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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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精一杯場を整える

「何か、その……、誤解をされているようなので申し上げますと……。私は争いを止めたかっただけで、代わりに私と戦ってほしいとお願いしているわけではないのですが……」

「それは通らぬ道理だ。奴らをぶちのめさぬのならば、我らの名誉はどう守ればよいのだ。止めたのならば責任を取ってもらわねば」


 眉間に皺を寄せている侍も、なぜだか楽しげに口角を上げている。

 さっきまでぶちぎれてライゾウに斬りかかる直前であったはずなのに、今は見たこともない能力を使う強者に興味津々といった具合だ。


「サイオン家の癖に良いこと言うじゃねぇか……!」

「分かりました、すみませんでした。もうお邪魔しませんので……」


 ハルカが障壁を消すと、両者は一瞬睨み合ったが、どちらもハルカから視線を外さなかった。

 自分たちの知らない戦い方をするハルカの方が、手ごわい敵になりそうだ、と判断したのだろう。

 つまり、もう全然互いに戦うつもりはない。


「おい、あたしがやる」


 ずいずいと、出てきたのはレジーナだ。


「いや、俺がやる」

「そんなら俺も」


 続いてアルベルトが出てきて、最後にはそういう流れなのかとタゴスまで参戦してきたところで、ハルカはもはやこのまま穏やかに終わることはできないと悟った。


「あの、代表者一人ずつで殺しはなし。遺恨なし。怪我は私が治します。この条件でどうでしょうか……!」

「治す? 治すとはどういうことでござる?」


 ライゾウと一緒にいる侍が首をかしげて問いかけて来る。


「死に至らない怪我であれば、私が元通りに治すことができます」

「おお、それは素晴らしいでござるな!」

「なんと! そのような面妖な術が……!」


 侍たちがどよめいている。

 先ほどまで殺し合いが始まりそうだったことを考えれば、随分と穏やかな空間になったものだ。


「それはどれくらい治せるのだ? 例えば……、指が落ちたら?」

「死んでいなければ治せます」

「腕ならどうなのだ! 腕なら!」

「死んでいなければ治せます」

「では心臓を刺し貫かれてはどうなのだ!?」


 ライゾウが目をキラキラさせながら問いかけて来る。

 どうして大名であるはずのこの男が一番物騒な質問を投げかけてくるのか。

 いったい〈御豪泊〉はどんな国なのか、ハルカは後でリョーガにもう少し詳しく問いただすことを決めた。


「死んでいなければ治せますけど……、死にそうな怪我はさせないでください、お願いですから」

「おおお、そりゃあすげぇ! 戦い放題じゃねぇか」


 ハルカの言葉は途中から、ライゾウの感極まった大声に遮られた。

 ハルカは、おそらく自分とこの人物の相性が悪いことを悟りつつ、話を進めることにする。


「それじゃあ……、決まりでいいですか?」

「まぁ待て待て、焦るなよ」


 さっさと終わらせてしまいたいハルカが話をすすめようとすると、ライゾウが手を前に出してそれを遮る。


「折角だ。負けた陣営は、勝った陣営にこの島にいる間はけちをつけねぇ。できる範囲でもてなす、ってのはどうだ? これくらいなら臆病者なサイオン家でも受けられるだろう?」

「この野卑な田舎侍が……、何でも賭け事にして恥ずかしく思わんのか」

「そりゃあ負けるのが怖くて受けられません、って意味か?」

「……吠え面をかかせてくれる。我らサイオン家四十八名、心行くまで歓待してもらおうではないか……!」


 ハルカはもはや、勝手に進められる話を黙って見守っていた。

 最初の頃よりは随分と穏やかな展開になったと思えば、頑張った甲斐はあるのではないかと、そんなことを考えながらやや現実逃避中である。


「よし、それでは決まりだ! 一番強い奴同士で決着。こりゃあ遺恨も何も残らねぇよなぁ?」

「ふっ、今のうちに大口をたたいておくといい……」


 ずい、っと前に出てきたのはライゾウ。

 それに挑発されるように静かにすり足で前に出たのが、怖い顔をした侍。


「ええと……、誰が出ます……?」

「あたしがでる」


 ずいっとレジーナが前に出たところで、ライゾウが布が詰まった棒の穂先をびしり突き付けて睨みつける。


「俺は一番強い奴同士で決着、って言ったぜ?」


 ジワリと空気が重たくなった。

 ライゾウとレジーナはしばし睨み合う。

 半端な実力しかない者ならば、それだけで押しつぶされそうなプレッシャーであったが、レジーナもその場を引こうとしない。


「お前が一番強いんだな?」


 ライゾウからの最終確認が入ったところで、レジーナは舌打ちを一つして振り返る。

 今や仲間という群れの中で生きているレジーナは、その中で一番強いのが自分でないという自覚がある。その気持ちに嘘がつけなかった。


「ハルカ」

「あ、はい」

「殺せ」

「いえ、それはちょっと……」


 大きなため息を吐きながら戻ってきたレジーナは、ハルカの後ろに回ると、その背中をぐいぐい押して、最前線まで追いやった。

 またもレジーナの鬱憤を晴らせる機会がなくなってしまった。

 この調子では、どこかで戦闘になった時に大暴れになりそうだと、ハルカはレジーナとは対照的に、小さなため息を吐く。


 この戦いは必ず勝たなければならない。

 なにせ、負けると計画に支障が出るかもしれないし、〈北禅国〉にも迷惑がかかる。


「お前、強いだろ。俺にはわかるぜ」

「どうでしょう……」


 ライゾウから声をかけられて、ハルカは曖昧に返事をする。

 ハルカは別に隠すつもりも、強者ムーブをするつもりもない。

 ただ単純に、強いって何なんだろうなぁと自分の中で定まっていないだけである。

 強いには強いけど、何と言うか、という、いつもの曖昧でどっちつかずの精神状態だ。これに関しては特別悩んでいても困ることもないので、なんとなく放置し続けている。


 とにかく戦う者は決まった。

 三つ巴で戦うということで、それぞれ三角形の頂点になるよう位置についたところで、特に始まりの合図もなく戦いが始まろうとしていた。

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― 新着の感想 ―
もう閉じ込めてしまえばいいのでは…?(笑)
レジーナの嘘ついて御主人より強いなんて言うのはなんか違う! 御主人!やっちゃってくださいよ!!ってワンコが見える
いけっハルカ!(最強の水ポ○モン ※なお水以外の他属性攻撃も防御も最強な模様) 血生臭過ぎるジムリーダーバトルだぁ…
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