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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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盗み聞きの理由

 刀を突きつけられたままお部屋の中に通された女中。

 そしてその代わりに外を見張りに行くタゴスとレジーナ。


「話聞いてもよく分からねぇし、外見張っとくぜ」


 タゴスの言であるが、おそらくレジーナも同様だろう。

 小難しい話はあまり聞きたくないらしい。

 一方でアルベルトが難しい顔をしながらもその場に居座っているのは、成長と言えるだろう。

 その間にイーストンが指示を出して、さりげなくエニシをカーミラの後ろに隠す。

 全身は隠れていないが、さりげなく顔や特徴は見られない程度に半身は隠れて、人見知りの少女、くらいの体を装っている。

 何せ姿を見た瞬間に、エニシが本人であると見抜く妙な侍に会ったばかりだ。

 怪しい相手を前にするときは、少しくらい警戒しておいた方がいい。


「こいつさぁ……」

「アル、ちょっと黙って」

「……ええ、私はこの宿の方に、食事の時以外部屋に寄らぬようお願いしたはずですが?」


 アルベルトが何かを言いたそうにしているのをコリンが制したところで、咳払いをして口を開いたのは行成であった。この場は基本的に行成が一番偉い、という設定になっているので極めて自然な流れだ。


「……も、申し訳ございません。私はそのようなことを伝え聞いておらず、お部屋の担当としてご挨拶を申し上げたく……」


 女中は体を震わせながらも、丁寧に頭を下げて謝罪をする。

 ありえなくはない言い訳であるから、判断が難しいところだが、そこで我慢してたアルベルトが口を開く。


「でもこいつ足音とかしなかったぞ」

「……そうでござるな。気配もほとんどなかったでござる」

「確かに、モンタナ殿が動き出したときは、何をしているのかと思ったぐらいです」


 アルベルトの言葉に、リョーガと茂木が続く。

 当たり前のようにコリンやモンタナが頷いているのを見て、気配が察知できないことが当たり前であるハルカは、黙って経過を見守った。

 余計なことを言う必要はない。


「そ、それは、足音を立てて皆様の時間をお邪魔しないように日ごろから気を付けているからです……。やましいところはございません。どうかご容赦ください……」


 額を畳にこすりつけての謝罪が続くが、気配に敏感な者たちはどうも納得いかない顔だ。彼らからすれば、いくら訓練をしているとはいえ、女中などいわば素人だ。

 普段は命のやり取りをしている冒険者や侍が一切気付かないのはあり得ない。

 そうなのかな、と少し納得しかけているのはハルカやカーミラくらいなものである。


「部屋に入ってからは普通に足音してたです」

「それはすでに皆さんに姿が見えていたからで……」

「座ってからしばらく動かないで、中の話を聞こうとしてたです」

「そ、そのようなことは決して……」

「してたです」


 モンタナの目には色づいた魔素が映る。

 人は常にある程度の魔素を纏っている者であり、壁一枚隔てていたとしても、本人が壁にすり寄るようにしていれば、見えてしまうものなのだ。

 いくら嘘を吐いても、モンタナの目は誤魔化せない。

 場が静まり返り、女中の震える音すら聞こえてきそうだ。


「…………あなたの名前は、なんていうのかしら?」

日隠ひかげと申します……」

「本当のことを教えてもらえないかしら?」


 カーミラが優しく尋ねても、日隠は震えるだけだ。

 突然質問を始めたカーミラに、周りは何事かと思う。

 ハルカなんかは一瞬、この子のことが気に入ったのかな、と思ったが、どうやらそんな風でもない。


「……あなた、何か特別な能力を持っている巫女なんじゃないかしら? だって、これだけの武芸者がいて気配を察せられないなんておかしな話だもの」


 改めてよく見てみると、すぐ後ろに隠れているエニシが、何か耳元でぽそぽそと小さく囁いていることが分かった。

 つまり今のカーミラの発言は、エニシの代弁である。


「あなたをどうしようというわけではないの。何か困っていることがあるのなら、力になれるわ」


 カーミラがにこりと穏やかに微笑むと、部屋の中に妙な雰囲気が漂い始める。

 それと同時にモンタナの尻尾が左右にぶん、と一往復した。


「安心してお話がしたいの。どうして盗み聞きをしようとしたかだけでも、聞かせてもらえないかしら……?」

「申し訳、ございません……」

「いいのよ、あなただって悪いことをしたいわけじゃないはず。きっと本意ではないものね?」


 ゆらり、と上がった日隠の頬は、少しばかり上気しているようでもあった。

 時間は夕暮れ。

 そろそろ太陽が沈む時間であり、部屋は随分と暗くなり始めていた。

 どうやら、カーミラが吸血鬼としての力を発揮したようである。

 

彩華さいか様に、女中として宿の客人の情報を得るよう命じられております」


 日隠の瞼には涙がたまっており、今にも零れ落ちそうだ。

 女中として、ということは本来別の身分であることが分かるが、今のところまだ話は見えてこない。


「そう、仕方のないことだったのね? 断ることはできなかったのかしら……?」

「申し訳ございません」


 日隠がまた深く深く頭を下げた。


「……どうしてかしら? やはり、サイカ様が巫女総代だから?」

「それもございます……」

「……他にも何かあるの?」

「幼い頃より世話になった方々が、捕らえられております」

「それは何という方?」

水穂みずほ様……、穂香ほのか様をはじめとした方々でございます……」


 膝立ちをして耳打ちを繰り返していたエニシが、すとんと腰を下ろし、小さな声で呟く。


「そうか……、生きておったか……!」

拙作の『転生爺のいんちき帝王学』という作品が、書籍化されるようです。

なろうにもございますので良かったらどうぞ!

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― 新着の感想 ―
ハルおじ普段から風魔法を常時使用して気配察知の訓練した方がいいのかな……でも気づかないのもハルおじだしなぁ……。
カーミラがちゃんと皆のことを仲間として信頼して吸血鬼の力を使っても大丈夫って思えてるのが分かるの凄く尊い
こっちがなろうだよぉーw 作者含めて皆カワイイ(ノ≧▽≦)ノ
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