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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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意外な参加者

 次の予選には知っている顔は見当たらなかった。

 正確には、レジーナにやられていた連中であるとか、ナギを撫でに来た人なんかはいたようだけれど、しっかりと顔を覚えて応援するような相手というわけではない。

 それでも集団の中にきらりと光る腕を持っている者がいて、彼らがぶつかり合ったりしているのを見ていると、観戦もなかなかに面白いものである。

 戦いが苦手なカーミラは、たまに目を細めたりしていたけれど、ハルカは仲間と訓練をし過ぎたせいか、これくらいの戦いならば目をそらさずにじっくりと見ることができるようになっている。

 あの人のたたずまいは強そうだ、と思った相手が無事に強かったりすると、ちょっと嬉しくなって目で追いかけたりしてしまう。

 数年前と比べると、ハルカも随分成長したということなのだろう。


 そうして第二戦の勝者が決まると、舞台に上がる選手が入れ替わっていく。

 今度は知っている人がいるのかいないのか。

 また、誰が勝ちそうなのか。

 そんなことに注目していると、また聞きなれた声が聞こえてきて、ハルカは顔を上げた。


「いやぁ……、すごく盛況でござるな。見つけるのに一苦労だったでござる」

「カオル、お疲れ様。予選突破おめでとう」

「ふ、当然でござるよ」


 かっこつけてカオルが答えるが、エリは緊張でガタガタと足を小刻みに震わせていたのを知っているから、良く言うものだと白けた顔になってしまう。


「ハルカ殿、見ていてくださったでござるか?」

「あ、はい。見事にさばききりましたね、流石でした」


 アンデッド騒動の頃に一度命を助けられてから、カオルはハルカに対して随分と懐いている。

 所感を述べて褒めると、パーッと表情が明るくなった。

 そしてカオルの周囲からちょっとした黄色い声が上がる。


 ハルカはできるだけ見ないようにしていたが、どうやらカオルはこちらに来るまでに、自分のファンになった女性を連れ歩いてきたようである。本人もまるで気にしていないけれど。


「何連れてきてんのあんた」

「ん? なんか色々くれたでござるよ。食べ物とか、飲み物とか」

「ふーん……。ま、席空いてないから帰ってもらったら?」

「そうでござるな、エリ殿、ちょっと詰めるでござるよ」


 そう言ってカオルが無理にエリの隣に体をねじ込む。

 横一列に余裕がないわけではないので、また少しずつずれてハルカたちはカオルのための場所を空けた。


「あ、すまぬが席があまり空いてないでござる。皆もそれぞれの場所へ戻るといいでござるよ」


 カオルはついてきたものを誰一人として贔屓せずに、笑顔で手を振ると、女性たちは残念そうにしながらも大人しく去っていく。

 エリを睨みつけるようにしていた者もいたが、逆に「あ? 何?」と睨み返されてすごすごと去っていった。エリはおしとやかな令嬢のような見た目をしているが、これでも二級冒険者の凄腕魔法使いである。

 一般人に胆力で負けるわけがなかった。


「さて、最初に終わったから気楽でござるなぁ。トット殿の出番は今日の最終だそうでござる。今頃緊張で震えているかもしれんでござるなぁ」


 相変わらずカオルは、自分のことを棚に上げて楽しそうだ。

 それだけトットとも仲良くなったということなのだろうけれど。


「なんか、あの人……、見たことがあるような……」


 一方で舞台の方へ視線を戻したハルカは、目を細めて一人の参加者に注目していた。


「ん、どれどれ?」

「あの、ほら、あそこの男の人。剣構えてるじゃないですか」


 コリンが顔を寄せてきたので、ハルカはその人物を指さす。

 みんなしてその男性に注目するが、誰もぴんと来ていないようだった。

 その男は空を見上げたり、大きく呼吸をしたりして緊張をほぐそうとしているようだ。

 短めの剣を片手に持って、左腕に小盾を装備している。

 しばらく悩んでから、ハルカはようやくその人物が誰だか思い出した。


「あれ、あの人ですよ。ほら、シモンさん」

「誰だよ」

「ええと、あの、王国へ入った後に、襲ってきた賊の」


 アルベルトとコリンとモンタナが、揃って明後日の方を見ながらしばし考え、ほぼ同時に「あ」と声を上げた。


「ハルカが逃がした人です?」

「そうですそうです」

「ああー、いたなぁ、そんな奴」

「なんか顔つき違くない?」


 当時ハルカは、たった一人生き残ったシモンを見逃すか見逃さないかで随分と悩んだものだ。深く反省しているように見えたし、モンタナから見てもそれに嘘がない、ということで、もう悪さをしないと誓わせて解放したわけである。

 〈武闘祭〉に出場しているということは、おそらく、その後もまっとうに活動しているということなのだろう。


 シモンはしばらくそわそわとしていたが、やがて胸に手を当てて、まるで祈りをささげるかのように空を見上げて立ち尽くす。

 そうして始まりのドラが鳴ると、剣と盾を構えて慎重に立ち回り始めた。

 仕掛けられる攻撃を盾でいなし、必要に応じて剣を突き出す。

 防御重視のヒットアンドアウェイの戦い方は、独特であるけれど、慎重で堅実な動きであった。


「へぇ、結構やるじゃん」

「ちゃんと鍛えてるです」


 アルベルトとモンタナの評価を聞いたハルカは、あの時の判断は間違っていなかったのかもしれないと、少しばかりほっとするのであった。

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― 新着の感想 ―
ハルカ教信者シモンさん笑 ちゃんと更生してたみたいでなんか嬉しいですね
全然覚えてなかった私の記憶力はアルベルト以下。 農民のミソッカスから武闘祭に出場できるまでに成長したんだなぁ。
世界は広いが世間は狭いということでしょうか 最近その辺読み返してたので なんか嬉しくなりました。
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