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予想外のハッピーエンド【連載版】  作者: セライア(しおん)
番外編(いくつかの本音)
12/16

番外編2『想い届かず』

 ***(ラウル殿下視点)***


 今日、私の " 元 " 婚約者(候補)だったライラが、私以外の男と正式に婚約した。

 私の想いは届かないまま……。伝える機会も得られないまま……。



 ライラは、同じ年の従兄(いとこ)であるライルの従妹(いとこ)にあたり、私にとっては幼馴染みだった。 


 ライラとライルそれぞれの母が双子で、ライラとライルも同じ年の同じ月に生まれて同じ髪の色だから双子のようだと言われたそうだ。2人とも母親譲りの髪なのだから同じ色で当然なのだけどね。

名前まで双子っぽいのは偶然だと母親2人は揃って主張するが、2人で話して決めていたのではないか、と未だに周りから言われている。 

 いよいよ婚約者を決めるちなみに、彼らの翌月に生まれた私の名前がライルに似てるのは、彼らの母親2人と親友である王妃──私の母──が仲間に入りたかったせいらしい。



 とにかく、侯爵家の娘で歳も同じだから、元々私やライルの婚約者候補だった。可愛くて賢くて努力家で、私自身に自覚は無くとも昔から好きだった。 


 そんな彼女の態度が、ある時から余所余所(よそよそ)しくなる。最初は、いよいよ婚約者を決める年齢になってきたせいかと思った。

だが、婚約者候補の筆頭と言われるようになると、今度は冷たくなった。ライルか誰かを好きなのかと思ったが違うようだ。

 まさか、そんなに私が嫌なのか? 心当たりは無い。訳がわからない。でも、手放すのは嫌だったから、婚約者(候補)の立場を使ってでも振り向かせようとしたが、どんどん拒絶が強くなるばかり。拒絶の理由を聞こうにも、私やライルの姿を見かけるだけで逃げて行ってしまう。

 最近は彼女の従妹(いとこ)のシエラまで私の邪魔をする始末。ライラをせっかく掴まえても、シエラが現れてヒ-ローよろしく私の元からライラを連れ去って行くのだ。でも、それで安堵(あんど)の表情を浮かべるライラの様子を見ると、シエラを咎めることもできず……。

ライラと一緒に(すみ)やかに離れていくので、シエラからライラの拒絶理由を聞く機会も得られない。



 ライルがシエラから事情を聴きだすと言っていたが、交渉上手な彼にしては珍しく失敗したらしい。シエラからは妨害を止める約束は取り付けたというが、ライラからシエラにくっ付いていって離れない。女同士の会話に男が割り込むのは非常識とされているのだ、このやり方はズルい。

しかも、気のせいだと思いたいところだが、私とライルに対して2人の冷たさがアップしている。



 機会を見つけては口説きながら、ライルがシエラに再交渉。 

 だが、前ほどシエラにくっつかなくなったと思ったら、今度は他の令嬢の誰かが絶えず(そば)に居て、前以上にライラに近づけなくなった。 

 ライラもシエラも私たちに対する視線は氷点下、最低限のマナーだけは完璧。どうしてこうなった?



 とうとう、ライルがキレたようで、ほぼ力づくで令嬢とシエラをライラから引きはがした。 


 せっかく作ってくれたこの機会を逃すものかと思ったら、隣国のカイル殿下の訪問で事態が急変した。ライラは私達だけでなく他の高位貴族にも冷たかったから彼の登場にも油断していた。 


 王宮でライラを見掛けなくなり(あせ)っていたら、温室や花壇でカイル殿下と居ることが多いと言う。なぜ彼だけが……わからない。 


 ある時、なんとかライラを捕まえて話を聞くと、答えの代わりに、カイル殿下からプロポーズされて承諾(しょうだく)したと言われた。衝撃は大きかった。現実だと認めたくなくて否定材料を探すも、陛下は黙認、臣下たちは歓迎ムード、私は愕然(がくぜん)とした。 


 カイル殿下とライラんの婚約は、王子としては壊せない縁談だった。

 そこに、シエラの婚約報告まで耳に入ってきた、しかも相手はライルの弟のレイド。 

 予想外過ぎる展開の連続に、ライルともども思考が追い付かない。




 結局、母親4人の盛り上がりとカイル殿下の(すみ)やか過ぎる対応とで、私とライルは何も出来ないまま今日──ライラ&カイル殿下、シエラ&レイド、よく知る幼馴染みたちの合同婚約式──に至る。


 プロポーズを承諾したとライラから聞かされてから今日の婚約式まで、たったの3ヶ月。あまりにも迅速まその期間を、カイル殿下とライラの2人が望んだと聞いた。そして私の望みは絶たれた……。


 ライラには訳わからないまま振られるし、彼女本人からも周りからも説明は視線をそらして拒否されるし、母親たちの視線は生ぬるく、父親たちは取り(つくろ)った中に微妙な表情。

 私も、そしてライルまでもが、それぞれフラれた相手の婚約を祝福しなくてはならない状況に対して、いまだに呑み込めずにいるが欠席は許されず……2人して表情を作るのがやっとだ。


 それなのに、令嬢達やその親の視線が私やラウルをロックオンしてるのを感じる。恋だけでなく虫除(むしよ)けまで失ったのかと自嘲気味に独りごち、気を引き締める。

傷心に浸ひたることも出来ないらしいのは幸か不幸か……。これからは、自分を守ることに集中するしかなさそうだ。とはいえ、年齢的にも立場的にも、いよいよもって婚約者の決定を迫られるようになりそうで頭が痛い。



 時の流れが想いを昇華してくれると信じて……『王子として』2組の婚約者たちに祝福を。

近いうちに、王子より身近な親族としても幼馴染みとしても祝福できるようになるはずだから……。

というか、ライラの結婚式は半年後に隣国なのだ、向こうで表情を読ませないように自己制御しなくては……。



 ***(番外編2 完)***


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