表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1530/1628

アルベルトの戦い方

 二人の戦いは、一方的にアルベルトが攻撃し、プエルがむーむー言いながらひたすらそれを防御するという形になっている。

 レジーナとアルベルトは比較的よく似た戦い方をすると思っていたハルカからすると、どのような要素がこんな違いを見せているのかが分からない。


「剣の方が受け流しにくい……?」


 ハルカが首をかしげながら呟くと、テロドスが「いや……」と答えながら、食い入るように二人の手合せを見つめている。この状況は、テロドスから見ても意外な展開であった。


「普通は剣の方が受け流しやすいものなのだ。金棒は面の攻撃、剣は点の攻撃になりがちである。プエルの腕ならば、容易に受け流せると思っていたのだが……」


 テロドスはプエルの性格はともかくとして、その戦闘技術は非常に高く評価している。攻撃に移る時に隙ができる点はまだまだ改善の余地があるのだが、通常の攻撃でプエルが受け流せない攻撃があるとは思ってもいなかったのだ。

 それだけに今の状況が信じられずにいる。


「何か特別なことをしているのでしょうか」

「してねぇよ」

「そですね」


 いつも一緒に訓練をしているレジーナやモンタナにはわかるらしい。

 ハルカから見ても、アルベルトはいつもと変わらないように見えていたが、やはりその通りのようだ。


「じゃあなぜ?」

「……アルの攻撃は、芯をとらえるですよ。よっぽど慣れてないと、受け流せないです。逆にアルの攻撃に慣れてると、大抵の攻撃は簡単に受け流せるようになるです」


 今一つぴんと来ないハルカに、レジーナがさらに続ける。


「あいつ素振りばっかりしてるだろ。ぶれねぇんだよ。まともに受けようとすると、重いし、受け流すのもムズイ。だからできるだけ避けて乱戦に持ち込むようにしてんだよ」

「なる……ほど?」


 やはりハルカにはぴんと来ないが、モンタナもレジーナも、なぜアルベルトが優勢なのかちゃんとわかっているようだ。


「……剣、体、そして身体強化の一致。自分の体を思いのままに操っている。無理をすれば崩れるのだろうが、普通に戦っている限り、芯をとらえ続けられる。あの若さで、熟練の武芸者が達する領域だ。よほど毎日を訓練に費やして生きているのだろう」

「芯をとらえるというのは……?」

「ああ、ハルカ殿は魔法使いであったな。芯をとらえるというのは、そうだな……、衝撃の点を力の中心点に強制的に変えることができる……、つまりアルベルト殿の攻撃は、全て最も効率のいい形で相手に伝わる、と言えば伝わるだろうか」


 つまり、全てが会心の一撃、ということだろうか、とハルカはゲームっぽい感覚で理解し始める。それってもしかしてかなりすごいことなのではないだろうか、と思いつつ改めてアルベルトを見てみる。


 言われてみればアルベルトの攻撃は、プエルの鎧や盾を滑っていない。

 それでいて、いや、それだからこそ継ぎ目なく、プエルが攻撃に移る隙を与えることなく動き続けることができる。

 相変わらずプエルは「むっ、むー!」と妙な悲鳴なのか気合いなのかわからぬ声を上げながら、ひたすら攻撃をしのいでいるような状況だった。


「もしかしてアルって、かなり強いですか?」

「何言ってんだお前」

「そですね」

「どう見ても強者だ」


 分かってはいたが、特級冒険者にも匹敵すると言われている神殿騎士相手に、これだけ有利に戦えるとは思っていなかったハルカである。

 いつも手合わせで今一つモンタナやレジーナに勝ち越せず、悔しがりながら欠かさず一人での訓練を続けているアルベルトを見ているせいで、完全に勘違いをしていたのだ。


 アルベルトは強い。

 基礎訓練を欠かさず、身体強化の訓練も欠かさず、自分より強かったり、相性が悪かったり、対処法を完全に理解している相手に、まっすぐにぶつかっていい勝負をしているアルベルトが、弱いわけがなかった。


 プエルはかなり長い時間鳴き声を発しながら防御に徹していたが、最終的に真正面からの突きを食らって仰向けにぶっ倒れる。

 そこへアルベルトが大上段から剣を振り下ろし、ピタリと止めたところでどちらも動かなくなった。


「俺の勝ちだろ」

「むむむ……、降参、です」


 ハルカが「おおー!」と声を上げながら拍手をし、コリンも「アルの勝ちー!」とすぐ近くで喜んでいる。


 実はしっかりと見守っていたデクトやフラッド、それにレオンとテオドラもハルカに合わせて拍手喝采した。


「アルベルトってこんな強かったのか……」

「ホント、びっくりするね……」

「いや、マジで強くなりすぎだろ。背だけ伸びてるわけじゃねぇんだなぁ……」


 双子が感心していると、フラッドもそれに混ざってため息を吐いた。

 〈オラクル教〉がこんな集団と争うことにならなくてよかったと、改めて安堵のため息である。


「強くなればなるほど、相性って大事です」


 モンタナが拍手をしているハルカに話しかける。

 ハルカは圧倒的な力でごり押しするのであまり関係ないのだが、本来の戦いはこういうものなのだと、丁寧に説明をしてくれているのだ。


「相性、ですか」

「そです。この結果が出たから、アルの方がレジーナより強いわけじゃないです。戦えば相性は五分くらいでも、レジーナの方が勝つこと多いです」

「難しいですね、戦いって」

「そです。だから色んな相手と戦うのって大事です」

「なるほど」

「だから僕の番です」

「え? あ、やらないのでは?」

「やるです。勝つです。プエルさんに治癒魔法するですよ」


 どうやらアルベルトの戦いを見て火がついてしまったらしい。

 モンタナはハルカの手を引いてプエルの下へと向かうのであった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アルがこうして強い姿をしっかり書いてくれてありがとう、ありがとう、(後方腕組み)
最後のモンタナ、アルベルトが勝って自分が戦わなかったらなんか逃げてるように見えて、「それはちょっと面白くないです。ぢゃんと見せつけてやるです」と思ってそう。
アルは強い、レジーナは巧いってことかな。 しかしモン君…w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ