↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/33

第十三試合 福招く槌と天を裂く扇

作品は完結させております。

安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。


たくさんのブックマーク、評価、コメント。

また誤字・脱字報告も全て受け付けしております。


よろしくお願いします。それではどうぞ!


第十二試合。


最強の盾、イージスが勝利を収めた。


その余韻が残る闘技場へ、再び実況の声が響き渡る。


『さあ! まだまだ第一回戦は終わりません!』


観客席から歓声が上がる。


『続いては第一回戦、第十三試合!!』


観客たちが身を乗り出す。


『ここで登場するのは――』


実況が一度、言葉を溜める。


『これまでの試合とは、まったく毛色の違う二振り!!』


左右の入場口が開く。


そこから二人の人影が姿を現した。


一人は、恰幅のいい大柄な男。


丸みを帯びた身体。


朗らかな笑み。


そして頭には、どこか福の神を思わせる雰囲気が漂っている。


もう一人は――。


長い黒髪。


艶やかな赤い衣装。


細身の身体を包む妖艶な雰囲気。


その手には、まだ何も握られていない。


二人が中央へ歩み寄る。


『まずは、こちら!!』


恰幅のいい男が宝珠へ手を伸ばす。


『日本に伝わる、福を呼ぶ打ち出の小槌!!』


光が弾けた。


男の手に現れたのは――。


小さな槌。


誰もが知る、昔話のような姿。


しかし。


それがただの小槌ではないことを、この大会の観客は知っている。


『振れば振るほど、様々なものを生み出すとされる伝説の宝具!!』


打出の小槌は小槌を肩に担いだ。


「へへっ」


『果たして、この戦場で何を打ち出すのか!?』


観客席から笑い声が起こる。


続いて――。


妖艶な女性が宝珠へ手を伸ばした。


『そして対するはこちら!!』


光が弾ける。


女性の手に現れたのは、巨大な扇。


芭蕉の葉を思わせる大きな扇だった。


『中国の伝承、そして西遊記にも登場する伝説の宝扇!!』


芭蕉扇が優雅に扇を開く。


『その名は――芭蕉扇!!』


観客席からどよめきが起こる。


『かつて牛魔王の妻、鉄扇公主が持っていたとされる神秘の扇!!』


芭蕉扇が扇を口元へ添える。


「ふふっ……」


『ひと振りで凄まじい風を巻き起こし、炎を消し去り、逆に火勢を操ることすらできるとされる異能の宝具!!』


芭蕉扇が扇をゆっくりと振る。


――バサァッ。


風が吹き抜けた。


打出の小槌の衣服が大きく揺れる。


「おお……」


『小さな小槌と巨大な扇!!』


実況が叫ぶ。


『果たして勝つのは、福を生み出す小槌か!?』


『それとも天地を揺るがす風を起こす芭蕉扇か!?』


観客席が沸き上がる。


『第一回戦、第十三試合――異色武器対決!!』


打出の小槌が小槌を構える。


芭蕉扇が扇を広げる。


『両者、構えて――』


一瞬の静寂。


『試合――開始!!』


直後。


「――ふっ!」


芭蕉扇が扇を振った。


――ゴォォォォォッ!!


猛烈な風が闘技場を駆け抜ける。


「うおおおおっ!?」


打出の小槌の身体が吹き飛びそうになる。


必死に足を踏ん張る。


芭蕉扇は余裕の笑みを浮かべる。


「まだまだよ」


再び扇を振る。


――ゴォン!!


今度は先ほどとは比べ物にならない突風。


打出の小槌の身体が地面から浮き上がる。


「ぬおおおおおっ!?」


そのまま数メートル吹き飛ばされる。


ドスンッ!


地面へ落下。


観客席から笑い声と歓声が起こる。


「痛ぇ……」


打出の小槌は頭を掻きながら立ち上がった。


芭蕉扇は余裕の笑みを浮かべる。


「降参したら?」


「いやいや」


打出の小槌は小槌を握り直す。


「まだ始まったばっかりだろ?」


「そう……」


芭蕉扇が扇を構える。


「では、もう一度」


扇が振られる。


「――っ!」


打出の小槌は小槌を頭上へ掲げた。


「だったら――」


小槌を振る。


「これだ!」


――ポンッ!


小槌から何かが飛び出した。


「……?」


芭蕉扇が目を細める。


それは――。


巨大な岩だった。


「なっ!?」


――ドォォン!!


突風によって岩が吹き飛ぶ。


「ふふっ」


芭蕉扇が笑う。


「そんなもの!」


扇を振る。


岩が一瞬で弾き飛ばされる。


「おお……!」


打出の小槌が目を輝かせる。


「すげえな!」


「感心している場合?」


芭蕉扇が一気に距離を詰める。


扇を振り下ろす。


――バァン!!


打出の小槌の身体が吹き飛ぶ。


「ぐっ!」


地面を転がる。


それでも打出の小槌は笑っていた。


「へへ……」


小槌を握り直す。


「面白くなってきたじゃねえか」


「まだ戦えるの?」


「ああ!」


打出の小槌が立ち上がる。


「小槌ってのはな――」


小槌を振る。


「振ってみなきゃ、何が出るか分からねえんだよ!」


――ポンッ!


今度は巨大な水瓶。


「水!?」


芭蕉扇が驚く。


打出の小槌がさらに振る。


――ポンッ!


大量の縄。


「……!」


さらに振る。


――ポンッ!


大量の豆。


「ちょ、ちょっと!」


芭蕉扇の顔から初めて余裕が消えた。


「何を出しているの!?」


「知らねえ!」


打出の小槌は笑う。


「俺にも分からん!」


観客席が爆笑に包まれる。


しかし。


芭蕉扇はすぐに表情を戻した。


「ならば――」


芭蕉扇が扇を大きく開く。


「全部吹き飛ばしてしまえばいいだけ!」


「――ッ!」


巨大な風が巻き起こる。


これまでとは比べ物にならない。


闘技場全体を覆うほどの暴風。


岩も。


縄も。


豆も。


全てが宙へ舞い上がる。


打出の小槌の身体すら、今にも吹き飛ばされそうになる。


「ぐおおおおおっ!!」


必死に地面へ踏ん張る。


「これが……最後の一撃か……!」


芭蕉扇が扇を振り切る。


「終わりよ!!」


その瞬間。


打出の小槌が――。


笑った。


「……へへ」


小槌を握る。


「最後に一つだけ――」


小槌を振り上げる。


「賭けてみるか!!」


――ポンッ!!


小槌から現れたもの。


それは――。


巨大な鉄球だった。


「……え?」


芭蕉扇の目が点になる。


鉄球は暴風に乗り――。


芭蕉扇へ向かって猛烈な勢いで飛んでいく。


「きゃあっ!?」


――ドゴォォォン!!


直撃。


芭蕉扇の身体が吹き飛ばされる。


扇が手から離れる。


地面を数度転がり――。


そのまま動かなくなった。


静寂。


打出の小槌は小槌を肩へ担ぐ。


「……勝ったのか?」


実況も一瞬、言葉を失っていた。


やがて。


『……勝負あり!!』


観客席が爆発する。


『第一回戦、第十三試合!!』


『勝者――!!』


打出の小槌がニッと笑う。


『打出の小槌!!』


大歓声。


打出の小槌は小槌を掲げる。


「何が出るか分からねえってのも――」


小槌を肩へ乗せる。


「悪くねえだろ?」


その背後。


地面に落ちた扇が、静かに風を起こしていた。


異色の宝具。


その勝負を制したのは――。


打出の小槌だった。

お疲れ様でした。

読んで下さり感謝致します。


話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。

更新時間:毎日12:00となっております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。