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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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奇妙な集団のお散歩

 船を降りるとぞろぞろと団体行動が始まる。

 宿を探しに繁華街へ向かうのは行成率いる〈北禅国〉の面々。

 港をプラプラとしながら島の中心の方を眺めているのが、ハルカ率いる【竜の庭】の面々である。


「いやぁ……、それにしても立派なものですよね」


 こうして船から降りてみると、改めて〈神龍島〉の規模の大きさには驚かされる。

 あの山々の建物すべてを取り仕切っていたのがエニシだというのであれば、そりゃあ少しくらい偉そうにしていたって納得できるというものだ。

 ちなみに島に来てからは、エニシの名前を呼ぶときは『エイダ』と呼ぶことになっている。

 エニシがリョーガと初めて出会った時に咄嗟に使った偽名である。

 まぁ、本気で相手が正体を看破しに来た場合、名前を誤魔化したところで意味などないので、偽名にそこまでこだわる必要はない。


「うむ……。【神龍国朧】の歴史は長い。かつてあの御殿を作ったのは、ある国に属する、圧倒的な技術を持った職人集団であった。国が戦で負けて、今やその技術も失われてしまったのだが……」

「勿体ないことね……」


 エニシの言葉に、日傘を差したカーミラがため息を吐く。

 育ちがいいため、山の御殿の芸術的なまでの美しさを感じて、思わず言葉が漏れてしまったのだろう。


「この国にはよくあることでござる。数百年前にできたことが今ではできぬ。そうやって進んだかと思えば下がりながら、ずっと戦を続けている国なのでござるよ」


 半ば自嘲するように笑いながらリョーガが補足する。

 思えば大陸だって、発展した技術の多くを千年前の戦争によって失っているのだ。

 きっと【神龍国朧】はその失伝を、これまでも細かく、そして数多く繰り返してきたのだろう。

 まるで賽の河原の石積みである。


「それにしても……、これだけ広いと内部の調査は大変でしょうね」

「うむ……。連れてこられたばかりの巫女が、逃げ出して迷って、数日見つからない、なんてこともままある。だからこそ、前に述べた巫女の協力が欲しいのだ」


 内部を見通せる目を持った巫女。

 仲間にできれば随分と頼もしいことだろう。


 怪しまれないように、歩き続け、そしていつも通りハルカが露店で買い食い。

 この街の良いところは新鮮な魚や貝が、串焼きにされて売っているところだ。

 数本の串を抱えて、ハルカは散歩を続ける。

 当然本人は真剣に調査をしているつもりだが、美味しいものを食べて頬が緩むのは仕方のないことだ。

 仲間たちも余計なことを言うと、数少ないハルカの楽しみを奪いかねないので、気付いても余計なことは言わない。

 というか、みんなして結構呑気に串焼きをほおばりながら散歩を続けている。


 今すぐ乗り込むわけではないのだから、これくらい肩の力が抜けているくらいでちょうどいい。

 ただでさえ、〈神龍島〉ではほとんど見られない、ダークエルフのハルカや、獣人のモンタナがいる上、【神龍国朧】では変わった服装に変わった目鼻立ちをした集団なのだ。

 注目を集めざるを得ないそんな奴らが、あまり険しい表情をしていても怪しまれるばかりである。


 しばらくそうしてうろついていると、ひそひそと噂をされるようになってくる。

 どこからきて、どこに所属しているかもわからない珍しい集団が練り歩いているのだから、当然そうなる。


「そろそろ喧嘩吹っ掛けられそうだな」

「言葉にすると現実になるのでやめませんか?」


 アルベルトがわざわざハルカの隣までやってきて、楽しそうに報告してくれる。

 実際、ハルカたちのことが気になるのかつけてきている集団もいれば、遠くから様子を窺っている者たちもいる。

 かなり不穏な雰囲気だ。


「でも本当にピリピリしてきてるです」


 同じく横に並んだモンタナがさりげなく付け足す。

 アルベルトの直感が間違っていない保証がされてしまった。

 既にレジーナは、〈アラスネ〉で肩をポンポンと叩きながら、やや前かがみでぎろりぎろりと周囲を睨みつけている。この辺りの行動は、自己防衛という面で間違っていない。

 ちなみにタゴスもほぼ同じような行動をしている。

 ソロで高位冒険者までたどり着いている二人が同じことをしているということはすなわち、この威嚇行為が経験的にかなり正しい行動であることを示している。

 あまりお行儀が良いとは言えないが、『やるならやってやるぞ』という姿勢が、争いを遠ざけることもハルカは学んできたので、下手に注意する気にもならなかった。


「ふむ……、いっそひとけのない方へ進んでみるでござるか?」

「それは……、積極的に喧嘩を買う、という意味ですか?」


 問い返すとリョーガは、軽く笑って伸びてきた無精ひげをじょりじょりと指先で擦る。


「人が少ない場所へ行って仕掛けてくるような者は、いつか仕掛けてくるでござるよ。気にしながら歩くよりは、さっさと問題を解決した方がすっきりするでござろう?」

「うーん、ずっと行動を見張られてるのも面倒だし、ありかもね」

「……そうですね。できるだけ、殺し合いにならない範囲で済ませるようにしましょう」


 仲間たちの提案に覚悟を決めたハルカ。

 その言葉にリョーガはまた「ははっ」と笑った。


「いかに喧嘩っ早い侍でも、流石に〈神龍島〉では早々に殺し合いなどしないでござるよ。ハルカ殿も頼もしくなったでござるなぁ」

「あ、その……、はい、そうですよね」


 なんだかんだしっかりと気合いをいれてきたハルカの覚悟が、ちょっとだけから回った瞬間であった。


ちょっと昨日、途中でこの後書きを付け足したので、しつこいようですが本日も。


3/6発売の小説、コミカライズ新刊の特典情報とかが出ているので、良かったら著者X等ご参照くださいませ。


あと『私の心はおじさんである』のグッズが出るようです。

その関係のクラファンとかのお知らせもしておりますので良かったら……!

アクスタとかあったり、シャツとかジャージとかもあるみたいです。


ハルカさんの正装姿のイラストも見られますので、それだけでもぜひ。

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― 新着の感想 ―
うんうん、頼もしくなったねえー!wあはは
串焼きの集団怪しいはずも無く……
観光に喧嘩はつきものですからね!
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