09.祈雨の果てに見つめるものは
ざあざあと鳴る空から守るように、こんもりと繁った森の中。鋭い刃音が響いた。
木々の隙間を、光の粒が通って、空高く昇っていく。降り注ぐ雨の中に、光は消えていく。
それを見上げる人影があった。
諷は瞳を緩く細める。森の中は存外に明るい。
手にしていた刀を払って納刀すれば、木々はさわさわと何か伝えるように揺らめいた。
「……なんだ?」
諷は木に立てかけていた番傘を掴み、その場を後にする。少し開けたところについて、空を見上げた。
遠くの空が光る。厚い雲に覆われた空に、青い光で模様が描かれていく。
森の中、ぽっかりと空いた枝葉の隙間から、諷はその空を見つめていた。
「……あれか」
それはまさしく、嵐の前兆であった。
諷の金色の瞳がキラリと輝く。光は花のような模様を描き出し、空に大きく広がっていく。中心はもっと南の方角のようだ。
諷がその中心に向かおうと踏み出したのとほとんど同時に、あたりが真っ白に染まった。驚いて目をぎゅっと瞑る。
落雷。もしくは、それに似た何か。
「蕾……」
諷の中で、繋がったところがあった。ああ確かに、これは神さまの言う通りだ。
目を覆っていた左手の袖を外す。
「確かに、空は切られ、雷は落ちたが」
目を覆っていた左の袖を外す。諷はパチパチと何度も瞬きをしながら、すっかり平和を取り戻した空を見上げた。厚い灰色の雲には、一か所だけ青空が覗いている。さながら台風の目だ。視線の先、何か落ちてくる影がチラリと映る。
それから、思い出したかのように、ざぁっと降り注いだ雨粒が、赤い傘に当たって撥ねた。強く吹いた風が、木々を揺らす。
「これは思いの外大きな嵐だな……」
大きく息を吐き出して、諷もようやく、足を踏み出した。
その口許が笑みを浮かべていたことは、神さまのみが知ることである。




