必死の説明
「お前、あちこちの国の問題に首突っ込んでんだろ」
「ええと、はい、流れでそういうことがありますね」
「多少はいいけど、本格的に戦争に加担したりしない方が良いぞ。相手方も力がある場合は、特級冒険者同士のめんどくせぇ戦いになる」
クダンはハルカに忠告をしに来たようだった。
真面目な顔で頷くハルカに、クダンはさらに続ける。
「お前が直接戦えるならいいけどな、お前がいない戦場で他の特級が暴れりゃ人がたくさん死ぬ。戦う場を逸らされ続けりゃ互いに消耗戦になって数万人が死ぬぞ。兵士も、街の奴も関係ねぇ。お前が兵士しか狙わなくても、相手もそうするとは限らねぇからな」
「……はい」
「もしやるなら、徹底的にやれ。できるだけ早く終わらせろ。つっても、あちこちで国滅ぼされても治安に困る。特にでかい国とか滅ぼすなよ」
当たり前のようにハルカが国を滅ぼすことができる前提で話が進んでいる。
クダン自身もそれができるからこその発言である。
「お前は大丈夫だと思うけどな、たまにいるんだよ。でかい国乗っ取って、自分が自由にできる国作ってやろうって馬鹿が。俺はたまにそういうやつの後始末させられることがあってめんどくせぇんだ。お前みたいなわけわからねぇのと殺し合いしたくねぇからやめろよな」
「はい! …………あの、いえ、はい、もちろん」
ハルカは表情を凍り付かせたまま何度か頷きながら、内心ではまずいかもしれないと肝を冷やしていた。
現段階で国を持っており、次は【神龍国朧】の国政に関与する可能性もある。
ちょうどこの間【ディセント王国】の内乱解決に手を貸したばかりで、その前には〈北禅国〉の奪還に力を貸している。
何か企んでいるぞと訴えられたりしたら、既に疑われるに十分な結果を残してしまっているのだ。
「あやしい」
横から口を挟んだのはユエルで、目の前にいるクダンもハルカの反応を見て、何かを隠していることは当然察している。
「お前さぁ……」
呆れたようにため息をついて、クダンはその場にどっかりとあぐらをかいて座り込んだ。じっくりと事情聴取の態勢である。
即座に戦いにならない程度には、人柄を信頼してもらっていることが、ハルカにとっては幸運であった。これまで何度か関係を持ってきたことが、ここにきて幸いしたのだろう。
「あっ、別に隠しているつもりはなく、全然あの、ええと、色々と事情がありまして……」
「落ち着いて喋れよ、別に急に斬りかかったりしねぇから」
「すみません、ちょっと話すことをまとめさせてください……」
言うべきことは様々あるが、誤魔化しがきく相手ではない。
正しく、誤解されぬように話さねばと、ハルカは頭をフル回転させていた。
気が短そうに見えるクダンは、案外何も言わずにそんなハルカを見守っている。
「ええと……、まず何から話すべきでしょうか……。基本的に、他国を乗っ取ったりするつもりはありません。あの、昔ちょっとユーリが……、この子が【グロッサ帝国】に狙われていたことがありまして……。あ、ええと……、ソラウさんの異母弟だったもので……。その関係でお話をしに行ったことはあるのですが、特に死傷者などが出ることはなく、話し合いで問題は解決しています」
いざとなれば【グロッサ帝国】の都を滅ぼすと宣言したあたり、かなり危ういラインだ。でも何も起こっていないので素直に報告。
「なんかいきなりよく知らねぇ話出したな、こいつ」
「あ、すみません。あと他には……、リーサ……、エリザヴェータ陛下とは仲良くしていますが、特別乗っ取りとかは考えていません」
「ノクトの弟子だろ、そりゃそうだろ」
「あとはですね……、あの、昨年ちょっと【ロギュルカニス】の方へ出かけまして、色々とあったんですが、こちらも別に悪気はなくてですね……。攫われて無理やり働かせられていた小人とドワーフが無事であることを伝えに行ったら、たまたま面倒ごとに巻き込まれただけなんです」
「あいつらが前と比べて妙にいろいろ経験つんでると思ったが……、楽しそうだな、お前ら」
クダンは呆れたように相槌を打った。
これらの経験を楽しそうと言えるのは、クダンが生粋の冒険者だからだろう。
「今のところ大丈夫ですか……?」
「まだあるのかよ。まぁ、いいんじゃねぇの、知らねぇけど。続けろよ」
「はい、あのー、ここからちょっと北に行ったところにある海沿いに、村を一つ作っています。【ロギュルカニス】の件で仲間になってくれたドワーフと小人たちを中心に船を作ってまして、他にも漁師の方々が住んでいたりします」
「へー、面白そうだな」
クダンの反応から、村を作るのはセーフらしいと判断。
そこから続けて本題に入る。
「あの、〈混沌領〉の方なんですが……、クダンさんもここから東にリザードマンの集落があるのはご存じですよね?」
「お、会ったのか。俺のこと覚えてる奴もいるのか?」
「はい、お話として伝わっているようでした。色々あって手合わせすることになりましてですね……、話しの流れで彼らの王様にされてしまいまして……」
「あー……、あいつらってそういうところあるよな」
「そうですよね、そうなんです」
昔旅をしたことがあるクダンが納得してくれたことで、ハルカはほっとして何度も頷く。
「そういうところってなに?」
ユエルは話が見えてこないようで、仲間はずれにされるのが嫌なのか、わざわざ質問を投げかけてくる。逆にいえば、ここまでの話はなんとなく理解しているということなのかもしれない。
「あ、ええと、リザードマンたちは、戦いに強いものを尊重する傾向がありまして……」
話を穏便に終わらせたいハルカは、クダンを少しばかり待たせつつ、とりあえずユエルに話の詳細を語って聞かせてやることにするのだった。





