第52話 お泊り会編⑫ 全てを決める電話
謝罪とお知らせ
第50話の部分に間違えて第51話の文章を投稿してしまいました。申し訳ありません。お手数ですが、もう一度第50話の部分を開いていただけると幸いです。
そしてお知らせです。なんとサブタイトルをつけることにしました。読者さん達の要望が多かったのでそれに応えさせていただきました。
「結果には納得いかないけど、枕投げ楽しかったよん!」
「ねえねえ、次は何する? ねえ何する?」
リョウコは動けないほどヘトヘトになっていたはずだが、ウキウキと部屋の中をスキップしている。驚異の回復力だ。
「さっきまで眠いって言ってたじゃない。もう大丈夫なの?」
「枕投げをしたら眠気と疲れたがふっ飛んだよ。やっぱり体を動かすと気持ちが良いね!」
「やっぱりリョウコは体力バカね……」
「それだけが僕の取り柄だからね!」
リョウコは腰に手を当て、得意気な顔をしている。
「えばって言うことじゃないから」
「早く次の遊びしよう! もっと夜をエンジョイしようよ!」
「遊びって言っても何をするのよ? ゲームとかはもう一通りやったでしょ?」
「うーん、確かに……何か楽しいこと無いかなぁ?」
「あるよん! とっても楽しいこと!」
「お! なになに〜?」
「ちょっと待っててね」
レイナは自室を飛び出すとドタドタと台所の方へ走っていった。
「おまたせ〜!」
戻ってきたレイナの右手にはパンパンになったビニール袋がぶら下がっている。その中から彼女はたくさんの瓶や缶を取り出した。
「お泊り会と言ったらこれ! 飲酒大会でーす!」
「お、いいねえ!」
リョウコは待ってましたと言わんばかりに盛大な拍手を送っている。
「全然、良くないわよ! これは没収よ!」
ユリは目にも留まらぬ速度でレイナの腕から酒を奪い取った。
「今の動き、僕よりも速い……」
「ちょっとユリ、返してよん! これから皆で飲酒大会するんだからさ!」
「未成年の飲酒は駄目よ、絶対に! 脳が成長している時期にお酒を飲むと、脳の神経細胞を破壊し、脳萎縮を早くもたらす危険があるのよ。更に最終的に死の危険もあるアルコール依存症は、飲酒開始年齢が若いほど短期間で発症するケースが多いとさてれいるの。特に二十歳までは、飲酒に対する自己規制がきかなくなりやすく、その危険性が高まるわ」
ユリは早口で未成年飲酒の危険性について熱弁する。
「つまり、未成年の飲酒は物凄いリスクがあるのよ! わかったかしら?」
「ごめん、全然聞き取れなかったよん」
「僕も何言ってるのかさっぱり」
「あー、もう!」
ユリは苛立ちのあまり頭を掻きむしる。
「いい? 耳の穴かっぽじって聞きなさい!」
レイナとリョウコはその言葉通りに、自分の両耳を人差し指でほじくった。
「未成年、酒飲む、死ぬ! Underage, Drinking, dying! Can you understand?」
「とりあえず、酒飲むなって言いたいのはわかった」
「ユリだってスプセミの時に飲んでたじゃん。たまには羽目を外すことも大事だよん!」
「あの時はウノに負けたから仕方なく従ったけど、今回は駄目よ!」
「じゃあ今回も勝負しよう! 僕かレイナが勝ったら飲む、ユリが勝ったら飲まない」
「勝負ならさっきやったでしょ、枕投げ。その勝者は私なんだから大人しく私に従いなさい!」
「ぐぬぬ……」
リョウコは苦虫を噛み潰したような顔で、悔しそうな声を漏らす。
「じゃあさ、チカに聞いてみようよん!」
「どうしてここでチカ出てくるのよ!」
「枕投げの勝負はユリの勝ち、多数決は私とリョウコの勝ちで一対一だからチカに決着をつけてもらうんだ!」
「それ名案だね! 早速チカに電話しよう!」
リョウコは自分の携帯電話を取り出すと、チカの電話番号を入力した。
「ちょっと勝手に話を進めないで! 私はまだ了承してないわよ!」
「お、繋がった! もしもし〜?」
リョウコは携帯電話のスピーカーボタンを押し、他の二人にも電話の声が聞こえるようにした。
「もしもし、リョウコちゃん」
「よっすチカ。今、ユリとレイナとお泊り会してるんだ! すごい楽しいよ! チカはゴールデンウィーク楽しめてる?」
「はい、とってもエンジョイしてます! 久しぶりの地元なので興奮しちゃって、一日中野山を駆けずり回っていました!」
「意外とアクティブなんだね。ほら、二人も何か喋りなよ!」
「やっほーチカ!」
「お、レイナちゃんですか?」
「そうだよん! チカの声が聞けて嬉しいよ! ここ何日もチカに会えてなくて、禁断症状が出始めてたところでさ。ほら、手首がこんなに震えてる!」
レイナは冗談めかして、自分の手をブルブルと痙攣させる。
「私もレイナちゃんの声が聞けて嬉しいです! ほんの数日会えないだけでこんなにも寂しいんですね」
「早く会いたいよん!」
「明日の夜には戻りますよ。また学校で合いましょうね!」
「うん、すっごく楽しみ! ほらほら、次はユリの番!」
レイナはユリにグイグイと携帯電話を押しつける。
「ちょっと、やめなさいよ!」
「いいから、いいから」
レイナの強引さに押し切られ、ユリは携帯電話を受け取った。
「え、えーっと……」
「ユリちゃんですか?」
「そ、そうよ! 私はレイナに無理矢理電話を持たされただけで、チカの声が聞きたくてうずうずしてた訳じゃないからね! 勘違いしないでよね!」
「いつも通りのユリちゃんで安心しました。元気そうで良かったです」
「う、うるさいわね! そっちはどうなの? 元気にしてる? ちゃんとご飯は食べてるの?」
ユリはお節介な母親のようなことを言っている。
「はい、元気です。本家で出されるご飯はどれも美味しいのでモリモリ食べてますよ! 地元の友達とも再会できて、本当に幸せです!」
「そう、それなら良かったわ! ところでチカ、私達はあなたに聞きたいことがあって電話したのよ」
会話に一区切りついたところでユリは本題を切り出す。
「なんでしょう?」
「レイナがお酒をたくさん持ってるんだけど、私達でそれを飲むべきか飲まないべきかで揉めてるの。チカの考えを聞かせてちょうだい!」
「うーんと、そうですねえ……」
三人はゴクリと息を呑み、チカの言葉を待つ。
(スプセミの時は初めての学校行事で気分が舞い上がっていただけで、今ならちゃんとした判断ができるはず! チカ、あなたの誠実さを信じるわよ!)
「別に良いんじゃないでしょうか?」
「え……」
ユリは絶句して凍りついてしまった。
「しょっちゅう飲んでいたら危険かもしれませんが、少しくらいなら大丈夫なのではないでしょうか?」
「イェーイ!」
レイナとリョウコは勝ち誇ったようにハイタッチを交わす。
「チカありがとうね! 帰省、楽しんでね!」
「はい! レイナちゃん達もお泊り会楽しんでくださいね!」
「んじゃ、ばいば〜い!」
チカに別れを告げるとレイナは通話を切った。
未成年飲酒はダメゼッタイ
真似しないでくださいね




