帰るぞ
「まあ、そんな訳で僕たちみんなでエマを手伝いながら、みんなの技を仕込んでトーナメントを優勝することを目指していく訳なんですが」
エマを連れ戻して、みんなが朝食食べ終わってのんびりしているところで話した。
ドミニクだけ、はあ? という顔をしていた。
リーズとヒューゴに至っては特に変わりはない。この二人に至っては泰然としすぎていると思った。
「1回戦はもう間もなく開催で、場所はなんとアルミンだ。そこから1週間ごとに1回ずつ戦っていき、決勝まで5回戦っていく流れになる」
「ああ、あの武道大会なんだ。もっと別の大会だと思ってた」
ドミニクが言った。
国一番の冒険者ギルドであるアルミンでは年に一回、武道大会が開催されている。もともと国中の荒くれものが集まる都市であり誰がこの国で最強なのか決めようといった趣の大会であった。
宗弥達パーティに至っては、全員興味がなかった他、メアリから暗にお前らは出るなとさえ言われていた大会だった。
ただ、文字通り誰でも参加出来るため、参加資格は当然あるので、誰が出ても別に問題はないのだった。
「予定としては、これからアルミンに戻ってすぐに予選会その翌日に1回戦だ。あんまり時間がないからここはとりあえず置いといて本戦の各ラウンドの合間にみんなからエマに技を仕込んで貰いたい」
「技って言っても何教えれば良いんだよ」
ドミニクが言った。
「うん、分からない」
宗弥がさわやかに言い放った。辺りが凍り付いた。
しばらくして、エマとドミニクが宗弥の後頭部をひっぱたいた。
「「わかんねーのかよ!!!」」
「いや、だって僕戦いに関してはずぶの素人だし、僕がこうなれば良いって話をするなら、エマの技術に、ドミニクの精密さ、リーズの加護にを全て兼ね備えることが出来れば勝てるんじゃないか? って仮説だけさ。道筋は分からん」
「すごい、私でも分かる。宗弥さん滅茶苦茶だ」
ヒューゴが珍しく呆れていた。
「それを言ったら、僕たちはファブニールを倒したし、ヒューゴとリーズお前らだって滅茶苦茶やってノーライフキング倒しただろ。ドミニクは弓矢一本で戦争を終わらせた。無茶やって来ただろ。今回もその無茶で行く。行くったら行くんだ!」
無茶をこれまでやってきた。
今回もその無茶をやるのに匹敵する相手だ。
「加護というのは、そんなに便利なものではありません。術式の深さというのは、個々のクレリックの祈りの深さであります。なので、そんな短期間に与えられるものではないのですが……」
「加護という形にこだわらなくても構わない。何か知っている事があれば助けてほしい」
「そうですか……少し考えてみます」
とリーズは顎に手を当てて、眉間に皺を寄せていた。
加護の仕組みについては一般的にはクレリックの祈り、その加護を対象者に与えるといったものだ。祈りを物理的な形に変える。そんなことを1週間で出来るようにすることは可能でも、質や精度といった面で期待は出来ないだろう。
加護であるが、近い仕組みの何かをリーズに要求した。
「おれの技術なんて別にエマにいらなくない? 投げることはあっても、罠とか、狙撃技術とかいらないでしょ別に」
「いや、ある」
エマがドミニクの両肩を掴んで遮った。
「あんの?」
「ずっと気になってたことがあった。帰ったら真っ先に聞くから待っとけ」
「お、おお、分かった」
ドミニクが想像以上に真剣なエマに気おされる形で了承した。
ドミニクとエマが対人訓練をする際、大体エマが圧勝するのだがたまにエマが一本を取られる光景を目撃していた。恐らく、エマの知らない技をドミニクは使えるのだろう。
「私はどうしましょう?」
ヒューゴが聞いた。
「この間やった感じのことを決勝までやり続けられるか?」
「分かりました」
ヒューゴはそう言って笑った。宗弥には何が必要とされているのか、何を補強すべきかお互いに理解しているのだろうと分かった。
ヒューゴが必要とされている箇所は、ヒューゴ自身がエマにとって欠けていると指摘した所にある。力、頑強さ、体力この三点を徹底的に対人訓練で養うということだった。
「あーちなみに、僕にやれることは?」
一応、宗弥は聞いた。
「ねぇ。けど、なんか気が付いたことがあったら教えてくれ」
「分かった」
宗弥は少しエマに感心してしまった。この件については、まったく役立たずなのに、気が付いたことがあったら教えて欲しいというのは出会った頃からは想像つかない発言だった。
「よし、方針も決まった事だしさっさと帰ろう、みんな」
宗弥達がバレットバレーを出たのはそれから一時間もかからない事だった。




