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第十一試合 信長の刀と政宗の刀

作品は完結させております。

安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。


たくさんのブックマーク、評価、コメント。

また誤字・脱字報告も全て受け付けしております。


よろしくお願いします。それではどうぞ!


『さあ、続いては第一回戦、第十一試合です!!』


実況の声が闘技場全体へ響き渡る。


『ここで登場するのは――なんと、日本刀と日本刀!!』


観客席から大きなどよめきが起こった。


『これまで数々の伝説武器が姿を現しましたが、日本刀の登場は今回が初めて!』


『そして今回の二振りは、ただの名刀ではありません!』


実況の声が熱を帯びていく。


『一振り目は――織田信長が所持したとされる名刀!』


『へし切長谷部!!』


左側の入場口から、一人の青年が姿を現した。


黒を基調とした衣装。


鋭い眼差し。


長い黒髪を後ろへ流し、その立ち姿には戦国の覇王を思わせる威圧感がある。


『その名の由来は、あまりにも有名な逸話から!』


『信長に仕えていた茶坊主が、信長の怒りを買って棚の下へ逃げ込んだ際――』


『信長は刀を振るい、棚ごと相手を圧し切ったと伝えられています!』


観客がざわめく。


『つまり、この刀の斬撃は――対象だけを斬るものではない!!』


『障害物ごと、その先にあるものまで圧し切る!』


へし切長谷部が足を止める。


そして、静かに前方を見据えた。


「……邪魔なものは、まとめて斬る」


その声は低く、冷たい。


実況が続ける。


『そして対するは――伊達政宗の愛刀として知られる名刀!』


『燭台切光忠!!』


右側の入場口から、もう一人の青年が現れた。


整った顔立ち。


長い黒髪を後ろで束ね、片目を覆うような髪。


華やかな衣装を身にまとい、その立ち姿にはどこか伊達者を思わせる気品がある。


『こちらもまた、凄まじい逸話を持つ刀です!』


『伊達政宗が家臣を斬った際、その勢いで近くにあった燭台まで斬ったとされることから――燭台切の名が付いたと伝えられています!』


観客席から再び歓声が上がる。


『人を斬った勢いで、その先にある燭台まで斬る!!』


『つまりこちらも――斬撃の先にあるものすら断ち切る名刀!!』


燭台切光忠は、どこか余裕のある笑みを浮かべた。


「へえ……随分と物騒な紹介をしてくれるね」


そして、へし切長谷部へ視線を向ける。


「でも、せっかくの舞台だ」


笑みを深くする。


「格好良く決めたいよね」


へし切長谷部は表情を変えない。


「……戯言を」


『それでは、両者――武器を顕現!!』


二人の前に宝珠が浮かび上がる。


へし切長谷部が手を伸ばす。


燭台切光忠も同時に手を伸ばした。


二つの宝珠が眩く輝く。


光が収束する。


へし切長谷部の手に現れたのは、一振りの日本刀。


細身ながらも鋭い存在感を放つ刀身。


対する燭台切光忠の手にも、一振りの日本刀が顕現する。


美しい拵え。


そして、その刀身から漂う静かな威圧感。


二人が同時に刀を抜いた。


――カァン。


澄んだ金属音が響く。


『日本刀同士の激突!!』


『しかもこの二振りは、ともに「その先にあるものまで斬る」という逸話を持っています!』


『一体、どちらの斬撃が上なのか!!』


へし切長谷部が刀を構える。


燭台切光忠も構えた。


『両者、構えて――』


一瞬。


二人の間に静寂が落ちる。


『試合――開始!!』


――ザッ!!


同時に踏み込んだ。


刀と刀が交差する。


――キィン!!


その瞬間。


二人の間にあった空間そのものが裂けた。


「……!」


「おっと」


燭台切光忠が後方へ跳ぶ。


その頬を、一筋の血が流れた。


背後にあった石柱が――


ズズズ……。


ゆっくりとずれていく。


次の瞬間。


――ドォン!!


石柱が斜めに滑り落ちた。


『な、なんということでしょう!!』


実況が叫ぶ。


『今の一撃、二人の刀は直接ぶつかっただけです!!』


『それにもかかわらず、その斬撃の余波で周囲の空間まで切断された!!』


へし切長谷部が刀を振る。


「……次だ」


横薙ぎ。


燭台切光忠は刀で受ける。


――ギィン!!


だが、その瞬間。


燭台切光忠の背後にあった壁が――


スパッ。


真横に切れた。


「なるほど」


燭台切光忠が笑う。


「斬撃そのものを飛ばしてるわけか」


「違う」


へし切長谷部が答える。


「斬っている」


「何を?」


「――空間を」


へし切長谷部が踏み込んだ。


一閃。


燭台切光忠が身を捻る。


その横を斬撃が通り抜ける。


そして。


遥か後方の観客席との間にある壁が――


ズズズ……。


切断された。


『危ない!!』


観客が悲鳴を上げる。


しかし、燭台切光忠は笑っていた。


「だったら――」


刀を振り抜く。


「僕も同じことをすればいい!」


――ザンッ!!


空間が裂ける。


へし切長谷部の横を通り過ぎた斬撃が、その背後の地面を切断した。


へし切長谷部の眉が僅かに動く。


「……なるほど」


「ね?」


燭台切光忠が笑う。


「僕たち、結構似てるみたいだ」


「……ならば」


へし切長谷部が刀を構え直す。


「どちらの斬撃が上か、試すだけだ」


「望むところだよ」


二人が同時に駆け出す。


一閃。


二閃。


三閃。


刀が交差するたび、闘技場の床が裂ける。


柱が切れる。


壁が切れる。


空間そのものが歪む。


『凄まじい!!』


実況が絶叫する。


『二振りとも、相手を斬るだけではありません!!』


『斬撃の軌道上に存在するもの全てを切断している!!』


へし切長谷部が踏み込む。


「終わりだ!」


渾身の一閃。


燭台切光忠が受ける。


――キィィィン!!


その瞬間。


二人の間に巨大な亀裂が走った。


空間が裂ける。


まるで世界そのものが真っ二つになったかのように。


「ぐっ……!」


燭台切光忠が押される。


しかし。


「まだだ!」


刀を返す。


――ザンッ!!


今度はへし切長谷部の身体を狙う。


へし切長谷部が避ける。


だが――


「……!」


その背後。


切断された空間が、まるで遅れて追いつくように襲い掛かる。


へし切長谷部の肩が裂けた。


血が飛ぶ。


「……ッ!」


「どう?」


燭台切光忠が笑う。


「僕の刀も、結構やるだろ?」


へし切長谷部は傷口を見た。


そして――


「……認めよう」


刀を構える。


「だが」


目つきが変わった。


「ここからが本当の勝負だ」


燭台切光忠も笑う。


「やっぱり、そうこなくちゃ」


二人の刀が同時に輝く。


そして――


最後の一撃へ向けて、二人は同時に踏み込んだ。


――――――ザンッ!!


轟音。


衝撃。


そして静寂。


二人の姿が止まる。


へし切長谷部の刀が、燭台切光忠の肩を捉えていた。


同時に。


燭台切光忠の刀も、へし切長谷部の胸元を捉えている。


互いに致命傷。


誰もが息を呑む。


だが。


へし切長谷部の身体が――


ゆっくりと倒れた。


「……っ」


膝をつく。


燭台切光忠もまた、肩から血を流しながら刀を支えに立っている。


「……危なかった」


息を吐く。


「本当に……危なかったよ」


実況が声を震わせる。


『勝負あり!!』


会場が静まり返る。


『第一回戦、第十一試合――!!』


燭台切光忠がゆっくりと顔を上げる。


『勝者――燭台切光忠!!』


一瞬の静寂。


そして。


会場中から大歓声が巻き起こった。


燭台切光忠は刀を鞘へ納める。


「……格好良く決められた、かな」


倒れたへし切長谷部を見つめる。


「君も、格好良かったよ」


へし切長谷部は薄く目を開ける。


「……そうか」


そして、静かに目を閉じた。


日本刀同士。


空間をも切り裂いた壮絶な斬撃戦。


その勝者は――


伊達政宗の愛刀、燭台切光忠だった。

お疲れ様でした。

読んで下さり感謝致します。


話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。

更新時間:毎日12:00となっております。

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