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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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かっこ悪いわけねぇだろう

「なるほどねぇ……。つまりサイカ様をぶっ殺してエニシ様が巫女総代に戻れば、全部解決ってわけか」


 話はすべて理解したとばかりに、ライゾウが膝を叩いて頷く。

 サイカの行動を考えれば最短距離での回答はそれだ。

 ただしその場合、エニシは誰が味方で誰が敵かわからないまま、巫女総代に戻ることになる。


「我も、巫女総代に戻ることは考えた。……しかしライゾウ殿。我は今、世間では何と言われておるのだ」

「……神龍島を独立させるために大名らの力を削ごうとしていたと。その結果、巫女たちの中で対立が起こり、返り討ちになった……、だったな。もちろん俺はそんな話信じちゃいねぇが」

「では、我が仮に巫女総代に戻ったとして、どうなる?」

「そんなもん……」


 ライゾウは勢い込んで何か前向きなことを言おうとしたようであったが、何も言葉が出てこずに、結局顎に手を当てて考え込む羽目になった。


「そういうことだ。サイカを引きずり落としたところで、我には意味がないのだ。やるべきことは、身内の救出。もはや巫女総代の立場は、我にとって足かせにしかなりえぬのだ……」

「そうしたら……、エニシ様の掲げた【神龍国朧】の平和は、どうすんだ……?」


 ライゾウは巫女総代のエニシが掲げた目的に向けて走ってきた。

 エニシの言葉は、まるでその目的を放棄するかのように聞こえたのだろう。

 真剣な顔でエニシをじっと見つめて尋ねる。


「別の形で叶えるほかなかろう。人の手を借りてばかりだが、ライゾウ殿のように我の考えに共感してくれる者もいる。むしろ〈神龍島〉にいては話ができなかったような者とも積極的に交流して、味方を増やしていくべきだろう」


 エニシは困ったように笑いながらも、背筋を伸ばし、叶うかわからない理想をまっすぐにライゾウにぶつけた。力もない、後ろ盾もない、本当に理想を語っているだけのエニシは、自分がいかに身の程知らずなことを言っているかを分かっている。

 それでも、そんな理想に共感してくれる人がいて、手を貸してくれる人がいる以上、諦めて放り出すつもりはなかった。

 口にすることすらおこがましいと知っても、堂々と言ってのけた。

 それがエニシがこの国を出てから学んだことであり、そうありたいと願った姿であった。


「サイカとだってきちんと話をしたわけではない。仲間たちが無駄に殺されていないと分かれば、腹立たしくも、まだ話し合う余地はあるだろう。我は諦めぬ。これからも精一杯、この国の平和のために奔走して見せるとも。……この国が平和になれば、友たちと共にのんびりと、白い花での花見もできるようになるかもしれぬしな」


 【神龍国朧】の春の象徴は、人の血を啜って赤く色づく。

 平和でのんびりとした生活を好むハルカが、血を吸っていない真っ白な花で、穏やかに花見ができたらいいとエニシは笑った。

 何から何まで手を貸してくれるお人好しの友達に、そんな故郷を見せたいと思ったのだ。


 ライゾウが俯いて唇を噛みながら「んーー……!」と何かを溜めるように声を発し、それから、これまでよりも激しく、両手で自らの太ももを叩いた。


「やっぱりエニシ様だ」

「……自分では何もできぬのだ。言うことがないのならば、かっこ悪いと素直に言っていいのだが」

「いいや、かっこいいね。俺が惚れたエニシ様はこれで良い。夢や理想を臆面なく口にできるものが、かっこ悪いわけねぇだろう」


 エニシはまた苦笑した。

 もし大陸にいる間の自信をすっかり消失したエニシを見ていたら、ライゾウはきっと自分に失望していたのだろう、と。

 ハルカたちに助けられ、そして遠い国で話をしたエリザヴェータに活を入れられなければ、シナシナの抜け殻のままであったはずだ。


「うむ、そうか。我はそう、図々しいのだ。だからライゾウ殿にも我の理想のために、存分に働いてもらわねばならんな」

「そうだそうだ、それでいい! 存分に俺を使ってくれりゃあいい」


 二人は見つめ合って笑った。

 改めて話したことで、どうやら絆のようなものができつつあるようである。


「よし、そんじゃあサイカ様をぶっ殺すのは一先ずおいとくとして、具体的な計画を練った方がいいな。一応俺は明日、御殿の方に呼ばれている。何か調べてきた方が良いことがあれば、やってくるぜ」

「調べたほうが良いこと、でござるか……」


 それぞれが頭をひねって考える中、最初に口を開いたのはリョーガだった。


「……ライゾウ殿。お付きの者を追加することはできぬだろうか?」

「あー……、できるんじゃねぇのか? 元々全部で五人までは入れるだろ。俺たちは三人しか来てねぇから、もう二人追加できる。ま、必要だってんなら、こいつらに留守番させて、四人ついてきたって良いぜ」

「え、そんなに簡単に入り込むことできるの!?」


 コリンが驚いて声を上げると、ライゾウは当たり前のように頷いた。


「まぁな。その代わり巫女を傷付けるようなことがあれば、それを理由に各国から袋叩きに遭うぜ?」


 この男、先ほどまでサイカをぶっ殺すと言っていたその口で、けろりとそう言った。

 つまるところライゾウは先ほどまで、【神龍国朧】にあるすべての国を敵に回していいと思って発言していたことになる。

 改めてそれを考えると本当に無茶苦茶なことであるが、とにかく次に何をするべきか、光明が見えてきそうであった。

漫画2週続けて更新されてます!

よかったらどーぞ!

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― 新着の感想 ―
更に人気が出て漫画版が1600話分まで費やすことを期待しています
とりあえずサイカ捕まえて人質にしよう。
せっかく巫女を隔離したのにその場所で殺し合い始められたら神龍もたまったもんじゃないから流石に止めたんかな? やっぱりハルカが神龍とオハナシした方が早そうだ。
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