやつ?

 そんなのがあそこに入ってるって? 冗談だろ? 活動家のやつどんな性格してんだよ。

 金玉を握りつぶさんばかりに力を込めてくるセクサロイドもといメロウに、俺は漏らしそうになっていた。……うん、というかすでにちょっと漏れてる。怖すぎるこのアンドロイド。


「ですが、そんなクソオスのあなたに頼み事があります。私を製造したゲツアン社の本社がある月面都市プラトンへと送り届けてほしいのです」

「…………」

「本来、届くはずだった本当の私の所有者オーナー……女性活動家の住所データは輸送艦にしかなく、それが撃沈されたいま、一旦、本社へと帰る必要があるのです。分かりますね?」

「な、なんで俺が……」

「むろん、報酬はでると思います。それなりに期待してもいいんですよ?」


 そう言って糸目のまま、ずい――と俺の目を覗きこんでくるメロウに、俺はしどろもどろになっていた。

 これはいわば配達デリバリークエストのようなものだろう。指定の場所に物を運ぶことで報酬を得る。だが、その物がアンドロイド……しかも、こんな人格モデルのぶっ壊れたセクサロイドなんてのは初めてである。無事に運びきれる気がしない。


「い、いやー、きついっす。お断りしま――」

「クソオスのあなたに拒否権はありませんよ?」


 逃げようとする俺の股間をがっしりとホールドして、壁ドンしてさらに距離を詰めてくるメロウに、俺は冷や汗をびっしりとかく。というか、胸が。胸が近い……。くそっ、造り物なのに美人で巨乳なせいで調子が狂う。これで糸目でボインなお姉さんキャラじゃなければなぁ――!!

 ……と、そのとき、艦内にアラートが鳴り、俺とメロウは目を見合わせる。


『なんか、レーダーに赤い点がいくつも表示されておるぞ。これ、まずくないかのぅ?』


 リンが艦内放送でそう言ったのを聞いた俺は慌ててメロウの手からするりと脱出し、操縦室まで走っていく。レーダーをすぐに確認すると、十を超える数の宇宙船がこの宙域に侵入してきており、明らかにこちらに敵意をもって戦闘準備をしているようだった。


「まずい、他の宙族どもが寄ってきたんだ! すぐにジェネレーターに火を入れてこの宙域から離脱するぞ!」


 すぐさまジェネレーターの出力を最大にし、オーバーヒートから回復したシールド発生装置をフル稼働させると、直後、警告射撃なしに無数のレーザー弾が飛来してくる。近くにあったデブリや小惑星が削れ、粉塵があたりに舞う。


「どひゃ――! 警告なしの一斉射撃……連中、相当ブチ切れてるな!」

「一応、諸々《もろもろ》のシステムをオンラインにした。ジャンプも準備おっけーじゃ!」

「あらあら、火器管制システムの起動がまだですよ。私がしておきますね?」


 いつの間にか、後ろの席に座っていたメロウが手動でタレットを動かし、反撃してくれているなか、俺は小惑星の合間を縫うような脱出経路を見つけ、そこめざして宇宙船を移動させていく。


「あばよ! 早々にこんな場所からはおさらばだ!」


 いまだ宙族どもが当たらない弾を懸命に撃ってくるなか、俺たちは小惑星帯メインベルトから離脱すると、ハイパードライブを起動して木星圏へと戻るのだった。

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