チー牛、feat.(フィーチャリング)する
俺がいつも通り韻乱闘城に入り浸っていると突然メッセージが届いた。
「―――――――――――――――――――――
お疲れ様です!
韻乱闘城でお世話になっている「吐愚呂妹」です!
実は俺と「村井・ムーンライト」でcrew組んでて曲出してるんですが、今回韻乱闘城にいる仲間を誘って一緒に曲を作ろうという話をしています。
そこで是非チー牛さんにも参加していただけないかと思いましてDM送らせていただきました。
もし興味があればご参加お待ちしております!
来週末までにお返事いただけますか?
―――――――――――――――――――――」
曲を作るって、実際に歌うって事だよな?
ムリムリムリムリ
カラオケすら行った事が無い俺にそんな事出来るはずが無かろう。
吐愚呂妹さんも村井・ムーンライトさんも韻乱闘城の常連でかなりの実力者だ。
この二人が『crew=グループ』を組んでいたとは驚きだ。この二人のcrewならかなりのクオリティの曲が出来ているんだろう。
村井・ムーンライトさんは正式には「村井・ムーンライト・朋・ルルナちゃん」さん、らしいが誰もその名前で呼んでいないどころか、たまに略し過ぎて「村井さん」と直球の個人情報で呼ぶ人もいる。
ちなみに吐愚呂妹さんも村井・ムーンライトさんもどちらもゴリゴリの男らしい。
この実力者二人からのお誘いとなると是非参加してみたいと思うが、自分がちゃんとラップ出来るのか不安しかない。
しかし、どうしよう……
他に誰が参加しているのだろうか?
師匠は参加するのだろうか?
俺は吐愚呂妹さんに返信をした。
「―――――――――――――――――――――
誘ってくれてありがとうございます。
参加者は誰がいるんですか?
アイジェンさんは参加されてますか?
―――――――――――――――――――――」
もし師匠がいれば参加してみようと思う。
すぐにメッセージが届いた。
「―――――――――――――――――――――
参加者は今のところ俺と村井と「ほうじT」さんですよ。
アイジェンさんにはかれこれ1年くらい誘ってるんですがずーっと断られてますww
いつか一緒にやってみたいですけどねー!
―――――――――――――――――――――」
なるほど。アイジェン師匠は参加しないのか。というか師匠は既に何度も誘いを受けていたのか。
流石は師匠!俺なんて1回誘われた程度でソワソワしてました!
とりあえず師匠に報告しておこう。
「―――――――――――――――――――――
「師匠、お疲れ様です!」
「おつかれー。どうした?」
「さっき吐愚呂妹さんから曲に参加しないかとお誘いされました!師匠も誘われてたんですね?」
「あぁ、そうだよ」
「師匠はどうして参加されないんですか?」
「俺は……まぁ、色々あるからな」
(そうか、おそらく師匠はヤ○ザなので人前に出れないのか。きっと俺の知らないそちらの世界のルールがあってカタギの人と曲を作ったらいけないのかもしれない)
「チー牛はどうするの?出るの?」
「はっ!自分は出たいのはやまやまですが、ラップした事がないですし、そもそもまともにラップを聴いた事がないです!師匠が出ないと言うのであれば自分も出ないです!」
「せっかくスキルも上がったのに勿体ねーじゃん」
「いやぁ、まぁ……実力を試してみたいところはありますが、自分なんかに出来るのかなって……」
「なら教えてやるよ!」
「教……える……ですか?」
(どういう意味だ?どうやって教えるんだ?)
「教えてやるよ。週末暇?カラオケ行くぞ」
(し、師匠と直接会うだって?!俺は会った後に拉致られてマグロ漁船に乗せられたり、あの噂のタコ部屋ぶち込まれて帰って来れなかったりするのではないだろうか?それとも臓器売買か?と、とにかくとても五体満足で帰れる気がしない。テキトーな言い訳をつけて師匠と会うのだけはどうにか回避しないと……)
「いやぁ、その日はバイトがぁ……」
「あ?」
「あっ!ちょうどバイト休みでした」
「おぅ、こいよ?」
「ウィッス」
―――――――――――――――――――――」
アイジェン師匠の圧い……もとい熱いお誘いを受けたので土曜日はカラオケに行く事になってしまった。
ヤクザは何を歌うんだ?演歌か?俺は何も知らないぞ?そもそもカラオケ自体も行った事がない。どうしよう?
とりあえずエロ動画を見て落ち着く事にした。
……ふぅ…………で?
動画アプリで検索したところ入店の方法を説明している人がいた。ほーーん、やるやん。
俺はその動画を見て予習しておくことにした。
それと俺は土曜に備えて銀行から3万円を下ろした。いざという時にこの金で許してもらうためだ。俺の命は高く見積もっても3万くらいだろうからこれで十分だろう。
魔の土曜となった。
俺は師匠に指定された駅前にいる。
師匠から指定された時間は11時だったが俺は指定時間より30分早く到着したのだ。もし先に師匠らしき人を発見して「これあかんやつや」となった時に逃げられるよう、先手をうつのだ。
俺は駅前で周囲の様子をうかがっていた。
ポケットにいれたスマホが震えた。
スマホの画面を確認するもDuxiからメッセージが届いた。
メッセージを開くと師匠からだった。
「―――――――――――――――――――――
「ちゃっす!早く着きそうだから待っとくわ。チー牛着いたら連絡くれ」
「あ、自分もう着いたので駅前います」
―――――――――――――――――――――」
俺のレスを最後に師匠からの連絡は途絶えた。
駅前を待ち合わせしたくらいだから電車で来るって事だよな?俺は駅の改札口の方を覗き込んだ。
たくさんの人が出入りする改札口でヤ○ザっぽい風貌の男を探す。
はっ!待てよ?
師匠はあれだけのボキャブラリーを持っているんだ。口より先に手が出そうなチンピラみたいな格好をしているだろうか?
インテリヤ○ザという言葉があるくらいだ。スーツを着ている可能性もある!クソッ!すでに何人スーツの男が通り過ぎただろうか?いや、そもそも師匠の年齢に近いスーツの男はいたか?
あれ?そもそも師匠っていくつだ??
俺はDuxiを開いて師匠のプロフィールのページを開いて確認した。
「それ、ワタシのプロフじゃん!てことはアンタがチー牛?」
後ろから聞き慣れない声で聞き慣れた名前を呼ばれた。




